「週刊東洋経済」の特集で「中高一貫校」の特集のご紹介
先日、7月23日号の「週刊東洋経済」の特集で「中高一貫校」の特集が行われていたので、紹介されていた内容や、私なりにそれに対して思うところをお話しさせて頂きたいと思います。
現在、日本では(といっても首都圏中心ですが)空前の中学受験ブームが起きていると言われているようです。私立・国立の中高一貫校の受験者数は2015年から9年連続で増加し、23年入試の首都圏の受験者数は5万2600人と過去最多となりました。
受験率の割合は、20%近くに迫る17.8%にまで増加しました。もはや5人に1人は中学校受験をする時代に完全に移り変わっているわけですね。受験率、伸び率も過去最高水準です。首都圏模試センターの北一成研究所長は「今後、数年はこの高水準が続く」とみています。
こうした中学受験熱は、どこから来ているのか。一つはコロナ禍の影響です。公立校よりオンライン校での授業・学校活動の対応が柔軟で、それが保護者の信頼を得ました。学校説明会などに足を運べない時期も、SNSで魅力を発信した学校が多かったようです。もう一つの大きな要因は、大学入試の変化です。高校時代の活動内容や大学での探究したいことが問われる総合型選抜や学校推薦型選抜といった「年内入試」が大学受験生の過半を占めるようになってきました。
さらに、2022年からは、学校の指導要領が「主体的・対話的で深い学び」を求める内容に改訂されたことを受け、2025年度入試からは一般選抜の入試科目も変わる。
こうした変化に対応し、「探究学習」などに力を入れている中高一貫校が人気となっています。「私立のカリキュラムは、学習指導要綱の改訂に先駆けてブラッシュアップされている」(北氏)という点も大きいようです。
中高一貫校では、高大連携の動きも盛んです。出張授業や大学訪問といったこれまでのサービスに止まらず、大学の研究施設での探究活動なども実施させるなど、もう一歩吹き込んだ姿勢が、生徒や保護者に人気を博しています。
高校段階や、早ければ中学段階から、早期から大学に接点を持つことで、子供の学びたい学問領域(ドメインといいますが)も漠然としたものから、目で見て手で触れた分明確になっていきます。
さらに、最近の中学受験の特徴として「学校選びの軸の多様化」があります。『進学レーダー』の井上修編集長は「首都圏の中学受験家庭の多くは共働きで世帯年収が高く、教育投資熱が高い」と分析しています。
ここで、私見というか、教育経済学の研究成果をご紹介すると、教育投資の効果は若年層であればあるほど大きいと言われています。わかりやすく言えば、幼稚園児や小学生低学年時、あるいは小学生時代に教育投資を行うことが、後から、たとえば大学受験の時に教育費をかけるよりも投資効果が高いと報告されています。
もちろん、これは単純に時間の割引現在価値を考えれば、早めに投資すればするほど、投資効果が大きくなるという側面もあります。しかし、教育経済学の知見では、そうした単なるファイナンス理論のようなロジックではなく、子供が幼ければ幼いほど、大人になってくるにつれてなかなか成長させづらい非認知能力を向上させることができるからだと説明しており、その点は注目すべきことでしょう。
話を戻します。さらに、中高一貫校に進学することが首都圏在住の保護者の間では、そもそも「大前提」になりつつある世の中の動きも指摘されています。進学塾大手のSAPIXの教育事業本部の広野雅明本部長は、「当塾で、受験に失敗して、公立中に進学する子供たちは、今、1%もいない。受験校や進学先を偏差値の高低だけで決める家庭は確実に減っている」と語っています。
つまり、昔であれば「御三家、新御三家のような難関中学や名門校」への進学のために中学校受験をしていたのに対して、現在は、偏差値の高低やブランドなどに関係なく、中高一貫教育というその教育方針、体制に魅力を感じて、偏差値に関係なく中高一貫校へ進学するケースが多いというわけです。
そんな多様化した今の受験者層をタイプ別に東洋経済誌がまとめたイメージ図をご覧ください。
開成、桜蔭といった最難関校狙いのAゾーンは一定いるものの、ボリュームゾーンは、偏差値や進学実績に加え、アクティブラーニングなど教育内容も重視するBゾーンです。いわゆる武蔵野個別指導塾も一番注力を入れている、準難関校(偏差値56~60)や中堅校(偏差値 46~55前後)といわれる中高一貫校です。
