中学受験、高校受験、大学受験で逆転合格する勉強法5選(1)
今回は 逆転合格する勉強法5選について紹介していきたいと思います。
まずは大前提として、勉強は苦手と思ってる人、成績がいまいち振るわない人に向けて、お伝えしたいと思い、本記事を書いております。勉強が苦手だと思ったり、成績が振るわないのは、今やっている、または、今までやってきた勉強の仕方に問題があるのであって、勉強そのものが苦手なわけじゃないし、勉強ができないわけではないということを、まずは生徒さん一人ひとりに分かって頂くことを最優先と保護者各位にはお考え頂きたく思います。
また、いつもお話ししておりますように、勉強の方法は無限にあります。古今東西、あらゆる勉強の仕方があります。これは冗談ですが、仮にそのその全てが苦手だったら、それはもはや何か別の才能があるはずなので勉強してる場合じゃないかもしれません。これはもちろん、冗談ですが、勉強法について、試行錯誤し、生徒さんに合った勉強法を見つけることは大変重要です。万人向けの勉強法、唯一の正解の勉強法というのはありません。生徒さんの習熟度はもちろん、性格や個性、家庭環境に至るまで、様々な要素が絡み合ってその生徒さんに最適な勉強法が決まってきます。この点について、予めご理解頂きたく思います。
さて、今回は、そんな無数にある勉強法の中でも、意外と知られていない効果的な勉強法5種類について紹介します。王道の勉強方法は、これから紹介する5種類の勉強方法には入れていません。
王道の勉強法というのは先生の話を聞いて板書をノートに移しならが、ノートに書いたこと手を動かしながら理解しましょう。板書は黒板やホワイトボードに書かれたものだけではなく、先生の発言など板書に書かれないものも積極的にメモしていきましょう(→最近は、学校の授業などプリント学習が増えてしまっていますが、できれば、学校で渡されたプリントを自分のノートに書き写すくらいに手を動かしましょう。昨今のプリント学習の弊害は意外と大きいです)。
そして、その自分の作ったオリジナルノート元に復習して、ワークやドリル、問題集などを解く。必要な場合は、テキストや参考書を確認して、大事なところは蛍光ペンで色をつけてたりして、覚えたいところは緑のペンで塗って赤シートをかぶせて覚えてるかどうかを試してみたり(→あんまりそこら中に蛍光ペンを塗ったり線を引いてはよくありません。大事なところに線を引くのも一つの手ですが、大事なところは線を引くまでも無い場合が多いので、できれば自分が忘れやすいところやミスしやすいところに線を引いたりマーカーをしましょう)、読むだけじゃなくて手を動かして書いて記憶を定着させていきましょう。
勉強したことが、知識として、血肉となり、頭に入っただけじゃなくて、本当に、問題を解けるようになったかどうか、を確認していき、解けなかったところにはチェックをつけるなど印を残し、後日時直ししましょう。とりわけ、5分以上考えても解けなかった問題などは、解答や解説を見て、解き方を確認してから解き直すなどをしたりしましょう。
こうして、できていなかったところは、繰り返し解説をよく読んで、もう一度解けなかった問題を解き直す、まさにこのPDCAサイクルを高回転で回していくことが王道の勉強法です。この王道の勉強法で上手くいっている方はそれを続けてください。
しかし、ここまでやっても頭に入らないものや、覚えることを色々と書き込んだり、隙間時間を使ってチェックをしたりと、地道に取り組むというものですので、なかなか手間のかかる勉強の仕方です。なので、取り組んでも、すぐにはできるようにはならないということも多いでしょうし、面倒くさいと思ってしまい三日坊主で終わってしまうことも多いと思います。
もちろん、この王道の勉強は、地道ではありますが、まさに王道であり、きちんと挫けずにコツコツと取り組めば、必ず勉強はできるようになってるとは思いますし、むしろ勉強できる人、成績が良い生徒さんというのは、そういう地道な勉強の取り組みがあって、今の成績があると思います。唯一の解ではありませんが、かなり多くの人にとって有効な勉強法の一つです。なので、特に抵抗を感じない生徒さんであれば、このやり方で突き進んで行けるのなら、それで良いかとも思います。
