基礎答案練習(1)
【問題】
甲は、Vに対し、自己の所有するA自動車を貸したが、Vは返却期限が過ぎてもA自動車を返却しなかった。そこで、甲は、A自動車を引き揚げてほかに転売する意図で、深夜、V宅のガレージに侵入し、Vに無断で、同ガレージに保管されていたA自動車を引き揚げた。
甲が、A自動車を引き揚げた行為について、甲に窃盗罪は成立するか。
1 刑法235条の構成要件該当性
「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する」
(1)「他人の財物」について
ア 「他人の財物」とは他人の占有する財物をいい、複雑化した現代社会では占有権自体保護の必要性があるため、242条(自己の財物であっても、他人が占有し、又は公務所の命令により他人が看守するものであるときは、この章の罪については、他人の財物とみなす)には、「他人の占有」は全ての占有を含み、窃盗罪の保護法益は占有である。
イ 本問では、A自動車は甲所有であり、242条「自己の財物」にあたる。しかし、VはA自動車を借りており、返却期限が過ぎてもVの自宅のガレージに保管しており、なおA自動車をVが占有しているといえる。
ウ よって、A自動車は、「他人が占有」するものといえ、242条のいう他人の財物とみなされる。
(2)そして、甲はVに無断でVのガレージに侵入し、Vに無断でA自動車を引き上げており、Vの意思に反して、VのA自動車への占有を害し、Vの甲の占有に対して窃取し、引き上げたことでA自動車の占有を甲が取得し窃取した。
(3)また、甲には窃盗罪の故意及び不法領得の意思もある。
2 違法性阻却事由の存否
(1)違法性阻却の根拠は、社会的相当性を有する点にある。そこで、社会通念上受忍限度を超えない限りは、自救行為として違法性が阻却される。
(2)本問では、A自動車がVから甲への返還期限を過ぎても、なおVが返還しない状況にあった。しかし、甲の行動様態は、深夜に無断で他人のガレージに侵入しており、正当な理由もなく人の住居若しくは人の看守する邸宅、建物若しくは艦船に侵入しており、230条住居進入等を行っている。また、甲がA自動車を引き揚げなければならないほどの緊急性・必要性も見当たらない。
(3)よって、Vは社会通念上の受忍限度を超えたとはいえ、違法性は阻却されない。
3 従って、甲がA自動車を引き揚げた行為について、甲の窃盗罪が成立する。
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【監修者】 | 宮川涼 |
プロフィール | 早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員。元MENSA会員。早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。一橋大学大学院にてイギリス史の研究も行っている。 |
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