さまざまな入試から窺える思考力を問う問題~晃華学園中学校編
麻布中の問題を見て、「といっても、一部の超難関中や名門中だけの話じゃないか」と思われた方もいらっしゃったようなので、違う中学校での問題も紹介させて頂きます。
麻布とはまた違う角度で、SDGsの観点で考えさせる問題を出している中学校として、「晃華学園中学校」の2022年度の社会の問題も紹介したいと思います。こちらも偏差値60レベルとかなり難しめの中学校ですが(四谷大塚の偏差値では56)、別に御三家や新御三家以外でも確実に、こういう暗記だけでは通用しない問題が出ている例として紹介させて頂きます。
01 晃華学園中学校の社会の問題を通して学ぶSDGs
――晃華学園中学校2022年「社会」――
次の文章を読んで、後の各問いに答えなさい。
①内閣府は、 日本の未来の姿として、 右の図にあるような「Society 5.0」という社会を目指しています。「Society 5.0」とは、 デジタル空間と現実世界を一体化し、 経済の発展と社会的課題の解決を両立する社会です。
「Society 5.0」の社会では、 さまざまな情報を人工知能 (AI)やロボットが処理し、 これまで人間が行ってきた作業を機械が行い、 自動化されることなどが期待されています。 そして、人類は次のように、「Society 1.0」から「Society 4.0」までの4つの段階で発展してきたとされています。
Society 1.0 狩猟社会
野生の動物を狩り、 ②漁業をはじめ、 植物の採集を中心とした生活を送っていた社会。 また人類は狩りや採集のために、 新たな道具や手法を生み出しました。 日本では、おおよそ旧石器時代から③縄文時代にあたります。
Society 2.0 農耕社会
田畑を耕し、④小麦や米などの作物を育て収穫していた社会。人類が⑤農耕や⑥牧畜をはじめたことにより、食料を大量に生産することができるようになりました。その結果、人々が1つのところに集まって住むようになり、都市や文明が発展しました。日本では、おおよそ⑦弥生時代から江戸時代にあたります。
Society 3.0 工業社会
機械製品の発展などにともない、⑧工業が発達した社会。18世紀後半の産業革命で蒸気機関発明され、19世紀後半には電力の使用が広がりました。 その結呆、 農耕社会以上に生産性が向上し、 移動時間が大幅に短縮され、 私たちの生活は便利になりました。 日本では、おおよそ⑨明治時代から⑩昭和時代にあたります。
Society 4.0 情報社会
⑪インターネットや携帯電話・スマートフォンなどの普及により、 世界中がネットワークでつながった社会。 人類は世界のどこにいても、 あらゆる場所の⑫情報をすぐに知ることができるようになり、 時間や距離の制約から解放されました。 日本では平成時代以降にあたります。
「Society 4.0」の社会では、これまで以上に生産性が向上し、社会が発展してきました。 一方、世界は⑬環境・⑭エネルギー ・貧困 ・ ⑮医療・教育など、 さまざまな社会的課題をかかえています。これらの課題を解決するために、国連で採択された目標が「持続可能な開発目標」(SDGs)です。そして、⑯「Society 5.0」の実現は、 SDGsの達成にもつながると考えられています。
(中略)
問16 下線⑯について、下図はSDGsの目標4「質の高い教育をみんなに」です。「Society 5.0 」でさらに進化が期待されるデジタル化が、「質の高い教育をみんなに」の達成に、 どのようにつながると考えられますか。 具体的な例をあげて説明しなさい。
(「国連広報センター」HPより)
今回は、全問紹介せずに敢えて一番抽象度の高い問題に絞って紹介させて頂きました。
「デジタル化」が「質の高い教育をみんなに」という目標に如何に貢献することができるか考えさせる問題です。良問ですね。
当然、正解は一つではありません。四谷大塚の模範解答では「オンライン授業の拡大やAIの導入によって学びにおける時間・距離の制約から解放され、個人に応じた的確な学習指導が可能になることで、世界中の子どもたちが質の高い教育を受けることができる。」となっておりますが、他にも色々解答が考えられるでしょう。
