中学受験、高校受験、大学受験、大学院受験に役立つ民法総則講義

01 前書き~受験をするのにも法律を知っておいて損なことはない

受験の世界でも、受験以外の世界でも役立つ法律の知識、とりわけ、私人が一般に一番身近な民法について、総則を解説していきます。一般的には自然人やら法人などに触れてから「契約ないし法律行為」の項目に進むのですが、自然人や法人などというのはあまり身近では内というか、あまりにも抽象論過ぎるので、皆様にとってお役立ちになりそうな、身近にある契約や法律行為から解説していきたいと思います。こうした話が果たして、大学院の法学部関連の研究科ならともかく、中学校受験や高校受験、大学受験に役立つのか甚だ疑問の方も多いかも知れませんが、そもそも塾に入塾を申し込むことも立派な契約であり法律行為です。後から、そんな話は聞いていないと生徒さんはもちろん、保護者の皆様も注意をして頂きたく、一般に司法試験などで用いられる学術書を参考に解説して参ります。そして、話を聞いている内に分かってくるかと思いますし、実感が湧いてくるかと思いますが、意外と法律の基本的な知識は役立つものです。ちまたによく知られた格言に法律の世界に「権利の上に眠るものは、保護に値せず」という格言があります。保護者の方なら一度は聞いたことがある言葉ではないでしょうか。民事上の時効を設ける理由の一つとされるものです。おカネを貸したのに、請求する権利を行使しないままでいるのなら、その貸しはなかったことになる、そういう時によく使われたりします。法律は知っておいて損することはありません。別に司法試験に合格するようなレベルの法知識を備える必要はありません。法律の勉強を通して、日常の些細な法律行為にはっと役立つことがあれば、執筆者として幸甚でございます。

01 契約ないし法律行為

まず、わかりやすい具体例を紹介しながら説明していきましょう。たとえば、「甲(法律の世界では、甲とか乙とか使って人の代名詞とします)が乙に『私の所有するこの宝石を1000万円で君に売る』といい、これに応じて、乙が甲に対して『君のその宝石を1000万円で買う」といった場合には、甲は乙に対しその宝石を引き渡すべき義務を負い、乙も甲に対して、1000万円を支払うべき義務を負うことになります。このような契約の拘束力の根拠は、基本的に次のように説明されます。曰く、私有財産制のもとにある以上、甲の所有物である宝石ないし乙の所有である1000万円は、いずれも甲ないし乙の意思(法律の世界では「意志」ではなく「意思」といいます)に基づいてのみ、甲ないし乙の所有から離れるのが原則です。他方で、資本主義社会の要求する全体的商品流通は、個別的な商品所有者二人の愛大の個別的商品交換の連鎖反復によってのみ、可能となります。したがって、この例で言えば、甲乙間で宝石とその代価との交換すなわち売買が行われることが不可欠であり、かつこの甲乙の意思の相互の一致があった以上、それに即して、両者が商品交換の実現を法によって強制されることになるわけです。 このように、各人の権利・義務・義務の発生、変更、消滅は、事実上多くの場合には、彼を一方当事者とする契約に基づいて生じます。もっっとも民法総則は、契約を包摂するものとしての「法律行為」といいう上位概念を定立し、もっぱらこの法律行為一般についての要件・効果を定めています。しかし、ある者についき、権利・義務の増減が生じるということは、通常、他の者についての義務・権利の増減を生じしめることを意味するものであるから、他の者の意思にもよることが必要とされるのであり、したがって、両者の意思の一致が必要とされることが多く、つまり、契約こそが実際上は重要性が大きいです。それゆえ、以下でもっぱら契約について論じ、その後法律行為一般について述べることととします。

02 契約の成立要件と有効要件

契約の成立要件では、先程の例で言えば、「私の所有のこの宝石(別にポケモンカードでもトレーディングカードでもなんでもよいのですが)を1000万円で君に売る」という甲の発言と、「君のその宝石を1000万円で買う」という乙の発言とが合わさって売買契約が成立します。この2つの発言のうち、先になされた甲の発言を「契約の申込」、これに応じてあとからなされた乙の発言を「契約の承諾」といいます。契約は、このようにいsて、原則として、申込と承諾との一致によって成立します。この申込や承諾のように、表意者が一定の法的効果の発生を意欲する旨の表示であって、所定の要件され具備されれば意欲通り法的効果を発生させることを「意思表示」といいます。逆に言えば、この2つの意思表示の合致によって、契約が成立することになるわけです。

