英文法講義~大学受験・高校受験に使える(1)時制(現在形)
00 前書き
英文法の勉強はまず、時制から入ります。五文型から入ってもよいのですが、それは後の記事に詳述することにしました。最初に日本語の文章を書きます。
「私は彼女に告白する」「私は彼女に告白した」
という二つの文章があるとして、この文章の意味の違いがわかるでしょうか。まあ、判らない方は少ないと思います。前者は、これから彼女に告白するという決意表明か、後者は過去に彼女に告白したことがあるか、という違いですね。このように時制が違うと意味が違います。英語でもそれは同様です。
といっても、前者を英語に訳すのは、多少難しい問題です。というのは、そもそも日本語では「私は」と主語を言う時点で何か、第三者に「他の誰でもなく、この私が」というようなニュアンスが加わってしまうからです。
筆者の見解として言えば、日本語は本来的に、主語という概念は乏しく、よく私が生徒にあげる例として言えば「I love you.」を仮に「私はあなたを愛している」と直訳して、そういう日本語が実際に使われる機会があるのかをよく訊ねます。「愛している」なんていうのは少し大人っぽいですが、最近の子はアニメやドラマでよくそういうシーンを見ているので、さすがに「私はあなたを愛している」なんていうシーンを見ることはありませんし、仮にあったとしたら、「(実は今までずっと隠していたが、他の誰でもない、この)私は、あなたを愛している」という、ようなニュアンスのかなり限定的な場面でしか使われないことが直ぐに分かると思います。
01 時制(1)
現在形を習うとき少し違和感を覚えたことはないでしょうか?というのも、名称は現在形なのに、現在じゃないことばかりに使われているからです。たとえば、”The earth goes around the sun.”(地球は太陽の周りを回っている)とか、”Nurses take care of patients in hospital.” (看護師は病院で患者の世話をする)とかですね。別に、今やっていることではない話ですよね。
それでは、その当たりを意識しつつ、例題から見てみましょう。
次の空欄に入るもっとも適切なものを選びなさい。
① The earth ( ) round the sun once a year.
(1) goes (2) went (3) go (4) has gone
② Firefighters always ( ) quickly whenever they are called.
(1) arrive (2) are arriving (3) arrives (4) have arrived
③ Rats have been widely used in medical research because they ( ) many traits with humans.
(1) are sharing (2) have shared (3) shared (4) share
(法政大学「英語」)
さて、軽い例題ですが、如何でしょうか?すぐにわかりましたでしょうか。これは答えを言っていくと、(1)、(1)、(4)です。完答できましたでしょうか。もし間違えてしまったという方や、なんとなく当たってしまったというだけの方は下の解説文を読んでみてください。こんなの簡単だ、という方は次の問題に進んでいきましょう。
まず、ここで問題になっているのは、時制の問題で、その中でも「現在形」の問題です。今回の時制の問題では、まず最初に現在形の意味の本質を知ることに目的があります。現在形というと、「今(now)のことを話しているんだ」と誤解している人がたまにいますが、それは違います。現在形の正式な定義は「話し手が、発話時において事実であると考えていることを表すときに用いられる」というものです。こういうと難しく聞こえるかと思いますので、私が好きな英語講師である関正生さんの言葉を借りれば、現在形というのは、「いっつも系」あるいは「過去・現在・未来形」といって良いでしょう。何が言いたいのかというと、現在形は決して今のことを話しているのではなく、いつものこと、を話しているということです。
実際、”A Student’s Introduction to English Grammer”にはこう書かれています。” The most basic use of the present tense is to indicate present time – more specifically, time that coincides with the time of utterance, as in. But the time of utterance is, of course, very short. It often takes only a second or two to utter a sentence. So naturally, there are severe restrictions on the use of the present tense in clauses with perfective interpretations.”と。要するに、発話している時間というのは、非常に短い時間で、せいぜい一秒か二秒くらいのものであり、正確に現在の時点を示すのは難しいということですね。実例として、” I promise to phone you tomorrow.” (明日、君に電話をするよ)というのは、未来のことを意味する文章になりますし、” Tricia mows the lawn.” (トリカが芝生を刈る)というのは、芝刈りは一瞬で終わることできるものではないので、時間的には幅を持つはずなので、正確に訳すると「トリカは(定期的/習慣的に)芝生を刈る」と訳すべきであるというわけです。
これを日本の文法書などを引くと、「普遍的な真理」やら「現在の習慣的行為」やらと何だか矢鱈と小難しい解説が出てくるのですが、「いっつも系」あるいは「過去・現在・未来形」といった方が理解しやすいかと思います。実際、英語圏の英文法書には、上述のように表現されているわけですね。結局、現在形というのは、現在のことを話しているのではなく、昨日も今日も明後日も変わらないことを話しているというわけです(時間的に未来のことであったり、ある程度時間的な幅を持つことに使われる)。