しかし、私が今からお伝えするのは、こうした王道の勉強法では成果が出ない。王道の勉強法では、なかなか勉強に取り組めない。でも、テストには合格したい。そんな人に向けて、今からご紹介する勉強の仕方を今まで試したことがなければ、一度は試してみることで勉強ができるようになるかもしれないよ、という意味でいくつかの勉強法を紹介したいと思います。
一点、注意して頂きたいのは、今回ご紹介する勉強法は、万人にハマるとは限らないでも一部の人には非常に効果がある、そんな納豆的パクチー的ドリアン的(?)勉強法です。好みがはっきり分かれる勉強法ということです。また効果があると言っても、これからご紹介する一部の勉強法では基本レベルまでしか通じないものもあり、必ずそれだけで志望校合格へ繋がるというわけではないことを予めご了承ください。
ただ、少なくともはっきりといえることは、「僕、私は、勉強ができないと思い込んでる生徒さん」へ勉強への意欲を喚起するという意味では効果は抜群ですし、これから紹介する勉強法を試してもらって、勉強をする楽しさを味わってもらって、自主的に勉強に取り組む姿勢へ臨めるようになり、見事、逆転合格を勝ち取ってもらえたら幸いだと考えています。
01 逆転合格する勉強法5選その1「イラストで学ぶ」
文字通りイラスト共に理解することです。文字がダメなら絵を見ればいいじゃないかという考え方です。実際、文字情報を中心とした教科書テキストに書かれていることを読んで理解するのが得意な人がいる一方、音声情報、たとえば先生が話すことを聞いて理解するのが得意な人もいます。でも、読むのも聞くのもあまり頭に入ってこない。
そんな人はイラスト(絵)の力を使って勉強を進めてみてはいかがでしょうか。まさに右脳を強く利用する勉強法です。ちなみにディスレクシアで悩んでいた徳光和夫アナの甥であるミッツマングローブ氏は文字情報を絵やイメージに変換したり結びつけてそのハンディキャップを乗り切り、見事、慶應義塾高等学校、慶應大学へと進学しております。
具体的には、例えば国語の成績を上げたいのなら読書や教科書の文字を辞書を使って調べていくというような文章を読んで行う勉強法ではなく、漫画を読書するという手があります。
「漫画だったらちょっと難しい言葉が出てきてもルビが振られてるから読める」と感じることは多いでしょうし、イラストがメインだからイメージと共に言葉の意味を、右脳で理解できます。
具体的には、角川漫画学習シリーズ『伸びる国語』とか『漫画でわかる10歳までに覚えたいシリーズ』みたいな漫画のイラスト付きの説明で言葉の意味を学ぶんです。『マンガで学ぶ〈国語力〉 ―大学入試に役立つ〈読む・書く・考える〉力を鍛えよう―』や『大学入試 マンガでわかる 現代文重要単語[基礎編]』などもおすすめです。
中学以降ですと、これは高校生の大学受験にも間違いなく有効だと思いますが、漫画の神様手塚治虫の『火の鳥』シリーズ、『アドロフに告ぐ』、『きりひと賛歌』や『奇子』、『シュマリ』、『ブッダ』などの名作漫画は下手な日本人の書いた文学や哲学書より味わい深いものです。思考力や読解力を高めてくれると思います。
また、算数・数学の成績を上げたいのであればみくに出版から出ている『マンガで算数シリーズ』とかナツメ社から出ている『やる気ぐんぐんシリーズ』の『オールカラーマンガ 算数に自信がつく!数字の世界』のような漫画イラストの本で学習したり、文章題を解く際は文章で説明されてる状況を簡単な図にしてみたり表にまとめて整理してみたりして考えるのがお勧めです。ちなみに、ドラえもんのシリーズも出ており、それもおすすめです。
中学ですと「カゲロウデイズで学ぶ数学」や学研プラスから出ている『マンガでわかる中学数学』シリーズや『マンガでカンタン!中学数学は7日間でやり直せる。』の様な漫画があります。『一目でわかるイメージ式! 高校数学・公式図鑑』などもお勧めです。
社会だったら、鉄板の教材として、学研や角川のマンガで学ぶシリーズ『日本の歴史』(世界の歴史もあります)、小学生・中学生限定であれば、ドラえもん『日本歴史』シリーズがあります。しかし、学研や角川のシリーズは、中学受験から高校受験、大学受験まで幅広く使える上、同書をしっかりと読んで覚えれば大学受験でGMARCHレベルは合格できる世界史力や日本史力がつきます(世界史はまた別にでております)。