このように契約が契約らしい外形有りと言われるに値するためには、当事者甲乙の所在と甲乙両者の意思表示との合致が必要であり、これを契約の成立要件といいます。なお、以上のような契約一般についての成立要件のほかには、たとえば婚姻の成立のためには、当事者の合意が存在するだけでは十分ではなく、届出が必要であったりします(役所に婚姻届を出しますよね)。このように特殊な契約については特殊な成立要件が要求されている場合もあります。契約の成立を主張しようとする者は、その成立要件の具備を立証しなければなりません。もっとも、当事者間の結婚の合意は存在しているが、婚姻届が出されていない場合でも、現行民法上の婚姻が成立していないのみであって、かかるばあいに、一方が届出をしようと欲するのに他方が拒否すれば、通常は婚約不履行の損害賠償の問題が生じます。このように、ある型の契約は成立していて、法的効果は生じているといえる場合もないわけではありません。なので、迂闊に結婚しようとというべきではありませんね(苦笑。 そしてまた、いわゆる「契約締結上の過失」(契約を締結するのに落ち度があったというような意味です)として扱われる場合のように、当事者間に契約の締結はなかったが、両者の意思に基づいて契約締結のために相互に接触し、本来の給付義務はいまだ成立していないが、それぞれが相手方の利益を害さないようにすべきだという法律関係は成立している場合があり、そこに契約関係に準ずる関係が存在している、ということができます。さらには、そもそも契約の存在など意識し得ない人々の日常の接触のうちに、単純な不法行為や不当利得の問題とばかりはいえないような法的トラブルが発生する場合もあります。

こうしてみると、契約的接触の有無、契約の成立、不成立ないし契約の有効、無効という諸問題の関係も峻別的に区別されるべきではなく、一方で社会的実態いかん、他方でそれを扱う実定法の態度いかんによって、どうとでもとれる問題であるともいえるわけです。 さて、契約が既に述べたように、成立要件を具備することによって、一応は成立したとされても、当事者に権利能力、行為能力が欠けている場合、後ほど掲げる契約内容を理由とする諸事由の存在する場合、表示と意思の不一致の諸状況が存在する場合には、その契約の内容に応じた効果は生じないことになります。多くの学説では、これらの状況を契約がその効力を生ずるための要件として、有効要件と呼んでいます。しかし、これらは効力阻却要件と呼ばれるのが正確で、契約の成立を主張する者がすべての成立要件の具備の立証責任を負い、その立証が成功した場合にはじめて、抗弁として契約の無効を主張する者がいずれかの効力阻却要件の存在の立証責任を負うべき事になると解すべきでしょう。

なお、当事者の行為能力が制限されている場合(未成年者とか)や意思表示に瑕疵(勘違いがある場合)には、そのこと自体は契約の無効を来すわけではありませんが、そのことを理由として取消権者による取消がなされれば、結局契約は効力を生じなかったとほぼ同じ結果となります。なので、上述の諸事態とこれに基づいてなされる取消権の行使とがあわあさって、一種の効力阻却要件をなすといってよいでしょう。 契約の解釈とは、契約の意味内容を明らかにすることで、両当事者間の表示した意思が少なくとも外形上が一致している場合に、その一c胃hした表示が意味しているところを確定することです。しかし、この両当事者の表示した意思の意味するところが万能なのではなくて、契約の意味内容は、他の基準と合わせて総合的に判断していきます。ここでまず、契約の「解釈」という意味自体が、ついで解釈の基準は二課が、問題となります。 訴訟の一方当事者が、ある契約について裁判所のなした解釈が誤っていると主張する場合には、この主張が事実問題か法律問題かが、それが上告理由となりえるかどうかと絡んで、平成8年の民事訴訟法改正以前には激しく争われていて、判例は、多くは事実問題説になっていましたが、学説中には、むしろ法律問題説を採る者が多かったです。