①の訳は、「地球は年に一度太陽を回っている」となりますが、これは今のことを話している訳ではなく、昨日も今日も明日も当てはまることを指しています。これは文法書では「不変の真理」と説明されていたりしますが、地球が急に2年かけて太陽の周りを回るようになることはあり得ることかもしれませんが(哲学者のカンタン・メイヤスーやデビット・ヒュームにいわせればそうなりますね)、少なくとも、昨日も今日も明日も1年かけて太陽の周りを回っているでしょう。
同じように、②や③でも、②「消防士は呼ばれればいつも迅速に到着する」とか③「鼠は広く医学研究に使われてきた。というのも、鼠は人間とたくさんの特徴を共有しているからだ」という文章でも、これは急に明日は消防士さんが遅く来ることもなければ、鼠が急に医学研究から使われなくなるからです(最近、ダックスフンドという犬種を作ることをイギリスが動物愛護精神から禁止しましたが、鼠には当分そういうことが起きなさそうですね)。なので、これらの問題での動詞の形は「現在形」になるわけです。じゃあ、逆に今だけのことや今していることを話すときにはどうすればいいのだろうか、と思うかもしれませんが、それは後に扱いますが、現在進行形を使います。
たとえば、こういう状況を想像してください。
Alex is a bus driver, but now he is in bed asleep. (アレックスはバスの運転手だが、現在ベッドで寝ている)というときにに、” He dives a bus.” (彼はバスの運転手だ)ということが可能であるわけです。
もう少し分かりやすい例を挙げると、たとえばこんな文章です。
He smokes.
あんまり小池都知事下の現代の東京では好ましくない例かも知れませんが、こういうとき、彼はタバコを吸っているのかというと、それは分かりません。この文章から分かるのは「彼はタバコを吸う人だ」とか「彼は喫煙者だ」ということです。つまり、仮に今彼がタバコを吸っていなくても「He smokes.」といえるわけです。もちろん、「彼は今煙草を吸っている。」と言いたいのであれは、” He is smoking now.”などと現在進行形を使って表現すればいいわけですね。
他の例文も幾つか挙げておきましょう。”My father usually comes home from work at 7:00 p.m.”(父は普段は午前七時に仕事から帰宅する)、”At present we live in Tokyo.”(現在、私たちは東京に住んでいる)、”The professor said that water boils at 100℃.”(水は摂氏100℃で沸騰すると教授は言った)などですね。習慣的動作とか不変の真理とかでもよく挙げられる例ですが、そのような理解ではなく、「過去・現在・未来形」で「いっつも」のことを言っていると理解しましょう。その意味で、現在形は、いっつも形なので、行為の頻度を表すともいえます。たとえば、” In the summer John usually plays teniss once or twise a week.” (ジョンは、夏にはいつも、週に1、2回はテニスをしている)とか、” I get up at 8:00 every morning.” (私はいつも朝八時に起きている)、” I always go to bed before midnight.” (私はいつも真夜中の前にはベッドに入る)、” John isn’t lazy. He works very hard most o the time.” (ジョンは怠惰ではない。たいていとても一生懸命働いている)といった具合ですね。
もう少し砕けた感じで、日常会話でよく使われる場面で言うと、” What do you do?”という表現がありますが、これは「今あなたは何をしているの?」という質問ではありません。なので、こう聞かれて「I am smoking now.」などと答えてしまっては会話が成り立ちません。”What do you do?”というのは、現在形なので、「あなたはいつも何をしている人ですか?(もっと砕けて訳せば、あなたのご職業は?)」という意味です。なので、生徒さんなら「I am a student.」ですし、私なら「I am a teacher.」というところでしょう。
文法用語というのは時に難しく、その本質を余り上手く表現していないことがありますが、現在形もまさにその一つですね。では、以下に現在形の基本例文を幾つか紹介しておきましょう。
His house stands on the hillside and commands a splendid view. (彼の家は、丘の中腹にあって、見晴らしが素晴らしい)
Formerly, people did not know that the earth is round and that it moves around the sun. (昔の人は、地球が丸く、太陽の周囲を回っていることを知らなかった)
02 時や条件を表す副詞節の中では未来形の代わりに現在形を使う
今度は、現在形の中でも大学受験では重要な文法事項をお話ししますね。これは高校受験には余り出ることは少ないのですが、大学受験では定番の文法事項になります。さっきまで文法用語は何だか難しくてよくないですね、といっておいて、口も渇かぬうちに何だか難しい文法用語を使ってしまっていて恐縮ですが、そんなに難しく考える必要はありません。
これは、未来のことを話しているのだけど、現在形を使いますよ、ということで、その場合は、時や条件を表す副詞節(副詞節というのは、副詞、つまり動詞・形容詞・副詞または文章全体を修飾する語という意味で、そういう副詞のかたまりのことを副詞節といいます。ちょっと難しいなと感じたらスルーしておいてください)においては、未来のことを話していても現在形を使いますよ、ということを意味しています。例題でみてみましょう。
① If you ( ) now, you’ll be able to catch the 7:30 train.