理科は、もともと、イラストやビジュアルが大事な科目です。理科は4科目中、最も視覚情報と結びついている科目ですからね。理科では『ドラえもん』の理科シリーズや『空想科学学園』のような理科学習漫画を読んだりすると良いと思いますし、中学高校でも、化学を解説している漫画など多く出版されていますので、それらを利用すると良いでしょう。
02 逆転合格する勉強法5選その2「答えから逆算して解き方を探る」
この勉強法は、「答えから逆算して解き方を探ること」を重視する方法です迷路の最良の解き方は出口から遡ることだと言われ(あるいはアリアドネの糸を辿るという手もありますね)、迷路の攻略・迷路の必勝法は入り口から出口を目指すのではなくて出口から入り口を目指すことです。まさにそのやり方を利用するわけですね。
これは数多くある勉強法の中でもかなり効果の高い最強クラスの勉強法だと言っても過言ではありません。
冒頭に王道の勉強をお伝えしましたが、あれが王道であるならば、こちらはまさに覇道の勉強法ともいえるでしょう。この勉強法ができると偏差値大幅アップは間違いありませんし、これまでの成績が嘘だったように成績も上がること間違いなしです。
確かに、王道はまさに正論であり、正攻法です。しかし、覇道が邪道かというとそうではありません。
覇道を王道と対比させて明確に説いたのは孟子で、「力を以て仁を仮(か)る者は覇、徳を以て仁を行う者は王」という。仁政を装って権力政治を行うのが覇者である。孟子は王道を説きましたが、漢代になると、「王を図りて成らざるも、その弊は以て覇たるべし」(王充『論衡』)といわれるようになったように、王道と上下なく位置づけられるものにもなっております。
と、ここまで説明すると、「じゃあ、これ一択で決まりじゃないの」と思われてしまいそうですが、 この覇道というのは、まさに、(個人の力量)己の力をもって成し遂げるということです。
生徒さんの意志の強さやセンス、根気強さなど、いつも私がいうGrit力がものをいう勉強法であり、非認知的能力の有無に左右されてしまう勉強法ではあります。もちろん、そういう能力に長けていれば、必ず役立つ勉強法となります。
具体的には、問題を解いてから答えを見るんじゃなくて、問題を解く前に答えを見ちゃうやり方です。親御さんが子供に問題集やドリルやワークに取り組ませる場合、大抵の親御さんは子供に答えを見せないように管理するケースが多いです。
武蔵野個別指導塾は答えを積極的に開示し、宿題を課すときなどは基本的に「わからなければ解答と解説を読んで自分で理解して、解きなおして」と生徒さんに伝えておりますが、大抵の一般の塾では、講師が、生徒の宿題を出す際もテキストから宿題のページを指示するけど解答は渡されないケースが多いです。
そして、親御さんも学校の先生も塾の講師も子供が問題を解けなくて固まっていると、よくこう言います。「よく考えて」と。しかし、「よく考えてと言われて、それで答えが出せるなら苦労しないよ」ってってお子さんは思ってるかもしれません。考えても分からないから困っている場合が生徒さんには多いのです。もちろん、非常に飽き性の生徒で、問題に取り組んでも、2~3分もしないで「無理」と投げ出してしまう生徒さんがたまにいますが、それはもちろんNGです。それこそ、もう少しGritして粘り強く取り組みましょう。
しかし、私が以前数学でパスカルがマイナスを一生理解できなかったことやニュートンが虚数を一生理解できなかったお話をしましたが、理解しきっている問題でもなければ、いくらうんうんと机の前でうなっていても、答えはまずでません。もちろん、理解していて、応用問題でもう少し粘り強く考えれば解ける問題を放棄するのはよくありませんが、そもそも解き方もまったく見当がつかない、あるいは苦手な箇所で、解き方もうろ覚えという状態から、解くのは至難の業です。
