日本史講義 弥生時代の始まり
01-6 弥生人の生活
使用するテキストは基本的に記述対策により向いている『新日本史』(山川出版)を用いていますが、記事作成の都合上、時折『日本史』(山川出版)も用います。予めご了承ください。
弥生時代におこなってきた食糧生産が始まるとともに、人びとの生活も大きく変化した。この時代の水田は、一辺数m程度の小区画のものが多いが、灌漑・排水用の水路を備えた本格的なものであり、また田植えもすでに始まっていたことが知られている。耕作用の農具は刃先まで木製の鋤や鍬が用いられ、収穫は石包丁による穂首刈りがおこなわれた。穀を穂からとり、もみがらを穀粒から取り去る脱穀には木臼と竪杵が用いられ、収穫物は高床倉庫や貯蔵穴におさめられた。木製農具の製作には、初めは磨製石器が用いられたが、しだいに斧・槍鉋(教科書の表記と異なります。やりがんな、と読む)・刀子などの鉄製工具が使用されるようになった。後期には石器の多くが姿を消し、かわって鉄器が普及した。鉄製の刃先をもつ農具の普及とともに、前期の湿田だけでなく、中・後期には乾田の開発も進められた。地域によっては陸稲やさまざまな雑穀の栽培がおこなわれ、また農耕と並行して狩猟や漁労もさかんで、ブタの飼育が行われたことも知られている。人びとの住居は縄文時代と同じく竪穴住居が一般的であったが、集落には掘立柱の高床倉庫や平地式建物もしだいに多くなった。集落を構成する住居の数も多くなり、大規模な集落の各地に現れた。それらの中には、まわりに深い壕や土塁をめぐらした環濠集落も少なくない。
『詳説日本史』(山川出版社)
弥生時代において、日本でもようやく生産経済が始まったわけですね。高床式倉庫に食物が貯蔵され、灌漑や排水の水路も作られ、この頃から社会には身分制や貧富の差が生まれ始めるようになります。また、同時に、朝鮮半島や中国から鉄器が伝われ、日本は青銅器文明を飛ばして、一気に鉄器と青銅器の両方が入ってくるようになります。
また、乾田といわれる湿田とは異なる、排水路を備えた生産性の高い水田が作られるようになります。湿田と乾田とも水田ではありますが、後者は灌漑や排水を行うことで土壌がしっかりしているという違いがあります。
集落は、大規模化し、環濠集落や高地性集落といわれる山上に築かれた防御力の高い集落が登場し始めます。争いや戦争などに備えてのことでしょう。
死者は、集落の近くの共同墓地に葬られた。土壙墓(どこうぼ)・木棺墓・箱式石棺墓などに伸展葬したものが多い。九州北部などでは、地上に大石を配した支石墓を営んだり、特製の大型の甕棺に死者を葬ったりしたものがみわれる。また東日本では、初期には死者の骨を土器に詰めた再葬墓がみわれる。盛り土を盛った墓が広範囲に出現するのも、弥生時代の特色である。方形の低い墳丘のまわりに溝をめぐらした方形周溝墓が各地にみられるほか、後期になると各地にかなり大規模な墳丘をもつ墓が出現した。直径40メートルあまりの円形の墳丘の両側に突出部をもつ岡山県の楯築墳丘墓、山陰地方の四隅突出型墳丘墓はその代表例である。また、九州北部の弥生時代中間の甕棺墓の中には、三十数面もの中国鏡や青銅製の武器などを副葬したものがみられる。こうした大型の墳丘墓や多量の副葬品をもつ墓の出現は、集団の中に身分差が現れ、各地に強大な支配者が出現したことを示している。
『詳説日本史』(山川出版社)
死者を屈葬するのではなく、そのまま寝かせるようにした伸展葬が一般的になり、さらにお墓が大きく立派になってきたわけですね。既に確認したように、この頃から、身分制社会が生まれ、貧富の差が生じているわけですが、その証跡として、墓の大小があるわけですね。
集落では、豊かな収穫を祈願し、また収穫を感謝する祭りがとりおこなわれ、こららの祭りには、銅鐸や銅剣・銅矛・銅戈などの青銅製祭器が用いられた。このうち銅鐸は近畿地方、平形銅剣は瀬戸内中部、銅矛・銅戈は九州北部を中心にそれぞれ分布しており、共通の祭器を用いる地域圏がいくつか出現していたことを示している。これら銅鐸や大型化した武器形の青銅製祭器は個人の墓に埋められることはほとんどなく、集落の人びとの共同の祭りに用いられる祭器であった。それらは、日常の土の中に埋納し、祭りの時だけ掘り出して使用したものと考える説もある。
『詳説日本史』(山川出版社)
鉄器が農具など実用的な面で使われるのに対して、青銅器は祭器として用いられたわけですね。青銅器の方が色合いがきれいな一方、鉄器と違って脆いという特徴を生かして、そのように用いられたわけですね。
続く
【監修者】 | 宮川涼 |
プロフィール | 早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員 早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。 |