02 そもそもSDGsとは?そして、武蔵野個別指導塾の考える学びとは。
そもそも、SDGsは持続可能な開発目標の略称であり、世界にある様々な問題を17の目標として掲げ、その下に169のターゲットと232の指標を定め、実現に向けた取り組みを国際的に行っています。2015年に行われた国連サミットにて全会一致で採択され、2030年を期限としてこの国際目標を達成すべく動いています。これは、2000年から2015年までのミレニアム開発目標(MDGs)の後継として位置づけられています。MDGsが主に発展途上国の貧困削減に焦点を当てたのに対し、SDGsはより包括的で普遍的な課題に取り組むことを目指しています。ちなみに、SDGsの17の目標というのは、貧困、飢餓、健康、教育、ジェンダー平等、水と衛生、エネルギー、経済成長、産業とインフラ、不平等の削減、都市とコミュニティ、責任消費と生産、気候変動、海洋資源、陸上の生態系、平和と公正、パートナーシップの17の目標から成り立っています。各目標は、具体的な指標とターゲットによって支えられています。
教育におけるSDGsの目的は、「包括的かつ公平な質の高い教育の普及と、生涯学習の機会」を提供しようと考えるもので、その一巻として「デジタル化」は重要な方法として考えられており、実際、日本の武蔵境にある武蔵野個別指導塾のような個別指導塾でもオンライン授業に対応しているように、活用の可能性は世界中で検討されております。こうしたオンライン授業を通じて、いじめや不登校による教育機会の喪失や教育現場における教員不足に対応し、学校へ通えない生徒さんや集団授業に馴染めない生徒さんをZooMなどのツールの利用やデジタル教材を利用することが日本においても重要と考えられています。
また、完全に個別にカスタマイズされたマンツーマンの指導で生徒さんが分からないところから遡り学習をするなどし、分からないことを分かり、分からないことを分かる喜びを感じてもらい、苦行としての勉強ではなく、楽しい学びへと昇華させていくお手伝いをさせて頂いております。他にも、既卒生や社会人の方などでもリカレント教育(英検やTOEICであったり、簿記なども行っております)やリスキリング教育を行い、名門大学への進学や資格取得を支援したりしております。
確かに、中学受験をする子どもたちは総じて経済的に恵まれています。それでも、本問では、自分たちとは違う環境にある子どもたちの存在にも想像力を働かせ、関心を持つことが普段からどれだけできているかを試している問題であるといえます。この解答を通じて、家庭での親子の会話をぜひ盛り上げて頂ければ幸いです。
学びとは、決して苦行ではなく、子どもの知的好奇心を刺激し、日本社会だけではなく、世界へ視野を広げる気づきであると武蔵野個別指導塾では考えております。ちなみに、SDGsについても、ただ知っていれば良いというわけでもなく、SDGsの17の目標と169のターゲットは、国によって異なる政治的、経済的、社会的な条件を考慮せずに設定されているため、各国の実現可能性は大きく異なり、また、SDGsは、具体的な実行メカニズムや資金調達の枠組みが不十分であるという批判も受けています。その中には、日本の哲学者斎藤幸平さんのように、SDGsは民衆のアヘンであるというような見解もまた今度は国語の問題で出てきたりするので、単純に社会問題への関心を持つだけではなく、そうした問題を自分の頭でしっかりと考える力というのが大切であるわけですね。
麻布中学の社会の問題
武蔵中学校の社会の問題
武蔵野個別指導塾・武蔵境唯一の完全個別指導型学習塾
【監修者】 | 宮川涼 |
プロフィール | 早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員。元MENSA会員。早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。一橋大学大学院にてイギリス史の研究も行っている。 |
社会=暗記という常識はもう古い!知識だけでは通用しない社会の問題(麻布中学校の社会の入試問題より)