繰り返しになりますが、一つの問題に時間をかけてじっくり向き合うことは大事です。「こうやったら解けるかな?」「いや、それとも、こうやったら解けるかな?」と何度も試行錯誤し、「ダメだこうしたら、どうだろう」と、そうやってトライアンドエラーを繰り返すのは、確実にお子様の思考力を鍛えてくれます(そして、非常に重要なGrit力などの非認知能力も鍛えてくれます)。
考えることなく、反射的に答えを出せる問題ばかり取り組むのは、思考訓練というより、単なる作業になってしまいかねません。もちろん、繰り返し行うことで、すでに解き慣れている問題を、より早く正確にできるようする、とか、繰り返し類題を解くことで、解き方のパターンや考えを血肉にしていくことは重要です。
しかし、先ほどのように、そもそも解き方も思いつかない問題、慣れていない問題については、幾ら反復練習しても解けるようにはなりません。ただ、解答欄の答えを見て、正しい答えを書き写すだけの写経になってしまいます。
反復練習のデメリットとしては、応用力もあまりつきづらいという点もあります。もちろん、類題を通して、初見の問題でも、今まで解いてきた問題のパターンや解き方を駆使して、解くという力をつけるときは役立ちますが、それができるのはかなり器用な子です。
それに、じっくり考えても(生徒さんによっては、算数や数学、国語の一問に30分、場合によっては1時間かけてしまう生徒さんもいます)解けない問題に時間をかけすぎるのは非効率です。はっきりいえば、時間の無駄遣いですし、この時間を本来勉強時間には含めた無い時間です(また、成績が低い生徒さんほど、勉強時間が長くても、その中身が、こういうただぼんやりと考えている時間であったりすることは多いです)。
そこで私は実行しづらい生徒たちに宿題を出す際に回答も一緒に渡すことが多いのですが、すると生徒さんは「答え見ていいの?」って戸惑うんですよね。「答えを見るのは悪いこと」と思っている生徒さんが多いんです。
これは塾では、私はかなりしつこく「答えを見ることは悪いことでは無い」と指導しているのですが、長年学校の先生などから答えを隠されてきた生徒さんにとっては、なかなか受け入れがたいことのようで、簡単には浸透しません。ぜひ、ご家庭でも「答えを見ることは悪いことでは無い」とお伝え頂き、その上で、「どうしてその答えになるのか考えることが重要なんだよ」と指導して頂きたく思っております。
しかし、問題を解いて答えが合っているかどうかというのは、試験では重要ですが、学力向上や、成績アップには関係ありません。学力向上や成績アップを実現するためには、解き方や問題の捉え方を通して、どう答えていくのかという考え方の筋道を学ぶことが大切です。
なので、問題を解いてから答えを見るのではなく、先に問題を解く前に、答えを見ちゃうんです。どうして、その答えになるのか、考えさせることを重視させるわけです。答えが、3/7だとしても、それは大事なことではありません。大事なことは、どうしてその数字が答えになるのか、答えへ至るまでのプロセスを自分で考えて、答えに合わせて過程(プロセス)を導出していくことを重視する学習する方法です。そして、宿題は答えを出すことでは無く、逆に、どうしてその答えになるのか、そのプロセスを講師に説明させるわけです。
これは何も算数・数学だけの話では無く、国語、英語でも同じように重要ですし、先日ご紹介したような社会の問題はもちろん、理科にも必要な力です。
つまり、「宿題は答えをただ書き込んでくる」だけじゃく、「なんでその答えになるのか?」を「説明できる」ようしてくることが重要で、「次回の授業で、その問題の解き方を説明してもらうからね」って言うわけです。すると、当然、生徒は「そっちの方が大変」って言います。このように答えを先に渡して問題を解く前に答えを見ることを推奨するには、こういう意味があるわけです。
答えから逆算して解き方を考えさせる方が、問題を受動的に解くよりも、頭を使うことはもちろん、、更に、他人にその答えになる過程を説明できるというのは、心底そこを理解している状態でなくてはできないことだからです。認知心理学的にも人に教えることができるレベルがもっとも理解度が高い状態とされます。