日本の社会は学歴社会と言われますが、結局最終学歴として評価されるのは、大学であるので、近年、大学進学実績を華々しく伸ばしているBゾーンに位置する、準難関校や中堅校は人気を博しています。
そして、更に、偏差値に囚われず、豊かな体験や自己肯定感が得られ、時代に合った教育を受けられる学校を選ぶCゾーン(偏差値46未満)の受験者層も増え始めています。
Cゾーン向けでは、自己アピール型など6年生からの準備でも中学受験が間に合うという新タイプの入試をする学校が増えてきています(通常、中学入試は小4くらいから行わなければ間に合わない)。
学校が志向する教育内容は、入試問題からうかがい知ることができる。そこで役立つのが首都圏模試の思考コードです。
出題内容は、配点を9つのマトリクスに分けて見える化し、求められる力や子供の志向に合うかが分かるようになっています。次では、親世代が知らない中高一貫校の最新序列や注目の学校などを東洋経済の取材陣の紹介をみていきましょう。
ちょっと見づらいかも知れませんが、ご容赦くださいませ。通塾の開始時期や先取り学習の有無は志望校により異なるが、計算・漢字といった基礎学力をつけることが大事なのは共通しています。
私や他の記事で紹介した灘中合格者を多数輩出している算数、数学のカリスマ教師州崎先生などは早すぎる先取り学習に対して、否定的に捉えているところはあるのですが、極端な先取り教育(たとえば未就学児にかけ算や割り算などを教え込むような教育)はなしにしても、確かに、小1~小2くらいで計算や漢字に関して、あまり高度な概念を取り扱わない範囲内であれば、四則演算や常用漢字のマスターくらいは先取りしても害はそこまでないようにも思えます。
その上で、東洋経済の取材陣の調査を見ると、小1、小2で最難関校を目指す生徒は、計算は、学年+2学年以上、漢字は、学年+1学年以上の先取り学習を行い、超上位層は、、算数などの先取り学習を進学塾などで行い始めています。
その中でも特に、桜蔭、開成などの御三家、筑駒などの最難関校を狙うならば、小学校低学年のうちに+2学年以上の計算力をつけるのが望ましいと東洋経済新報社の記者は書いています。ちなみに、私の私見では、これは少し行き過ぎだと思いますが、ゲーム感覚で計算を学ぶのならありかとは思います。
また、同誌では、自宅学習や公文式などでこうした計算力を養うことを勧めています。また、この時期に子どもが天体や歴史に興味を持ったら、知識を深めるための材料を提供したり、関連する経験を積ませるべきとも指摘しています。遊びや趣味の範囲内なら私も賛成です。
さて、それとは同じ頃、中堅校を目指す層は、計算は+1学年以上先、漢字は学年相当の漢字の学習をしっかり行った上で、大体小2の後半から塾選びをスタートします。
新タイプ入試のCゾーンの層は、計算・漢字などの基礎学力を地道に養います。
そして、小3が、どの層でも分岐点となっています。明確な時期としては、小学3年生の2月が一般的な目安だそうです。ただ、同紙では、中学受験専門塾ジーニアスの松本亘正代表が「難関校狙いでは、遅くとも小3の夏までには通塾していることが多い。中学受験の難易度は上がっており、中堅校狙いでも、小3のうちに塾をはじめてもよいだろう」と話しています。
中堅校で小3スタートが理想と言われてしまうと、ちょっと塾業界の煽りに感じられてしまうのは私だけでしょうか。
小5は課題が増え、難易度が一気に増し、大手塾では大半のカリキュラムを終えるため、復習のチャンスはあると指摘しています。夏休みや冬休みには地理や歴史で学んだ土地へ行き、理解を深めるとよいという指摘は私も賛同します。
勝負の小6は、公開模試が増え、秋には志望校別の特訓がはじまる塾もあり、いっそうハードになるため、体調管理には要注意とのことです。
中堅校の場合は、夏~秋のオープンスクールや説明会に行くのがお勧めです。具体的な出題分野や傾向を教えてくれる学校も多いです。遅くなると過去問を解く時間が取りにくくなるので、早めに対応しましょうとのことです。