たしかに、たとえばある契約書上に記されたある言葉が、一定の社会でいかなる意味のものとして理解しているか、を決するという意味での契約の解釈が事実音問題であることを明らかでしょう。また、一定の社会に一定内容の慣習が存在するか否かの判断についても、動揺でしょう。しかし、契約の解釈にあたっては、裁判所が、強行法規によって当事者の意図を制限ないしは無視したり、任意規定によって当事者の意思を補充したしりすることが多いのも事実です。さらに裁判所が契約の解釈の名の下に、契約中のある条項をいわゆる例文としてその効力を否定する場合のように、まさに当該の契約にそのまま効力を付与すべきか否かという法的価値評価が行われる場合も少なくなく、これらは法律問題です。 つまり、法解釈のうちには、事実問題であるものと法律問題であるものとの二種類が理論的には区別されますが、この区別は実際にはなかなか容易ではありません。そればかりでなく、現行民事訴訟法312条3項は、法律違反が高等裁判所の上告理由になりうると規定し、また同318条1項は、最高裁判所もこの点を理由とする上告を受理することができると、規定しているに過ぎないから、法律問題を事実問題と区別することの重要性は乏しくなってきているのが現状です。

03 契約解釈の基準

契約の解釈についえは、(1)強行法規(2)当事者の意思(3)慣習(4)任意規定が、この順番の通り重要な基準となります。民法91条には「法律行為の当事者が法令中の公の秩序に関しない規定と異なる意思を表示したときは、その意思に従う」とされていますから、その反対解釈として、強行法規に反する当事者の意思が表示されていても、かかる意思は無視されることになります。契約の一部のみが強行法規に反する場合には、当該部分は無効とならざるをえないが、その結果、その点についてはまったく契約がなかったものとしてみなして扱うと、契約全体のバランスがとれなくなり、結局契約全体が無効だとならざるを得ない場合もあります。けれども、ともかく一旦なされた契約がその存在意義を失わされることは、なるべく避けられるべきですから、そのような場合には、強行法規違反ゆえに無効とされた部分をその強行法規自体ないし任意規定または条理による補充をしたり当事者の合理的意思を推測したりすることにより、契約全体はできるだけ無効にならないように、努力して解釈すべきと考えられています。

契約は少なくとも、原理的には当事者の意思に基づいて構成されているから、その解釈の基準としては、強行法規に反する者でない限り、当事者の意思が優先的基準にされることは明らかです(民法91条)。契約の解釈においては、当事者の用いた言語や文字がそのまま基準となるのではなく、当事者が本当に達成しようとした社会的経済的目的が基準とされるべきでしょう。とはいえ、当事者がその内心で欲した目的自体はこれを外部から直接に窺い知ることはできないですし、まして両当事者の関心は一致していない場合も少なくないから、一定の事情のもとで両当事者がなした具体的行動によってかれらがなにを達成しようと欲したと社会一般には見えるかが実際には解釈の基準になります。

ある慣習が存在し、当事者がこれに従わない旨をとくに示さなかった場合は、この慣習にしたがって契約が解釈されることになります。ここで慣習とされるのは、必ずしもも社会全般に普遍的なものでなくとも、当該取引をめぐる取引社会、職業群ないし場所において存在するものであればよい、と解されています。なお民法92条「法令中の公の秩序に関しない規定と異なる慣習がある場合において、法律行為の当事者がその慣習による意思を有している者と認められるときは、その慣習に従う」としてあるから、まずその反対解釈によって強行法規に反する慣習は解釈基準たり得ず、慣習と当事者の意思との関係も当事者が明らかにこの関数に従わない旨の表示をしている場合には、慣習は解釈基準になりえないという意味で、慣習は当事者の意思に劣後します。しかし、任意法規、即ち「法令中の公の秩序に関する規定」との関係では慣習が優先します。そして、強行法規ないしは慣習が存在せず、当事者の意思も明らかでない場合には任意法規の解釈が基準となるわけです。

04 内容を理由とする契約の無効

既に述べてきましたとおりに、契約は、両当事者間の意思表示が合致すると、一応は成立します。しかし、かくて成立した契約の内容が一定の状態にあるとき、すなわち、契約の内容が確定不能・実現不能・強行法規違反ないし公序良俗違反である場合には、契約は、それに予定された効力を生ぜず、これを契約の無効と言います。これらの無効の原因について順次見ていきましょう。

(1)内容の確定不能

ある契約の内容が明らかでない場合には、これを明らかにする努力がなされなければならないことはもちろんであるが、たとえば、特別な事情のない状況下で、甲が乙に「お前に何かをやろう」といい、乙が甲に「もらおう」といったときのように、結局、契約の内容が明らかにならない(この例では贈与の目的物)場合には、裁判所が乙にどんな救済を与えるべきか定まらないから、この契約は無意味であるということになります。つまり、契約内容の確定不能は、契約の無効を招来させるのです。