「知っていることと関連づけながら整理する」というプロセスを経ると、神経細胞どうしのネットワークが生まれ、知識が長期記憶として定着しやすくなると脳科学的にも実証されております。こうして、学びは、分からないことを分かるようになり、分かるから解けるになり、解けるから、説明できることへ発展していくわけです。そして、「説明」とは、「“未知の知識” を “既知の知識” によって言語化する」という作業です。
たとえば、最近流行の「NFT」を人に説明しろといわれた場合、まず、NFTを知らなかった場合、そういう自分が知らない言葉・概念があることを知ります。そして、それが何なのかを学び、NFTという言葉の一般的な意味とは「Non-Fungible Tokenの頭文字を取った略語で、デジタルアイテムの所有権を証明する特別な証明書のようなもの」と知ります。
そして、その上で「NFTとは、唯一無二性を保証された一点物のデジタルデータのことである」と説明するとき、「NFT」という “未知の知識” を、「唯一無二」「一点もの」「デジタルデータ」などの “既知の知識” を使って言語化して説明しているわけですね。
つまり、「説明」をすると、「“未知の知識” が “既知の知識” のネットワークに落とし込まれる」ため、理解が深まるのです。
尚、説明しながら勉強するうえで大切なのは、テキストなどの言葉を写すのではなく「自分の言葉で説明する」ことです。とりわけ、国語の場合、記述問題が苦手な生徒さんは多いですが、この訓練をきちんと行っていく必要があります。最初は、たとえ拙い説明であっても、自分が知っている言葉を組み合わせつつ、「こういうことかな」と推理・推論することを心がけると良いでしょう。
国語や算数・数学は、ちょっと勉強したからといって、なかなかできるようになりません。授業の受け方としても、サーカスを見る観客気分で、受動的に授業を受けていても、なかなかできるようにならない科目です。
国語や算数、数学では、全く同じ問題が出るわけではないし、幾らノートに問題を解いた形跡があっても、それが直接役に立つわけではないですよね。
なので、大事なことは、国語や算数、数学は、具体的な問題を、これは、「こういう種類の問題だ」と「抽象化」して「問題パターン」ごとに「汎用性のある解き方」を「見出し」てその「解き方で解ける」ようにトレーニングして、初めて高得点を安定して取れるようになるわけです。
国語や算数、数学は宿題として問題解く際に正解できるかどうかを大して重要ではありません。当てずっぽで答えを書いたら正解ということは国語や算数、数学ではよくあります。だから答えを先に見て、どうやったらその答えにたどり着けるのか。今回と似たような問題に次に出会った時にはどういう手順で答えに迫ればいいのかそれを考えるのが大切なわけです。下手の考え休むに似たり、その場限りの答えを出すために考えているようで、ぼけっとして、ただ時間を浪費してるくらいであれば、さっさと答えを見て、類題を解くのに通じる解き方を学んだ方が合理的です。
03 逆転合格する勉強法5選その3「暗記するよりも理解すること、あるいはストーリーで覚える」
逆転合格する勉強方法その3は、暗記するよりも理解すること。理解できなかったら、こじつけることです。あるいは、ストーリー(物語)で覚えることです。
覚えたことは、いつか忘れます。では、忘れないためにはどうすればいいのか。覚えないことです。禅問答のような冗談に聞こえるかも知れませんが、冗談ではりません。そのために必要なのは、覚えないで、何でそうなるのかを理解することです。あるいは、覚えようとしなくても覚えてしまうストーリーを作ることが有効です。
例えば、暗記勉強と呼ばれがちな代表格社会の歴史を例に挙げてみましょう廃藩置県、大政奉還、版籍奉還、この3つどれも日本のあり方を一変させた超重要な政策です。さあこの廃藩置県、大政奉還、版籍奉還を古い順番に並べるとどうなるか正解は大政奉還1867年、版籍奉還1869年、廃藩置県1871年の順番です。これを大政奉還、廃藩置県、版籍奉還と間違えて並べてしまったり、時代が近い分ごちゃごちゃになってしまう生徒さんが多いです。確かに、名前似てますもんね。
