高校入試の勉強を始めるベストな時期

01 一般的な目安は中3の夏休みあたりだが、理想は中2の夏休み

高校入試の勉強を始めるベストな時期についてお伝えします。高校入試の勉強を始めるベストな時期は、個別にさまざまな条件、事情によって異なりますが、中学校2年生の夏休みくらいから準備しておくというのがベストです。とはいえ、一般的な目安は中学校3年生の夏休みあたりです。夏期講習を始めるのがきっかけで、受験に目覚めたというようなパターンですね。

しかし、充分な準備期間を確保することは、自信を持って臨むために欠かせません。早めに始めれば、時間に余裕を持って学習できます。充分な準備期間を確保することは、自信を持って臨むためには必要不可欠ですし、ギリギリで中3の秋くらいに慌てて過去問を解いても解き方や傾向を掴むのに3~4ヶ月ほどかかってしまうと、最悪受験がほぼほぼぶっつけ本番のようになってしまいます。なので、一般的な目安よりも、少し早めに始めれば、時間に余裕を持って学習でき、さらに傾向や対策もしっかりと立てて、余裕を持って試験に取り組めるので、中2の夏あたりから意識して対策を少しずつでも行っていくと、ライバルにも大きな差をつけることができるでしょう。

02 中2の夏休み時点で5~6割、中2の冬休み時点で7~8割は都立入試の問題は解ける

実際、武蔵野個別指導塾では、中2の夏から入試試験の過去問を解いたりして、これから向かい合うことになる受験ではどんな問題が待っており、どういう問題を解けばよいんか、頭の中でしっかりとイメージを持ってもらうようにしています。その際、過去問は、既に志望校が決まっており、私立高校を第一志望にしている場合には、私立高校の過去問を使うこともありますが、基本的には都立入試の過去問を利用します。

東京都教育委員会の報告にある通り、「東京都立高等学校入学者選抜学力検査問題は、中学校学習指導要領に示されている教科の目標及び内容に照らして、一部の領域に偏ることのない基本的な事項から出題されています。」。つまり、中2でももう履修済みの問題もかなり多く出題されており、もちろん、学校や本人の習熟度合いによりも異なりますが、一般的に中2の夏休みまでの履修範囲で5~6割程度は解けるものです。そして、中2の冬休みくらいになれば、7~8割は解けます。また、国語に関しては、現古融合問題が出るものの、古文の訳文はすべて載せられているので、とりわけ古文の対策は殆ど(たまに古文単語の意味や読みくらいは聞かれますが)現代文の問題と変わりは無いので、中2の夏休み時点で、きちんと時間配分や問題の傾向への慣れ、対策をしておけば、満点を目指せる科目です。

03 数学については、先取り学習した方が苦手な生徒ほど理解が深まる

ちなみに、中高一貫校などでは、中学生で習う数学の範囲などは、大体中学校二年生の内に終えてしまいます。公立中学校などでは、たとえば数学であれば、因数分解や平方根、二次方程式などを中三で行いますが、実際は、中二の段階で文字を用いた式(整式の加法と減法、単項式の乗法、除法)などを習う際に、学校では習わなくとも塾などで、その延長線上として、多項式や乗法公式、因数分解や平方根、二次方程式なども学んだほうが、学習の流れが途切れず理解が深まりやすいということもあります。

中2で、文字を用いた式(整式の加法と減法、単項式の乗法、除法)を習って、そこから、連立方程式や一次関数などに進むより、一気に、文字を用いた式をしっかり理解しているうちに、多項式や乗法公式、因数分解や平方根、二次方程式などを学んだ方が理解しやすいのが実際です。これが途中で1年くらい空いて、まら中3で同じようなことを繰り返すと、これらのことが断絶してしまい、また中2での学習が完全に終えていることを前提に進んでしまうので、忘れてしまっていたり、急に難しくなったと戸惑う生徒は少なくありません。なので、仮に未修範囲があったとしても、塾で、先取り学習をしておけば、英数国に関しては中2の冬休み頃には満点を目指すことができます。また、社会については都立入試の問題はある程度常識と読解力で解けてしまいますので、こちらについては履修・未履修にかかわらず、解き方次第で8~9割は解けてしまいます。