(2)内容の実現不能

契約内容の実現が不可能なときは、国家が助力してこれを強制実現しえないばかりでなく、義務者が任意にそれを実現してその結果を権利者に享受させることさえ不可能だから、その契約は、法的効果を認められず、無効です。契約内容実現の不能というのは、物理的不能(事実的な不能)、法律的不能のほか、たとえば、今年中に火星に旅客を輸送するといった法的休止あの意義や必要性という観点から社会通念上不能とされるものも含みます。もっとも、両者の合意の内容がまったくナンセンスと言える場合には契約が存在するとはいえず、むしろ、契約不成立というべきかもしれません。実現の可能・不能は、契約成立の時点を基準として決さられ、契約成立の時点で既に不能である場合のみが、原始的不能として契約の無効をもたらします。契約成立後に不能となった場合、すなわち後発的不能の場合には、危険負担ないし債務不履行の問題となります。契約の内容の一部が不能の場合には、明文の規定があるときは、それによってことがきまり、その他の場合には、原則として、可能な部分のみ契約として有効となる(一部無効の理論)。ただ例外的に、契約の一部が不能、つまり無効であるとすれば、当事者あるいは少なくともその一方がその契約の成立を全面的に欲しなかっただろうと見られる場合には、契約全部が無効となります。

(3)強行法規違反

民法91条の反対解釈として、公の秩序に関する規定(強行法規)に反する契約は無効です。強行法規とは、私法的生活関係に付き、私的自治を排除する機能を持つ規定であり、任意規定とは、私的自治を保管する機能を持つ規定です。別の角度から言えば、当事者が当該の規定に反する効果を契約によって実現しようとすることを国家が拒むものが強行規定で、これを拒まないものが任意規定です。具体的な規定が強行法規か任意法規かの判断は、多くの場合、規定の趣旨によるほかないが、大雑把に言うと、親族法・相続法におけるような基本的な社会秩序に関する規定や、民法総則中の私的自治の前提についての法規、及び物権法に於けるような取引の安全に関する規定、そして経済的弱者の利益の擁護の規定等の多くは、強行法規で、それ以外のものは任意規定であることが多い。少し例を取り上げてみましょう。

甲が乙と共同して、一軒の家を購入し、両者の合意でその東半分は甲のもの、西側半分は乙のものと定めたとします。この合意は法的にどのような意味を持つでしょうか。この建物が、建物区分所有法一条の趣旨に従って、東西の両専用部分に区分しうる性状のものであれば、この合意は、全面的に有効で、建物の東半分が甲、西半分が乙の所有に属する区分所有関係が成立しますが、この建物が、たとえば、その主要部分は一室のみからなり、区分所有関係が成立し得ない状態にあるときは、物件法的には、この合意は、強行法的原則である一物一権主義に反するから、各部分を甲乙がそれぞれ単独所有するという状態は成立しえず、建物全体が甲乙両者に共有されているに過ぎないことになります。しかし、この合意は、甲乙間では全く無意味ではありません。すなわち、かかる合意があれば、東側半分については、甲は自由に排他的にこれを使用し、かつ費用を負担し、さらに共用持分(たとえば建物の入り口)と併せて東側の部分についての権利を第三者丙に譲渡することができ、乙がこの譲渡を承認せざるをえません。その意味では、物権法上の強行法規に反する合意といえども、多くの場合には、当事者間ではそのまま有効で、ただその合意に即した状態を第三者に対してこれを主張することはできないというに過ぎません。これに反して、親である甲と子である乙が今後二人の間には親族関係はないことにしようという合意をしても、この合意は単に対第三者・対社会において有効に機能し得ないのみならず、たとえば、もしのちに甲が自活出来なくなった場合には上述の合意の存在にも関わらず、甲は乙に不要を請求しうるという意味で、甲乙間自体においても、無効となります。このようにある規定が強行法規であるといっても、これに反する契約がどの範囲で無効かは、一律に定まっているわけではなく、各規定の趣旨に即して判断されなければなりません。