だから、幾ら頑張って覚えても、単純に覚えたことは忘れます。相田みつをではないですが「人間だもの」仕方がありません。じゃあ、どうすればいいのか。記号と数字の羅列を暗記するのはしんどすぎます。なので、これは覚えないで理解するんです。大政奉還には、政という言葉が入っています。政治の政を指す言葉です。大政奉還の「還」という言葉は戻すという意味ですね。古くは香港返還、現代でも北方領土返還問題でよくでてくる言葉です。
つまり、政治を戻すどう戻すのか。徳川家が、朝廷(天皇)に政治を行う権利を戻すってことですね。徳川家よりも大きな力を持った新政府に攻め滅ぼされる前に、政治の権利を新政府に返すことで、徳川家が新政府に攻め滅ぼされないようにすることを選んだんですね。
大政奉還によって、政治の権利を返された朝廷は徳川家が納めていた領土、つまりは土地(天領)を返還させます。版籍奉還ですね。版は人のことなんですけど、土地と人を朝廷に返す政策を出す。その上で今まで薩摩藩とか土佐藩とか何々藩と呼んでいた日本国内の分け方を廃止して、新たに鹿児島県とか高知県というように県を置いたんですね。藩を廃止して新たに県を置いたので廃藩置県です。
こんな感じでそれぞれの出来事には、つながりがあります。そのつながりを理解するんです。ただの記号や数字を覚えようとしても記憶には残りませんが、こういうエピソード記憶は長期記憶として残りやすいです。いや、そのつながりを理解するのが大変なんだよという方は、ぜひ当塾で社会の授業などをご受講くださいませ。
とりわけ、武蔵野個別指導塾では、社会ではストーリーを学ぶことを重視しています。もっと続っぽく言えば、社会の授業では、ゴシップを重視しています。
保護者の方でもお昼のワイドショーが好きな方も少なくないと思います。また、さすがに仕事があるのでワイドショーは読まずとも、週刊文春や週刊新潮、AERAや女性自身、場合によっては週刊SPAや週刊ポストなどもご覧になっているビジネスマン・ビジネスウーマンの方は少なくないのではないでしょうか。
これは、実は、あまり一笑に付すことはできない理由があり、人類学の研究では、こうしたゴシップ、つまり、うわさ話は「毛づくろい」の代わりだという考え方があります。サルが毛づくろいするのは、相手との親密さを示す一種のコミュニケーションです。親子、恋人、親友同士なら、おたがいの身体にやさしく触れたり、髪をなでたくなるだろう。それらの行為は、サルの毛づくろいとほぼ一緒です。
ヒトの場合は、そこに言葉が加わるわけですね。誰にでも気軽に触るわけにはいかないから、言葉で親密さを示すのです。話しかけるということは、それだけであなたに関心がある、気持ちが向いている証拠となります。言葉はいわば「遠隔毛づくろい」で、いろんな意味で毛づくろいと同じ役割を果たしているのです。
その意味で一番都合が良いのは、日常の他愛ない会話、うわさ話です。つまり、道で出会った知り合いとちょっと天気の話をする、あるいは共通の知り合いのことを話すというのは、サルが互いになでているのと近い行為なのです。
それを踏まえて、先の大政奉還の話をゴシップ記事風に伝えれば、この話題の中心人物の一人である徳川慶喜は、イケメンで家康公以来の神君とまでその秀才ぶりが称えられる江戸幕府最後の将軍ですが、結構ゴシップネタには事欠きません。ちなみに、慶喜はこんな風貌です。
徳川慶喜
はい、確かにイケメンで、いかにも優等生風ですよね。そんな慶喜は、当初「大政奉還」を、表向きは政権を返上しても、「朝廷には政治をとりおこなう力がないので、結局は朝廷のもとに幕府を含めた諸藩の連合政権がつくられ、そこで徳川慶喜も引き続き政治をおこなうことになるだろう」と考えていました。
徳川家には有能な家臣団も多く、彼らが新政府の主要メンバーになるだろうと考えていたわけです。「朝廷に政権を返して、徳川家を中心に新政府を作って、みんなで話し合って政治をしていこう!」というのが慶喜の本音であったわけですね。
実際、当時の有力な世論の一つに公議政体論というものがありました。これは、これまでのように、幕府のみに政権を任せるのではなく、朝廷と諸侯の会議によって国を動かしていこうという考え方です。幕府の欧米列強に対する弱気な外交姿勢が批判され、このような論調が生まれてきました。