習い事についても同紙は触れており、先ほどの松本代表は「塾としては習い事は、小6では週一回という立場で、ピアノや水泳などは勉強のストレスを軽減できるので、週一回一時間程度ならいいと思う」とのことです。
しかし、この言い方、裏を返せば、「週一回1時間程度の余暇しか認めず、後はずっと勉強をしていなさい」という言葉にも受け取れますね。東大受験の比ではない、過酷さを要求しているような気がします。
一方、Cゾーンの層は、自己アピールなど自分の強みを活かす新タイプ入試であるため、スタート時間は比較的緩やかとのことです。首都圏模試センターの北氏は、「新タイプ入試は小6からでも十分間に合う」と話しています。また、学校の入試体験会などにいくことをお勧めしています。
中堅校(偏差値46~55)狙いで、小4スタートで、最低週に2~3回の通塾を勧めていますが、これも少し塾業界の煽りもあるように感じられてしまいますが、今回は東洋経済新報社がマスコミとはいえ、ある程度中受熱に距離を置いて記事を書いている雰囲気ではあるので、安全策という意味では確かにそうなのかもしれません。
最後に、今、人気が急上昇中なのが、小石川、広尾学園、白百合学園、鴎友学園女子、芝、桐朋、頌栄女子学院、東邦大付東邦、吉祥女子、攻玉社、東洋英和女学院、鎌倉学園、本郷といった御三家に次ぐ難関校やさらにそれらに次ぐ、城北、巣鴨、世田谷学園、東京都市大付、三田国際、淑徳、開智日本橋学園、國學院久我山、香蘭女学校、共立女子、青陵、ドルトン、暁星、大妻、品川女子、晃華学園、芝国際、成城、成蹊とのことです。
このあたりは、偏差値的には難関校より少し下目であり、中堅校より少し上ぐらいに位置していますが、人気も爆上がり中のことで、偏差値上昇、難化傾向が進み、難関校化していくことが予測されるようです。
私の方でもお勧めしたことがある國學院久我山や開智日本橋、共立女子、成城、成蹊、また先日社会の問題で紹介した晃華学園を狙うお子さまがいらっしゃるご家庭は当塾にいらっしゃいますので、想定より学力を上げていく必要があると思いますので、ご理解くださいませ。
そして、子どもが伸びる話題校としては、東京農業大学第一中学・高校(国公立、早慶、上理、GMARCHで551名合格)や田園調布学園中学・高校なども取り上げられています。また、サレジアン国際学園世田谷や東京都市大学等々力、日本工業大学駒場、郁文館、日本学園、三輪田学園、京華女子、山脇学園、跡見学園、麹町学園女子、恵泉女学園なども紹介されています。
最後に、大学進学実績で割の良い学校を紹介して、最新事情のお知らせをお仕舞いにしたいと思います。早慶の合格者は開成(399名)が全国一位であるのは変わりませんが、偏差値58で全国10位にランクインしている頌栄女子学院(234名合格)、偏差値56で全国20位にランクインしている攻玉社(184名)は、実績としてはもう御三家や新御三家並み(麻布で263名、桜蔭で252名、女子学院で216名、豊島岡女子で255名、海城で248名、渋谷教育学園渋谷で190名)の合格実績となっており、ずば抜けております。
また、MARCH合格者数でいうと、大宮開成(偏差値54、802名合格)や開智日本橋(偏差値52、514名合格)、國學院久我山(偏差値47、488名合格)がずば抜けております。ただし、これらの偏差値は複数回ある入試の中でもっとも低い偏差値の入試の偏差値で集計されているため、一概にはいえないところがあるので、ご注意くださいませ(國學院久我山や開智日本橋は四谷大塚では一般的に偏差値57程度です)。
以上、東洋経済新報社の中高一貫校特集をご紹介致しました。
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【監修者】 | 宮川涼 |
プロフィール | 早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員。元MENSA会員。早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。一橋大学大学院にてイギリス史の研究も行っている。 |
社会=暗記という常識はもう古い!知識だけでは通用しない社会の問題(麻布中学校の社会の入試問題より)