もう一例見てみましょう。最近タクシー不足で、白タク問題というか、ライドシェアを日本でも認めるかどうか問題になっていますが、仮にタクシー営業の許可を得ないで自家用車を用いてタクシー営業をしている甲が、新宿から武蔵境まで1万円の約束で乙を運送したとしますが、乙が代金を甲へ支払わなかったときには、甲は乙にこの支払を求めうるのでしょうか。また、この場合、乙が一万円を前金で払っていたという場合に、もし甲が輸送義務を履行しないときには、前金の返還や損害賠償を請求し得るのでしょうか。まず、甲のタクシー営業は、道路運送法四条一項及び九六条一号により禁じられています。通説によれば、私的契約を禁圧しようとする公法的法規には、その契約の効力を否定することによって一定の形の取引行為の発生を阻止しようとするものと、契約の効力自体には触れず、ただかかる契約をする者に対して刑罰を科する等の方法によってかかる契約をすることを当事者間に自制させようとするものがあり、前者を効力規定、後者を取締規定と呼びます。この場合の道路運送法の規定が効力規定であるとすれば、乙は契約上の運送代金の支払いの義務はなく、武蔵境に到達したことによる不当利得を甲に返還すべきかという問題のみが生じます。また、乙が前金を払っていた場合ですが、甲の債務不履行の問題は生ぜず、一万円の前金の不当利得返還の問題(但し、乙が悪意のときは、708条の「不法原因給付」の問題が生ずるかと思います)のみが生じ、ただ乙が善意のときにのみ、甲の契約締結上の過失(甲はかかる契約が無効であることを知りながら敢えて締結し、それいによって乙に損害を与えた)を理由と吸う損害賠償の問題が生じる余地があると考えます。

このように、今話題のライドシェアも現状の法律では、いわゆる白タク営業となってしまい、この白タク営業の禁止の規定を効力規定と解するとすれば、営業禁止の目的はより十分に果たされるが、その結果、甲乙間の契約が無効となり、取引秩序が乱れ、特に、先程の例で言えば、乙が前金を支払っていた場合などで、乙が善意(法律で善意とか悪意というのは、いい人とか悪い人という意味ではなく、そのことを知っているか知っていないかというときに使われます)の場合には、乙にとって酷な結果となります。実際、現役大臣がライドシェアを実現すべきと発言しているこの時勢ですし、効力規定と解するのは少し酷ですよね。したがって、このような場合は、道路運送法の規定にかかわらず、甲乙間の契約の効力は影響を受けず、ただ白タク営業をした甲が処罰を受ける場合があるに過ぎないと解すべきでしょう。この解釈のように、私的契約の効力には触れない範囲で一定の取引を禁圧しようとするものが取締規定ということになります。このように、ある行政的禁止規定が、取締規定か効力規定かは、規定の体裁のほかに、立法の趣旨、当該行為の社会的非難性の程度、この契約を無効とすることにより相手方ないし社会全般の受ける影響等を勘案して決せられるべきでしょう。ちなみに、このように述べた考慮されるべき諸事情のうち、特に重要なのは、当該契約の履行の状況です。すなわち、当該契約により両当事者が負うに至っている各債務が、(あ)いまだいずれも履行されていないか(い)いずれもすでに履行されているか(う)一方当事者の債務は既履行であるが、他方は未履行であるかによって、事態の処理の結論はかなり異なってきます。(あ)の場合は、結局は無効とされ、両当事者はいずれもその契約上の権利を実現しえないままとなると解すべき場合は多く、この場合には、この公法的規定がこの種の契約の出現を抑止しようとしている以上、裁判所が契約の実現に協力すべきではないという結論は法の趣旨に適するものだというべきでしょう。もっとも、このような状況にある場合でも、裁判所が、当該の公法的規定の存在にも関わらず、契約両当時しゃん権利の実現に協力すべき場合もないわけではなく、かかる場合には、契約が取締期待に反しているに過ぎないからだと説明されることになります。これに反して、(い)の場合は、少なからぬ判例が、両当事者とも既給付目的物の返還を請求することができず、給付目的物はいずれもその受領者の手中にとどめられるべきだと解しています。以上のことは、結局、公法的規定に反した契約といえども、それがすでに履行され、実現されている状態のことを取引の安全を乱してまで、これを無効として、現状に復せしめることは妥当ではないという裁判所の判断が基礎にあります。(う)の場合については、公法的規定の存在にも関わらず、契約の有効を前提とし、既履行の給付については、有効な弁済の効果として、これを受領者の手中にとどめおき、未履行給付についての他方の請求についても、これを契約の効力として肯定するか、あるいはまた、契約の無効を前提として、既履行の給付については、不法原因給付の法理を用いて、給付者の返還請求を肯定して、これを受領者の手中にとどめないこととし、未履行給付についての他方の履行請求は、契約の無効を理由としてこれを否定するという形になります。いずれにしても、結果に差はありません。

(4)公序良俗違反

(つづく)

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