しかし、慶喜はそれを逆手に取ろうと考え「大政奉還によって政権を手放しても諸侯会議にさえ参加すれば、国内では依然最大の兵力・勢力を持っている徳川家の主権は揺るがない」。慶喜はそんな見込みを持っていました。
事実、当時の朝廷には政権を返されても政治・外交を行っていく力はなく、しばらくは旧幕府が政治・外交を行っています。また、慶喜は、彼の敵である当時最大勢力の一つだった薩摩藩ですら甘く見ており、大政奉還の建白書を出した土佐藩と薩土盟約を結ぶなど、大政奉還と公議政体の樹立に動いていると慶喜は考えていました。
しかし、実際の薩摩藩は大久保利通らを中心にあくまでも武力倒幕にこだわります。大久保は岩倉具視らと協力し、幕府を朝敵とするための「討幕の密勅」を出させるべく朝廷に働きかけていました。ついに、密勅が朝廷から薩摩と長州に下されますが、ぎりぎりのところで先に大政奉還が上奏され、幕府と倒幕派の武力衝突は回避されたのでした。
こうして一時、倒幕の進捗は滞りますが、大政奉還のあった慶応3年(1867)の12月には薩摩藩を中心とする勢力が政変を起こし朝廷を制圧、新政府の設立を宣言します。これが「王政復古の大号令」と呼ばれる出来事です。同時に徳川慶喜の領地返還と内大臣職の辞職(辞官納地)が新体制派により決定されました。
王政復古の大号令によって徳川家の領地返還、慶喜の辞官が決定した際、慶喜は旧幕府軍の暴発を抑えるために大阪に退去します。しかし、これは経済的・戦略的に有利な大阪を押さえた上で、朝廷や諸藩に圧力をかけ、政局を有利にする目論みが慶喜にはありました。また、大阪において各国の公使に外交や条約の履行は徳川家の責務であることを訴えます。この目論みは半ば成功し、慶喜はしだいにその勢力を取り戻し始めます。
しかし、薩摩藩の西郷隆盛は、そうした流れに対抗すべく、江戸で数々の挑発行為を実行します。その結果、慶応3年(1867)12月25日に佐幕派の筆頭である庄内藩が江戸薩摩藩邸を焼き討ちするという事件が起こったのです。大阪の慶喜のもとにいた旧幕府軍の会津藩、桑名藩もこれに同調して薩摩藩への怒りをあらわにすると、慶喜はそれを制御することが難しくなります。
この出来事をきっかけに、ついに慶喜は薩摩討伐を宣言して京都に侵攻し、1868年1月27日に「鳥羽・伏見の戦い」が勃発します。この内戦のことを戊辰戦争(1869年6月まで)といいます。徳川側は、鳥羽伏見の戦いで、薩長連合軍に敗北します。このとき、薩長側に錦の御旗(官軍のしるし)が与えられたことで、日和見していた藩のみならず、淀藩(京都府)や津藩(三重県)など味方も寝返り、怒濤どとうのように旧幕府軍に攻めかかってきました。しかし、この錦の御旗には当時から疑義がありました。
実は、錦の御旗、この立役者である大久保利通の愛妾が手伝って用意したものでした。一見堅物層で、冷酷な面ばかりが強調されますが、彼もなかなかゴシップが多く、なかなかの女好きで、祇園一力(いちりき)のお勇という女性を囲って子どもをもうけたりしていますが、このお勇なかなかできる女でした。
大久保利通
はい、堅物で冷たそうな感じですね。で、討幕のシンボルとされる、この「錦の御旗」は、実際、岩倉具視の側近となる国学者の玉松操がでっち上げた草案といわれていますが、その材料となる西陣織を買いにやらされたのが、愛妾のお勇でした。大久保はこれを長州の品川弥二郎に渡して、「錦の御旗」を作らせました。これが突如として鳥羽・伏見の戦いの最中に翻ったわけです。
とはえい、まだこの段階でも、慶喜の逆転の可能性はまだありえました。当時から既に錦の御旗は真偽が怪しいとされていましたし、慶喜が難攻不落の大坂城に籠城し、徹底抗戦を宣言すれば、数週間後に関東中から大兵力が上坂し、新政府軍を撃破できる可能性があったからです。
ところが慶喜は、戦闘開始から3日後(1月6日)、大坂城から脱走して江戸へ逃亡します。イケメンで優等生の代表であるような慶喜にとって、朝敵になる、なんていうのは、今風に言えば、「不良のレッテル」あるいは「抱かれたくない男No.1出川のレッテル」を貼られるようなものです。慶喜にとっては、そんな屈辱耐えられなかったわけですね。それで、嫌なことには向き合おうとせず、とりあえず、逃げ出すことにしたわけです。