04 志望校を定めることの重要性

そもそも、志望校については早めに決めておくことは大きなメリットになります。もちろん、最初はあくまでも仮想目標で良いので、実際にそこを受験するということにならなくてもよいです。大事な事は、「目標」を持つことと、その「目標」に至るまでの「ギャップ」(隔たり)を意識し、理解した上で、一体何をどうすればその「ギャップ」を埋めることができるのかということを、早めに頭の中でしっかりと具体的にイメージをできるよういなることが大切なのです。

また、都立入試の傾向や対策を把握することはもちろん、私立高校などの場合も含め、高校によって入試の形式や出題傾向は異なります。早めに志望校を決めておけば、その学校の入試対策に専念し、無駄なく集中的に学習することが可能となり、効率的な学習プランを策定し、そこに沿った上で先手先手の学習計画が立てられます。また時間管理という意味でも、志望校が決まれば、自分の時間をどのように使うべきかを計画することが容易になります。それが学習時間の割り振りであったり、余暇の時間の確保であったりと、時間管理における効率化が図れるわけです。

もちろん、これは得意科目不得意科目による学習プランの使い分けなども可能になります。英語に関しては、たとえば英検3級や英検準2級などの資格を中2で取得する生徒が増えているのが昨今の潮流ですが、これぐらいの英語力があれば、英語に関しては都立入試や市立高校の英語の入試問題に中2からしっかりと取り組んでいけますし、逆に数学が苦手であれば、上述した先取り学習の他、中1の履修範囲や場合によっては分数の計算など算数に戻って歩み戻りの学習をしていくなど習熟度に応じてプランを立てることができるのが大きなメリットです。

05 モチベーションの維持と大学進学へ向けた高校の選択の重要性

また、志望校あるいは行きたい高校が決まっているとモチベーションを維持しやすいという点もあります。目指すべき明確な目標があると、それに向かって学習を進める意欲や動機がはっきりします。逆に、目標がぼんやりとしていると、モチベーションの維持が難しいのは言うまでもありません。また、志望校のレベルによって、自分がどの程度まで成績を上げるべきか、とりわけ、現在の受験制度で重要な内申点についてはどれくらい取っておく必要があるのか(→意外と知らない内申点の重要さや上げ方の秘訣についてはこちらの記事をご覧ください▶ここをクリック)、内申点加点に英検や漢検などは使えるのか、単願や併願の条件はどうなっているのかなどが明確になります。これにより、自分自身の学習目標がはっきりし、自己評価も容易になります。とりわけ、コーチング理論から目標管理において必要な目安として、有名なフレームワークにSMARTという目安があります。SMARTとは、下記の図のように整理できます。

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例えば、Specific(具体的)については、都立日比谷高校だとか都立国分寺高校、都立小平高校、都立田無高校であるとか、あるいは私立武蔵野大学付属高校だとか私立明治大学付属中野高校、大成高校などと具体的な志望校を思い描く必要があります。そして、Measurable(測定可能)については、模試の成績の結果や過去問に取り組んで合格点に達しているかどうか、あるいは合格点まで後何点必要かどうか、あるいは内申点でどれくらい必要なのか。

次に、Achievable(達成可能)については、目標に掲げているものは、現在とのギャップ(距離)がどれくらい離れていて、それはたとえばどれくらいの期間ならギャップを埋めるのに実現可能な程度なのか。またこのときのポイントとしては、達成が容易である、あるいは既に達成できるものを置いてもあまり意味が無いのに、さらなる努力が必要であるかどうかを軸に、どれくらいの努力が必要で、それは現実的に実現可能かどうかを考える必要があります。

そして、Relevant(関連がある)については、志望校合格という目標からブレイクダウンして、数学では○点以上得点できるように、弱点である一次関数や因数分解、平方根をしっかりと習得できるようになるまで○○時間以上は学習していくであるとか、英語であるならば、苦手な文法を中学文法についてはしっかり基本を抑えるだとか、長文読解が苦手なら多くの長文問題に取り組んでみて得点を挙げるといった対策を考えていけます。

最後に、Time-bound(期間がある)については、中2であれば、余裕を持って1年半(18ヶ月)で目標達成までのマイルストーンに沿って学習していくだとか、今中3の一学期ならば、夏休みまでに、○○を覚えておくといった期限を定めて勉強することが望ましいわけです。

