英文法講義~大学受験・高校受験に使える(6)助動詞1

01 助動詞の原則

助動詞というのは、文法用語を使うと正確には、法助動詞(model auxiliary)と呼ばれます。法助動詞というと難しく聞こえるでしょうが、意味は簡単で、「話し手の心的態度を表す」という意味です。正確に言うと、「話し手の事実性や実現性に対する態度」を意味します。”Speaker’s attitude of factuality or actualisation”(”The Cambridge Grammer of the English Language”)と書かれています。これは本格的な文法書の解説なので、難しく聞こえますが、話者の主観・心的態度が添えるというイメージで、大丈夫です。

また、助動詞の原則として、話し手の事実性や実現性に対する態度という風に、助動詞には二つの意味があります。canのイメージを理解しながらそのことを学んでいきましょう。一つは(1)動作系(動作動詞につく) もので、 can を「できる」と理解するもので(といっても、本当にできるのではなく、心的態度としてできるとっているだけです)、その例として、” I can see it.”(見えます)というのが適当でしょうか。二つ目が、(2)予想系(状態動詞、特に beにつく) といわれるもので、canを「ありうる」と理解するものです。その例として、”Sometimes it can be problematic and time-consuming.” (時々それは問題になり時間がかかる可能性がある)であるとか、”You can’t be serious.” (本気のはずがない)というような場合です。このように助動詞には二つの意味があります。

他の例文で示すと、” Computers can do a lot of things.” (コンピューターは色々な事が出来る)と、” This kind of thing can happen every now and then.” (この種のことはよく起こることだ)というような違いです。

まず前者についての解説ですが、アメリカ合衆国第44代大統領オバマ大統領の演説で多用された”Yes, we can.”を思い出してみましょう。彼のこの言葉は彼の演説でよく用いられたものですが、これは「私たちは出来る」という意味ではありません。やればできるくらいなイメージです。ちなみに、これから助動詞を紹介する度に数値でその程度を説明していきますが、canは60%ぐらいの半々よりちょっと超えるかなあ、ぐらいのイメージです。

”This is our moment. This is our time, to put our people back to work and open doors of opportunity for our kids; to restore prosperity and promote the cause of peace; to reclaim the American dream and reaffirm that fundamental truth, that out of many, we are one; that while we breathe, we hope. And where we are met with cynicism and doubt and those who tell us that we can’t, we will respond with that timeless creed that sums up the spirit of a people: Yes, we can.”

(今こそ我々の出番です。今回は、国民へ仕事を取り戻し、子供たちのの機会の扉を開き、再び反映を取り戻し、平和の理想を推し進め、アメリカンドリームを再宣言し、基本的真実を再確認します。つまり、大勢の中からなるといっても、私たちは一つであり、息をする限り希望があるということです。そして、冷笑主義や懐疑主義、「私たちにはできない」という人々に出会った時、国民精選を一つにまとめあげる時代を超えた信条をもって私たちは答えたい。いや、成せば成る、と。)

この演説に限らず、”Yes, we can.”を決め台詞として使ったオバマ大統領でしたが、これは「100%できる」とか「(客観的に)可能だ」というよりは、やろうと思えばやれるよね、程度の意味でしかないと言うことです(決して投げやりな意味ではありませんが)。私が印象的なお話しとしては、沢木耕太郎の『深夜特急』で出てくるシーンで、彼がタイに滞在いていたとき、タイの青年に” Can you speak English?”と訊ねたとき、” Soryy. I can’t speak English.”という受け答えを受けたときに、彼は「英語を話せない」と答えているわけですが、一応、英語で答えているので、話者の気持ちとしては「いや、英語なんてそんな流暢には話せないよ」という気持ちがあるとしても、沢木耕太郎としては「単語くらい分かるんじゃないのか」と考え、彼とタイ英辞典を通じて指差し対話を始めるシーンが印象的です。つまり、タイ人の青年は、辞書を使って指指しで会話をすることはできるのですが、心情的にできないことに主眼があるということですね。

それでは、以下からそれぞれの助動詞を一つずつ見ていきましょう。

02 willのイメージ

willの核心的なイメージは、数値で言うと「100%する!」という意味合いです。たとえば、”A drowning man will catch at a straw.” (溺れる者は藁をも掴む)とか、” I will treat myself to a new suit.” (奮発して背広を一着作ろう)というように、強い意味があります。実際、教会で、結婚式において、神父さんが” Will you take Hidetaro to be your husband? “と聞いてきたのに対して、新婦が”I will.”と答えるように、断言に近い意味があることを覚えておきましょう。wouldになっても「100%した!」というようなニュアンスを持っています。逆に否定形で使うと、” The lid of this bottle won’t come off.” (この瓶の蓋はどうしても開かない)とか、”This door won’t open.” (このドアはどうしても開かない) “He was a very stubborn person and would not listen to me.” (彼はとても頑固の人だったので、私の言うことは全然聞かなかった)という強い意味になります。他の例文を以下に挙げておきましょう。

