学習に役立つメタ認知スキルについて

受験や日々の学習において、頭を悩ませるのは「どのようにすれば効率的に学習できるか」という問題だと思います。小学生や中学生であれば時間的な制約もあり、効果的な学習法を見つけることは一刻も早い課題と言えます。そこで本日は、教育心理学から脳神経学、さらに教育経済学や受験テクニックに至るまで、幅広い視点から「メタ認知スキル」について掘り下げてみたいと思います。

まず、メタ認知スキルとは何か、という問いから始めましょう。メタ認知とは、アメリカの心理学者ジョン・H・フラベル氏が定義した心理学用語です。元々は教育学や脳科学の分野で使われていましたが、近年ビジネス分野でもメタ認知が注目されています。このスキルは、簡単に言えば「自分の学習について自分で考え、理解する能力」を指します。もう少し具体的に言うと、自分が何を知っているのか、何をまだ知らないのか、そしてその未知の部分をどのように学べばよいのかを理解する力のことを言います。

このスキルを持つと、自分自身の学習をより効果的に制御できるようになります。メタ認知とは、知覚、情動、記憶、思考などを客観的に捉え評価した上で制御することで、認知を認知する(congnition about congnition)あるいは、知っていることを知っている(knowing about knowing)ということを意味しています。また、それを行う心理的な能力をメタ認知能力といいます。メタ認知は様々な形でみられ、学習や問題解決場面で用いられることが多くなっています。とりわけ教育の現場では、メタ認知能力の育成は重要な課題となっており、さらにメタ認知記憶が自己の記憶や記憶過程に対する客観的な認知であり、メタ認知の重要な要素の一つとなっています。

メタとはもともとギリシア語のMetaに由来し、高次の、超える、という意味を持っています。なので、メタ認知とは、自分が認知していることを一段階上から、言い換えれば高みに立って客観的に認知し制御することを意味しています。自分の上から冷静に客観的に人の目で見るようにという意味があるわけです。つまり、いつもの自分の認知だけではなく、一段高いレベルで、高いところから物事を見下ろし、全体を客観的に把握する(俯瞰する)ことで、もう一人の自分が自分を観るということです。そうしたことから、メタ認知の中には、「何かを考えるときに普段の自分が当たり前に考える」という側面を超え、もう一人の自分を見下ろしている自分がその見方や考え方を見直す観点を持つということが含まれています。

メタ認知は、知識と技能(スキル)があります。メタ認知知識というのは、簡単に言えば、自分自身に対する知識です。技能も含めて自分の短所や長所を知っている、自分の得意なこと、苦手なこと、強いこと、弱いことなどを客観的に評価して認知していることです。自分の短所や長所など、「自分自身について知っている知識」です。たとえば、「自分でしゃべるのは苦手だが、人の話すことの聴くのは得意」だとか「調子が良いときにすこしマイナスな要因が入ってくると落ち込んでしまい、マイナス思考になってしまう」という自分を自分で把握できて、それを自覚、理解している、できていることを言います。簡単な表現では、「自己分析ができている状態」です。その中に自分の不得意分野までもちろん把握できて、その上でその対処方法、対応方法まで把持できている事ではじめて「メタ認知能力を高める」ことになります。

次に課題に関する知識についてです。これは「過去の経験から得られた議題に関する知識」のことで、自分が過去の経験から客観的に評価して認知しています。たとえば、「自分は単純な計算問題を長期間しているとミスが出やすい」とか「普段は臆面なく喋られ得るのに、面接などの場では発言できなくなってしまう傾向がある」「試験になると、よく考えず即決してしまい、後から考えれば分かる問題を間違ってしまい、いつも後悔する」などの経験から得た議題を認知することです。これは自分の弱点や傾向を知り、改善や対策をするのに役立ちます。

そして、その解決策を考えるにあたって必要となるのが、解決策に関する知識です。「議題を解決するための具体的な知識」のことで、経験から得られる議題の解決策の要素を認知します。たとえば、「時間を区切りながら勉強をすると効率が上がる」とか「優先順位をつけて問題に取り組むと取りこぼしが少なくなる」とか「音楽をかけながら勉強をするとはかどるし、曲とともに記憶がたい着して暗記がうまくいく」などというように課題を解決するための具体策を認知します。

こうしたことを受けて、「メタ認知的技能(スキル)」とは、メタ認知知識を把握した上で、客観的に自分自身の状況を確認したり、問題解決したり、対策を講じたりする能力のことです。また、メタ認知技能には、「メタ認知的モニタリング」と「メタ認知的コントロール」の2つに分かれます。「モニタリング」とは、自分の認知が適切か監視する能力です。自分自身の認知が正しく働いているか、適切な行動がとれているかといった情報を監視(モニタリング)することです。「コントロール」とは、モニタリングした認知内容を制御する、まさにコントロールしてあるべき姿に持って行くことを意味します。せっかくモニタリングしても放置していては意味がありませんもんね。「自分は単純な計算問題を長時間しているとミスが出やすい」→長時間継続しないようにする。「面接の場では発言できない傾向がある」→相手を面接官だと思わず自分の父親や年上の兄弟と話しているようにイメージする。「問題を解く際にあまり考えずにパットといてしまって後悔することがある」→見直しの時間や問題を解くときに深呼吸をして、気持ちを落ち着けるなど、このように自分を知った上でコントロールしていくわけです。