このようにSMARTな目標設定をし、志望校を早めに決めておくと、その目標を達成しやすくなるだけではなく、達成後の高校生活を有意義にするためのことについても考える余裕が生まれてきます。具体的には、志望校や興味のある学校についての情報を集める時間が増えます。入試情報だけでなく、オープンキャンパスや学校説明会などに参加し、学校生活や校風など、入学後を想定した情報収集も可能になります。とりわけ、大学進学率は6割近い現代において、高校は大学への架け橋としてに役割も非常に重要になってきます。いくら良い高校に入っても、自分が思っていた学習環境と違うとか、校風が好きではないということなどになってしまうと、大学受験の際にかなり不利な影響を受けてしまいかねません。

一方、大学への架け橋としての役割が重要であるといっても、現実問題として大学受験対策に、とりわけ公立高校は手が回っていないのは、昨今マスメディアなどでも度々報道されているとおりです。また、学習環境がかなり充実している高校だとしても、校風や同級生の大学受験への意識の高低なども生徒さんには大きな影響を与えます。どれだけ素晴らしい学習環境をそろえても、高校生の生徒が一番影響を受けるのはピア・エフェクト、つまり「クラスメートからの影響」です。

高校に立派な自習室がある、チューターが常備している、志望大学別の補習があるといっても、「そういうのを受けるのは格好悪い」とか、そもそも「勉強するのは格好悪い」というような生徒が多い高校ですと、どうしても負の影響を受けてしまいかねません。その意味でも、オープンキャンパスなどで学校の学習環境を実際にみておくだけではなく、ネットの学校情報サイトなど、今の時代はネットでかなり実際の校風や、生徒の雰囲気なども知ることができるので、事前によく調べておくのが大切です。

06 部活動との両立も可能

早めに志望校を決め、早めに受験対策をするということは、逆に言えば、学校のカリキュラムやクラブ活動などにも計画的に時間を配分することができることになります。どうしても、一般的な中3の夏からという受験開始の目安に従ってしまうと、部活動が終わってから受験対策を慌ててするということになり、時間不足が生じてしまったり、夏以降は部活動を卒業あるいは参加できないというようなことにもなります。ちょうど夏などで大きな試合が終わるとか、あるいはそうした大きな試合などがない部活なら良いということもなく、秋以降もスポーツや文化的な活動を続けていくことは、中3の生徒の人間的な成長に実は大きな良い影響を与えてくれているということを無視してしまいかねません。

とりわけ、スポーツなどの活動は、勉強・学習にとってはプラスの影響を大きく与えます。スポーツを通じて定期的な運動を行うことで、心肺機能の強化、筋肉の発達、免疫力の向上など身体的な健康を維持・向上することは周知のことですが、これは健康経済学でも認識されており、良好な身体的健康状態は長期的な学習能力や生活の質の向上に寄与します。また、スポーツはストレスの解消や心の安定に役立ちます。運動は自然な抗ストレス機構であり、エンドルフィンという「幸福ホルモン」を放出します。

これにより、学習によるストレスを軽減し、精神的に安定した状態を保つことができます。また、スポーツと勉強を両立させるためには、自己管理と時間管理能力が不可欠です。さらに、そのスポーツがチームスポーツである場合、協調性、リーダーシップ、コミュニケーションスキルなどを磨くことができます。これらの「ソフトスキル」は、学業成功だけでなく、将来的な職業成功にも重要です。は生涯にわたって役立つスキルであり、教育経済学でもその価値が認識されています。そして、スポーツを行うことは、記憶力、集中力、認知機能を高める効果があると医学的に示されています。定期的な運動は脳の神経細胞の生成(神経新生)を促進し、思考力や学習能力を向上させることができます。

もちろん、スポーツなど運動部に限らず、文科系の部活動でも、音楽、美術、演劇などは、脳の異なる部分を活性化し、思考や学習の能力を向上させることが研究で示されています。例えば、音楽を演奏することは、脳の言語処理能力や数学的な思考を改善する可能性があります。文化系の部活動は、参加者が創造的な思考や新たな視点を持つことを促します。これは問題解決や批判的思考に役立ち、新たな知識を理解し応用する力を高めます。また、チームスポーツと同様に、部活動の仲間と共に活動することで、コミュニケーションスキルやチームワークを強化します。また、文化系の部活動はしばしば、自己主導的な学習(主体的な学習)を促すことがあります。これは、自分自身で学習の目標を設定し、その目標に向かって努力することを意味します。この能力は、教室での学習だけでなく、一生涯にわたる学習にも役立ちます。