We would seem to live in an age of experiments. (我々は実験の時代に住んでいるようです)

I would be glad to send it to you. (喜んでそれをあなたにお送りいたしましょう)

That would be what most women do. (それは大抵の女の人がすることでしょう)

If anyone in London would know, he should. (もしロンドンで誰か知っている人がいるとすれば、彼のはずだ)

他に成句的な表現として、”would like to ~”(~したいと思う)や”Would you ~ ?” (~ませんでしょうか?)、” would rather ~” (むしろ、~したい)も覚えておきましょう。

03 shouldのイメージ

shouldのイメージは数値でいうと75~80%で、「当然」くらいに理解しておきましょう。” Since he was born in 1927, he should remember the Second World War quite well. “(彼は1927年生まれだから、第二次世界大戦のことをよく覚えているはずだ)や” The Sasakis should have arrived in London by now.” (佐々木さん一家は今頃はロンドンに着いているはずだ)などという感じです。他にも例文を以下に幾つか挙げておきます。

You should make up for it. (君はその埋め合わせをするべきだ)

You should be there within an hour. (一時間たらずでそこにつくはずだ)

He should succeed this time. (彼は今度も成功するはずだ)

04 mayとmightのイメージ

次はmayとmightのイメージは、数値で言うと50%くらいのイメージです。正確に言うと、mightがmayよりも弱めで、45%くらいのイメージです。日本語で訳すと「~かもしれない」となりますが、ここは数値で理解した方が良いかもしれません。フィフティーフィフティーというイメージが大事です。”You may go if you want to.” (行きたいなら行ってよろしい)というのは、行きたいなら行ったら、ぐらいの若干投げやりな意味と思ってください。たとえば、下記の例文を見てみましょう。

He may show you the work. (彼は君にその作品を見せるかもしれない)

It may not rain tomorrow. (明日、雨は振らないかもしれない)

May the news not be true? (その報道は本当ではないのじゃないか)

You might ask him to be chairman. (彼に議長になってくれるように頼んだらどうだろう)

It might rain tomorrow. (明日、雨が降るかもしれない)

05 mustのイメージ

mustのイメージは「プレッシャー」です。但し、かなり強いプレッシャーで、例によって数値で言うと、95%ぐらいのイメージです。たとえば、” I must tell him at once.” (すぐに彼に言わなければならない)とか、” She must not stay here alone.” (彼女はひとりでここにいてはならない)、” The news must be true.” (その報道は事実に違いない)、” It must rain pretty soon.” (まもなく雨が降るに違いない)というように、かなり強い意味になります。

また、mustはよくhave to~と比較されますが、殆ど同じ意味なのですが、mustが話し手がその身分や地位などによって個人的に何かを強制する意味を伴うのに対して(法助動詞の本質ですね)、have to~にはその含みが無く、規則・協定・第三者の意思など話し手とは無関係の事情によって「~しなければんらない」という場合になります。また、mustには過去形や未来形がないので、have toを代用することもあります。たとえば、” We have to stay late at the office tomorrow. We’re working on a big project at the moment.” (明日は会社に遅くまで残らなければならない。現在、大型のプロジェクトに取り組んでいるところだ)。次の例文を見てみましょう。

You must stop smoking.

I have to stop smoking.

前者は、「(あなたは)たばこを辞めなければならない(私の命令によって)」というニュアンスで、後者は、「(残念ながら)私はタバコを辞めざるを得ない(体調を壊したので)」のようなニュアンスの違いがあります。代用表現としては、下記の例文を見ておきましょう。

I had to go. (私は行かなければならなかった)

I didn’t have to go. (私は行かなくても良かった)

You will have to study very hard when you go to university. (大学に入ったら、一生懸命勉強しなければならなくなるでしょう)

などですね。

06 canとcouldのイメージ

canのイメージは、冒頭でも述べたように、数値で言うと60%くらいのイメージです。まあ、起こりうるくらいの感じですね。” It can snow, even here, in spring. (ここでさえ、春に雪が降ることがあり得る)、”She can be very sarcastic.” (彼女は時によって、とても皮肉に口を利くことがある)という感じです。なので、”He can pass the exam.”というのは、”It is possible for him to pass the exam.”という意味で、「彼は試験に合格する可能性がある」という意味になるわけです。