また、モニタリングで、自分の知識の中に無い内容が求められるものがあれば、その必要な知識を持っている人に尋ねるなどの対応策をとる必要もあります。まさに、その点で塾を活用してもらいたいと思っています。自分の経験値にないことでも、他の人の知見をうまく活用すれば適切な対応策を考えることは可能なのです。誰でも経験したことばかりで解決策を考えているわけではありませんし、自分で経験したことだけに限るとすぐに限界が生じてしまいます。人に尋ねる、調べる(書物を読む、ネットで調べるなど)も大切な対処法であるということです。

メタ認知的モニタリングでは、メタ認知的知識を現在の自分に照らし合わせ、悪い傾向になっていないか、知識が足りているかなどを確認していくことが大事です。またメタ認知的コントロールでは、モニタリングで確認できたことを踏まえて感情をコントロールする、改善に向けて行動を変え工夫することなどが重要になってきます。メタ認知的技能はメタ認知的知識の応用で、メタ認知のスキルとしてはこちらの法が重要です。わかりやすくまとめると、メタ認知技能は、もう一人の自分を作り、自分を客観的に観てコントロールし、もう一人の自分がきちんと自分を正しく観れているのか、その見方が正しいのかをcheckした上で、正しい方向や改善に導いていくことができるようになる技能であるということです。

さて、ここで脳神経学の視点から見てみましょう。脳の研究からわかっていることは、新しいことを学ぶとき、私たちは新たな神経回路を作り出すということです。そしてこの神経回路の作り方は、個々人によって違うのです。そのため、自分がどのように学習すれば、自分の脳にとって最も効率的な神経回路が作られるのかを理解することが、メタ認知スキルの重要な一面なのです。

次に、教育経済学の視点を加えてみましょう。教育経済学者は、教育の「効率」について考えます。つまり、一定の教育投資(時間や労力)で最大の学習効果を得るにはどうすればよいのかという問いに答えを求めます。メタ認知スキルは、自分の学習に対する投資が最も効果的になるように調整する能力とも言えます。具体的には、学習内容を自分の言葉で説明してみたり、学習した後に何を得たのかを自己反省してみたり、新しい問題に対してどうアプローチすれば解けるかを考えたりします。これらは、自分自身の学習プロセスについて深く理解し、必要な改善点を見つけ出す作業となります。

最後に、記憶術や受験テクニックの専門家の視点から見てみましょう。彼らは、多くの情報を効率的に記憶し、必要なときに思い出すための方法を研究しています。その中でも、自分自身がどのように記憶しやすいのか、また忘れにくいのかを理解することは大変重要です。これはつまり、自分自身の記憶と学習のパターンを認識することで、その特性を生かした学習法を開発することが可能となります。

以上のように、メタ認知スキルは多角的な視点から見ても学習の効率性や質を向上させる重要なスキルと言えます。自分自身の学習について理解し、自分自身で制御する力を身につけることで、時間を無駄にせず、また自分に最も合った形で学習することが可能となります。

武蔵境駅徒歩30秒武蔵野個別指導塾 《武蔵境駅徒歩30秒》武蔵野個別指導塾

武蔵野個別指導塾・武蔵境唯一の完全個別指導型学習塾

【監修者】 宮川涼
プロフィール 早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員。元MENSA会員。早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。一橋大学大学院にてイギリス史の研究も行っている。

TOPに戻る

個別指導塾のススメ

小学生コース

中学生コース

高校生コース

浪人生コース

大学院入試コース

社会人コース(TOEIC対策)

英検準1級はコストパフォーマンスが高い

英文法特講(英語から繋げる本物の教養)

東大合格は難しくない

英語を学ぶということ

英文法講座

英検があれば200~20倍楽に早慶・GMRCHに合格できる

現代文には解き方がある

共通テストや国立の記述テストで満点を取る日本史

共通テストで満点を取るための世界史

武蔵境駅徒歩1分武蔵野個別指導塾の特徴

サードステーションの必要性

完全個別指導塾とは何か

中学校の内申点の上げ方の秘訣

学年別指導コース

得する中学受験

小5や小6からでも中学校受験で合格できる

中学受験をはじめるベストなタイミング

高校入試を始めるベストなタイミング

文部科学省

author avatar
ryomiyagawa
早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員 早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。
PAGE TOP
お電話