このように考えてみれば、部活が終わってからという志望校を選び、受験に専念するという戦略よりも、早めに受験戦略を立て、早めに受験対策を行い、部活と両立しながら受験勉強をしていくのが心身共に良い影響を与えることはよくご理解頂けるのではないでしょう。そして、分かりやすい例でいえば、一般的な目安と違い、中3の夏からではなく、中2の夏、あるいは中2の冬休みくらいから同級生たちより、1年あるいは半年以上早く入試問題や傾向と対策などについて取り組んで行くということは、そうした余裕を作ることができることになります。

07 学力に頭の良さやIQ、記憶力は関係ない

そもそも、学力や成績の向上というのは、一言で言えば、「学習を継続すること」によって形成されます。必死に受験前に勉強するよりも、みなが受験勉強を意識しし出すより遙か前に少しずつでも学習を始めている生徒の方が圧倒的に優位になります。そして、学力というのは抽象的で中身のない言葉である「頭の良さ」だとか「記憶力の良さ」、あるいは知能テストなどで測定できるIQとは全く関係ないと断言しても間違え在りません。

米国の著名な心理学者アンジェラ・ダックワース(ハーバード大学卒オックスフォード大学修士課程修了ペンシルバニア大学で博士号習得)がその主著”『Grit:The Power of Passion and Perseverance』で「Grit」という力に注目しています。グリット(grit)とは、「やり抜く力」または「粘る力」を意味し、「才能やIQ(知能指数)や学歴ではなく、個人のやり抜く力こそが、社会的に成功を収める最も重要な要素である」として、彼女は「グリット」理論を提唱しています。TEDトークなどで彼女の講演をご覧になった方も多いかもしれません。グリット理論では、生まれ持った才能・知能は関係がなく、失敗を恐れず挑戦することが重要で、長期間、継続的に粘り強い努力を行うことができるのが一番大切であると考えます。

もちろん、多少物覚えが早い生徒と遅い生徒という違いはあるでしょうし、読書習慣などの違いで、文章を読むスピードの速さに違いがあることもあるでしょう。しかし、その差というのは正直たいした差がない場合が殆どでしょう。もちろん、サヴァン症候群のような、一秒で1ページに書いてある文字を全てコピーするかのように記憶される方もいらっしゃるでしょうが、それは本当に極レアなケースでしょう。記憶力に下がるとはいえ、たとえば英単語一個覚えるのに、10回音読するなりシャドーイングするなり、ディクテーションすることで覚えられる人がいる一方、苦手な方でも100回あるいは300回として覚えられないという人はこれもまたかなり少ないレアケースだと思います。

そして、多くの生徒が、「記憶力が悪い」とか「頭が悪いから」ということの裏には単に記憶するための努力をしていなかったり、問題を解くための練習をしていないだけということが隠れています。そして、仮に10回音読して覚えられる人でも中3の10月くらいから3ヶ月くらいしか勉強しないのであれば、英単語でいえば、一日に仮に10個覚えられたとしても、10×100=1000語覚えられるだけですし、仮に「自分は記憶力が良いからと慢心」してしまって、勉強を怠ってしまえば、いくら記憶力が良かろうが、10×50=500かもしれません。しかし、記憶力に自信が無いという生徒が一日3個ずつ単語を覚えたとして、それが中2の夏からであれば。受験までに18×30×3=1620個と自分の三倍記憶力の良い人(実際に三倍も記憶力に差がつくことは考えにくいですが)よりも1.5倍あるいはそれこそ逆に3倍以上もの成果を出すことができます。つまり、継続こそ力なりということなのです。

以上、高校受験を始めるのに最適なタイミングについてのお話しと、高校受験をする際に考えるべきこと、目標、志望校の選び方、また学習への取り組む基本的な姿勢についてご説明させて頂きました。

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【監修者】 宮川涼
プロフィール 早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員 早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。

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早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員 早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。
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