しかも、その逃げ方は驚くべき卑劣さで、昼間に重臣たちを城の大広間に集め、「この上はどうすべきか」と問い、彼らが異口同音に「一刻も早く御出馬を。そうすれば兵の士気がふるい、薩長を討ち平らげるのはたやすいことです」と依願すると、慶喜は「よし、ただちに出馬する。お前たちはその用意をせよ」と公言しました。重臣たちは大いに喜び、それぞれ急ぎ持ち場へ戻っていったそうです。
このように部下をだましたうえで、夜になって会津藩主・松平容保など数人を誘い、慶喜は、大坂城からこっそり抜けだし、大坂湾から船で江戸へ逃亡しました。しかも、一緒に逃げる容保たちには、やる気もないのに、江戸での再起を約束していたというから、なかなか人ですね。また、この際に、慶喜は、愛妾のお芳を連れて行っております。平たく言えば、仲の良い友人と愛人だけを連れて、忠実な部下を残して、逃げかえったわけです。
なんていう風に、ワイドショー的に話すと、徳川慶喜も戊辰戦争も、大政奉還も一気に覚えられます。下手をしたら、受験期だけではなく、10年後、20年後も覚えているかもしれません。生徒さんが、将来結婚されて、お子さまができたときに、保護者の方にとってはお孫さんに向かって、「徳川慶喜はね・・・」と語っているかもしれません。
しかし、高校や中学では、こうした授業はしてくれません。実際、今お話ししたことは、歴史学上諸説ある中の一つの解釈に過ぎないわけですし、いわゆる教科書に乗せてよいような定説ではありません。もちろん、教科書といえども、万事が万事定説や主流説を載せているわけではないですが、なるべく主流説、そして、なるべく論争あるところなどは深追いせず、解釈の分かれるところは、端的に表面的な事実だけを解説して逃げざるを得ないわけですね。まあ、教科書なので、仕方がないでしょう。
しかし、保護者の方もご存じのように、教科書は多方面に気を配り、よく言えば、なるべ中立・不偏不党、悪く言えば無味乾燥な記述に偏ってしまうので、小学生はもちろん、中高生にとってもあまり面白くありません。大体、愛妾だとか、偽計とか道徳的にあまり褒められたものではなく、なるべくそういう記載は省きたいですし、教育上も触れたくないところですよね。
とはいえ、歴史上の人物も、もちろん、現代人と変わらない人間です。また、相田みつをを使えば「人間だもの」仕方ないですよね。しかし、そうした人間味を省いてしまった教科書は、年号や出来事名の羅列になり、無味乾燥な内容になってしまいます。
そうなると、当然覚えづらいですし、本来、歴史はまさに物語りですし、哲学的にもこういうのを哲学者野家啓一の「歴史の物語り論」のようなものをイメージしてもらってもよいですし、歴史家の大家E・H・カーが『歴史とは何か』で「歴史は絶えず進んでいく過程である」といったように、あるいはまた、アナール学派の泰斗マルク・ブロックが、歴史が人生を考えることや人について関心を抱くことと無関係ではないという立場を採ったように、本来歴史とはこういう人間味にこそ、その醍醐味があるはずです。
しかし、残念ながら、小学はおろか、中学・高校では教科書も教師も無味乾燥なお題目を念仏のように唱えるだけです。眠くなる効果は絶大ですが、全く面白くはありません。
武蔵野個別指導塾などは、私塾であるので、その辺は、遠慮なく、面白おかしく、さまざまな学説や立場から、できるだけ多くの視点、面白い視点で、生徒さんにお話をお伝え出来ますが、公教育では、それは難しいことですよね。
少し話が脱線してしまいましたが、覚えるのではなく、理解する。あるいは、ストーリーとして、エピソード記憶として定着させる(自然に覚える)のが、良い勉強法であるわけです。
武蔵野個別指導塾・武蔵境唯一の完全個別指導型学習塾
【監修者】 | 宮川涼 |
プロフィール | 早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員。元MENSA会員。早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。一橋大学大学院にてイギリス史の研究も行っている。 |
社会=暗記という常識はもう古い!知識だけでは通用しない社会の問題(麻布中学校の社会の入試問題より)