中学受験、高校受験、大学受験で逆転合格する勉強法5選(2)

01 逆転合格する勉強法5選その4は「雑でも良いので間を置いて繰り返すこと」

逆転合格する勉強法5選。四つ目は、「「雑でも良いので間を置いて繰り返すこと」です。  この場合の繰り返すことというのは、量を増やすということではないことに注意してください。確かに、勉強量、問題量、計算量といい、量をこなすことは大切です。「量質転化の法則」という言葉が昔はやったことがあります。

これはもともと、ドイツの哲学者ヘーゲルが、その主著の一つ『エンチクロペディー』の第一部「論理学」の個所で述べたことに由来します。同著では「量の変化はある種の質の変化である。」と書かれてあります。本格的にこの個所を説明するのは紙幅上困難であるので、単純に世間一般で受け止められているように、ある一定の量をこなせば、質が上がるくらいに受け止めてください。わかりやすい例を考えると、野球の練習をする際に打者はスウィング練習をしますよね。昔は、世界の王さんこと王貞治は「毎日500回はスウィングしていた」などといわれ、多くの野球少年たちはまねをしたと思います。この言葉は、毎日500回という膨大な量の練習をこなしていけば、いつか質的に変化し、試合でガツンとホームランを打てるような、イケてる四番打者に質的に変化するということです。

しかし、最近の例でいえば、イチロー選手もスウィング練習を重視してはいたそうですが、それは量ではなく、継続で「毎日必ず10分は行っていた」そうですし、今の大スターメジャーリーガーの大谷翔平は、はっきりと「何も考えずに500本振ることくらい無駄なことはないと思います。」と断言しています。確かに、練習量、勉強量は大切ですが、量が目的になってしまうのは本末転倒だと言わざるを得ません。

むしろ、ここで重要なのは、「頻度」です。「今日は7時間勉強したぞ!」といって、週に一回はやる気になって勉強をするものの、その後6日間勉強しない人と、「毎日1時間は欠かさず勉強しています」という人で、どちらが学力が上がり成績が向上するのか、これは難しい話をするまでもなく、答えは明らかだと思います。当然、毎日一時間コツコツ勉強していた生徒さんのほうが成績は伸びます(ただコツコツにも2種類あることは後述します)。それに対して、頑張ったり、頑張らなかったりとむらのある生徒さんはたいてい成績が伸び悩みます。

私が、毎回ペンシルバニア大学教授のアンジェラ・ダックワースの説く「Grit」を紹介しますが、これが単に心理学上の研究成果として素晴らしいと思うから紹介しているわけではありません。実際、2017年のメタアナリシスでは、「グリットはパフォーマンスや定着率と中程度の相関しかない」と指摘されています。ちなみに、メタアナリシスとは、「ある程度似ている研究の複数の結果を統合し、ある要因が特定の疾患と関係するかを解析する統計手法」のことです。

つまり、Gritは、彼女がいうほど、教育政策として国策で取り組むにはまだ実証性が乏しいこともわかっています。たとえば、彼女に対する懐疑的なメタ分析では、Credeなどの研究成果が上げられます。グリットを高めるようにデザインされた介入は、成績や成功に対して弱い効果しか示さない可能性があること、グリットの構成概念妥当性には疑問があること、グリット構成概念の主要な有用性は忍耐力の側面にある可能性があることが示唆されています。

しかし、どうしても世の中一般では、認知的なスキルばかりが注目され、こちらを重視する教育方法ばかりが取り上げられる中、そこへ一石を投じた彼女の功績(TEDでこうした考え方を流布たことも含めて)は大きいと思っています。

そもそも、非認知的能力は、ノーベル経済学賞を受賞したヘックマン(2015/2013)がアメリカの社会格差を解決するための有望なカギとして幼児教育における非認知能力に言及して以来、日本でも非認知能力が、教育や社会の課題を解決する糸口の一つとして、また、子どもの将来の成功を予測しうるものとして注目されるようになったものです。

そして、上述のような批判から、Gutman & Schoon(2013)9)は,非認知能力に含まれうる心理学的諸概念の先行研究をメタ分析によって,上記の①測定法の質,②可変性(成長可能性)、③ポジティブなアウトカムへの効果や波及性10)、④エビデンスの強さという側面から検討しています。その結果が、下記のとおりです。

メタアナリシス 《武蔵境駅徒歩30秒》武蔵野個別指導塾

確かに、エビデンスの強さや影響(効果)という意味では、自己効力感や内発的動機付けやメタ認知といった学習において重要なアウトカムをもたらし、勉強をするという内的な動機付けを促すという意味では、単純にGrit力が高ければ学力があがるとはいえないにしても、それがもとになり、学習結果を向上させる大きな要因の一つとなったり、そもそも勉強へ取り組み意欲を形作る重要な要素となることは間違いありません。この「逆転合格する勉強法」の記事の冒頭に、勉強法は無限にあり、唯一の正解はないといいましたように、無数にある勉強法の中から正解を探すより、生徒ひとりひとりにあった最適な勉強法を探すことが大事ですし、そのために上記のような非認知的能力を形成することは非常に重要だと思われるからです。