また、大学受験という分野に限っていえば、canは「あり得る」という意味でしか殆ど問われることはありません。”Accidents can happen.” (事故は起こりうる)という感じのこれまで紹介してきたような「あり得る」という意味で把握しておけば十分でしょう。

既にcanのイメージは冒頭で述べているのでcanはこれくらいで大丈夫でしょう。

ここでは、couldを見ていきましょう。couldはcanの過去形ではなく、また違う別の助動詞であることが重要なポイントです。数値でいうと、一気に下がって30%くらいな感じです。たとえば、” I could pass the examination.” (試験に合格出来るかもしれない)や” They could help you in your work.” (彼らはあなたのお仕事の手助けができるでしょう)という感じですね。

だから次のような文脈ではこうなります。

“A growing number of children enjoy playing video games, but I think they don’t have enough ability to distinguish reality and fantasy. Possibly playing video games could have a negative impact on children.”(ビデオゲームを楽しむ子供が増えているけれども、彼らは現実と空想の区別をする能力が十分ではないね。ひょっとしたらビデオゲームは子供に悪影響を及ぼすかもね)というように、ひょっとしたら~するかもね、ぐらいのニュアンスの時に使われるので、一緒にcertainlyやprobablyなどと一緒に使われることが覆いです。

次の例題を見てみましょう。

① Don’t go too far out from the shore in that small boat. (   ).

(1) It cannot be in danger.

(2) It could be dangerous.

(3) You wouldn’t be dangerous.

(4) You’d be out of danger.

「そんな小さな船であまり沖合に行ってはダメだよ」とあるので、「危険だよ」が正解に入ると分かると思います。なので、その危険だよ、を意味している(2)が正解となるわけですね。ちなみに、couldのこうした消極的な意味合いから、疑問文で使うと、丁寧な表現となります。たとえば、” Could you lend me a dollear?” (一ドル貸して頂けませんか)や” Could I use your dictionary?” (あなたの辞書を使わせて頂けませんか?)という丁寧なニュアンスになります。これはcouldと同じ感じです。「仮に」というようなニュアンスが入っているわけですね。このようにcouldは仮定形の意味で問題になりますので、助動詞としてはあまり意識しなくてもいいでしょう。

07 shallのイメージ

shallのイメージは、「天命」「神の意志で当然そうなっている」というような意味で、大分古風な言い回しになります。” I shall win.”というと「どうせ勝つことになっているのだ」という感じで、有名な台詞ではWorld War Ⅱにおけるダグラス・マッカーサーがフィリピンから撤退するときに”I shall be back.”といったのは「必ず俺は戻ってくることになる」といったのがありますね。ちなみに、日本国憲法を英訳する際にも、たとえば、憲法第13条は” All of the people shall be respected as individuals.”(全ての国民は個人として尊重される)という風に訳されます。強制するまでも無く当然だというニュアンスがあるわけですね。

08 助動詞と可能性の程度

それでは、これまで扱ってきた助動詞をその可能性の程度でまとめておきましょう。例文としては、”He is rich.” (彼は金持ちだ)を使っていきます。すると、

He must be rich. 95%
He should be rich. 85%
He can be rich. 60%
He may be rich. 50%
He might be rich. 40%
He could be rich. 30%
He cannot be rich. 5%(というか、まずない)

09 wouldとused toの違いについて

wouldとused toの共通点と違いについて、学んでおきましょう。まず、共通点としては、過去の習慣を表すという点なのですが、違いの方が重要で、。wouldは助動詞なので、主観的で、used to~は客観的な意味になります。なので、” When young, he would sit for hours without speaking a word.” (私は若い頃は一言も言わずに何時間も座っていたものだ)となり、” There used to be a house here. (昔ここに家があったものだ)となります。後者は、主観的な意見ではありませんよね。かつて家があったわけです。だから、” She used to live in Kyoto.”(彼女は昔京都に住んでいた)となり、かつての事実を意味しているわけです。

それでは、次の講義で助動詞の“助動詞 have p.p.”(「予想」と「イヤミ」のようなニュアンス)について学んでいきましょう。

英文法講義~大学受験・高校受験に使える(7)

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【監修者】 宮川涼
プロフィール 早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員。元MENSA会員。早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。一橋大学大学院にてイギリス史の研究も行っている。

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早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員 早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。
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