(1) start (2) started (3) will start (4) had started
② If it ( ), come home right away. *但し、これは不適当なものを選びなさい。
(1) is raining (2) rains (3) starts raining (4) starts to rain (5) will rain
③ You’ll be sorry if you ( ) make reservations in advance.
(1) won’t (2) shouldn’t (3) don’t (4) wouldn’t
④ I’ll call you when I ( ) my homework.
(1) finish (2) finished (3) will finish (4) would finish
どうでしょうか?パッと選択できましたでしょうか。答えをパッと言っていくと、上から、(1)、(5)、(3)、(1)です。②以外は全て現在形を選べば良く、②だけは不適当なのは、will を使った未来形なので、それを不適当なものとして選ばせる変化球のような問題でした。ちなみに、②は(5)以外は全て当てはまります。①だけ解説しておきますが、「もし今出発するならば、7:30の電車に間に合うことができるよ」という意味ですね。つまり、まだ出発しているわけでは乃至、出発するのはこれから先のこと、つまり未来のことですが、こういう「もし~したら」という条件を示す副詞節の中では未来のことも現在形で表現するということです。「時や条件を表す副詞節」の中では未来のことでも「現在形」を使う、ということを改めて覚えておきましょう。引き続き、次の問題も片付けて、きちんと理解出来たか確認してみましょう。
① A: Unless the train ( ) soon, I wonʼt get to the meeting on time.
B: Maybe you should catch a taxi.
(1) will comes (2) came (3) will come (4) comes
② Weʼll leave as soon as it( )raining.
(1) should stop (2) stopped (3) stops (4) will stop
③ By the time you( )back, dinner will be ready.
(1) get (2) got (3) had got (4) will get
答えを選べましたでしょうか。答えは、上から、(4)、(3)、(1)となります。もう慣れてきたのではないでしょうか。
03 東大の要約問題
武蔵野個別指導塾では東大進学を全面的にサポートしておりますので、英文法記事の最後には都度、東京大学の英語の大問1の問題を載せて置きます。東京大学の問題は、高校生の教科書の範囲にの単語、文法しか問われない良問です。また、単純な英語力だけでは無く、日本語力・思考力・表現力も問う総合的な問題です。ぜひ力試しと思って毎回取り組んで頂けると幸いです。第一弾は、東大でこの要約問題が始めた1960年の問題から出題していきたいと思います。
The great majority of mankind are not dominated by self-interest. Of course they want a decent living for themselves and their families; they want reasonable security and a quiet life. But they are not driven on by a greedy appetite for power or even for great wealth. Therefore, when the people are called upon to sacrifice their life for an active foreign policy or, still more, in war, it is useless appealing to them on grounds of self-interest. This is the very cause which they have rejected unconsciously as the motive for their private lives ; they will reject it equally when it is put forward as the basis for foreign policy. A democratic foreign policy has got to be idealistic; or at the very least it has to be justified in terms of great general principles. If the people are to exert themselves they must be convinced that what they are doing is for the good of mankind and that a better world willcome out of it. The realists smiled at the war to end war (First World War ) and at the hopes for a lasting peace in the Second World War ; but these wars could not have been kept going without these appeals. Once tell people that they are fighting only for their properies or their lives, and they will discover that there is an easier way to do it – to surrender.
上の文を読んで、
a 全文の大意を50字から150字までの範囲の日本文で書け。ただし句読点は字数にかぞえない。
(東京大学「英語」1960年)
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【監修者】 | 宮川涼 |
プロフィール | 早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員。元MENSA会員。早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。一橋大学大学院にてイギリス史の研究も行っている。 |
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