少し文面が堅くなってしまい申し訳ありません。いつも通り、ゆるくいきましょう(苦笑)。

「繰り返し取り組むことで頭に入る」というのは皆さんもお感じになっていることだと思います。確かに、世の中にはサヴァン症候群のような一見しただけで辞書全部を暗記してしまう方もいるでしょう。しかし、そういうのはごく稀な例であり、みな何度も何度も繰り返し反復して取り組むことで知識を吸収し、覚えていくわけです。

ただここで重要なのは、前述したように、量ではなく、むしろ、脳は思い出す頻度が高いことほど、これは重要な情報だと判断して忘れにくくなるということです。それはそうですよね。1回しか会ったことのない人の名前は忘れるものですけど、家族の名前は忘れようがないです。忘れたら認知症を疑ってしまいますよね。

実際、東京大学薬学部教授の池谷裕二氏によると、外から入ってきた情報は、まず耳の奥にある脳の海馬が、生存に不可欠な情報かどうかを基準に仕分けるそうです。それで重要(生存に不可欠)だと判断された場合は、脳の大脳皮質に送られ、長期間保存されるのだとか。ところが、たとえ生死に関わらない情報でも、何度も繰り返し脳に送り続けると、海馬は「これは生きるのに必要な情報に違いない」と勘違いするそうです。それを池谷氏は「海馬をダマす」と表現し、「勉強は反復」―反復すれば、情報は記憶として定着するということを覚えておきましょう。

また、セントルイス・ワシントン大学が、2006年に学術雑誌「Psychological Science」で発表した研究は、テストが学習の評価だけでなく、学習の向上に役立つ強力な手段であることを明らかにしました。この研究で行なわれた実験とは――研究に参加した学生らに資料(約270語のテキスト)を与え、

  1. 4回の熟読
  2. 3回の熟読と1回の想起テストの組み合わせ
  3. 1回の熟読と3回の想起テストの組み合わせ

といった条件を設け、その5分後・2日後・1週間後に最終テストを行なうというものでした。 すると5分後の最終テストでは、【A】の繰り返し熟読を行なった条件が、記憶の改善に役立つと示された(テストの成績がよかった)そうです。しかし1週間経つと、【C】の繰り返しテストを行なった条件のほうが、大幅に記憶の保持力が高いとわかったのだとか。これは、いったいどうしてでしょうか?

それは、脳の神経細胞どうしのシナプス(接合部)伝達が強まり、それが長く継続することを長期増強現象(LTP)と呼ぶそうです。京都大学が2022年に発表した内容によれば、LTPは学習直後と、同日の睡眠中、学習した翌日の睡眠中に起こる現象で、記憶の固定化や、長期記憶の形成に必要だそうです。近年、学習後の睡眠が記憶の固定化に重要な役割を担っていることが明らかになってきている。覚醒時に経験した情報が睡眠中に再生されている」という休息時リプレイという概念が提唱されている。学習後の安定的な睡眠は、記憶の固定化に重要な過程であることから徹夜することはテスト勉強として効率が悪い可能性があるわけですね。

また、富山大学大学院医学薬学研究部によって執筆(2014年4月10日原稿完成)された脳科学辞典には、「学習時に活動したニューロン(オレンジ)の間のシナプスではLTPが起こり、ニューロン活動が収まった通常時でも伝達効率が増強されている。学習時に同期活動をしたニューロン同士は強いシナプス結合で結ばれる」とあり、そのため、何らかのきっかけで一部のニューロンが活動すると、このニューロン集団全体が活動し、その結果として記憶が想起されると説明しています。

記憶の力は、適切な記憶方法によって大きく左右されます。情報をただ暗記するだけでは、効果的な記憶ができないことがあります。効果的な記憶方法としては、アクティブリコール(情報を繰り返し復習する)、ストーリーテリング(情報をストーリーにまとめて覚える)、連想法(情報と関連づける)、そして空間記憶(特定の場所に情報を紐付ける)などが挙げられます。

覚えようとする情報が個別の事実やデータだけであり、それに対して意味や関連性が欠如している場合、記憶が定着しないことがあります。情報に意味を持たせたり、既存の知識と結び付けることで、記憶がより効果的に行われます。脳には短期記憶と長期記憶があります。情報が短期記憶に留まってしまうと、長期記憶に移行せず、覚えようとしても定着しないことがあります。短期記憶を長期記憶に定着させるためには、情報を反復学習したり、アクティブに活用したりすることが重要です。

つまり、たとえば英単語や社会の用語、数学の解き方(解法)を思い出すときは、英単語や社会の用語、数学の解き方を覚える際に強いつながりで結ばれた神経細胞のグループが、再び一緒になって活動する可能性があるわけです。想起を繰り返すことで記憶が強化されるのは、当然とも言えるかもしれません。要するに、反復学習とそれに伴って関連付けて覚えるような工夫をすると記憶が長期に定着するわけです。

このように、知識を血肉化し、自分のものにするためには繰り返し取り組む必要があるわけですね。「いや、そんなことは、小難しい理屈を言われなくても分かってる。そりゃあ、繰り返し取り組めばそれ頭に入るでしょう。でも、肝心のその時間がないんだよ」って言いたい人いると思います。そうですよね。その通りだと思います。ただでさえ、学校、部活、塾、習い事、交友関係の維持、趣味など、たくさんやるべきことややりたいことはあるわけです。

じゃあ、どうやって繰り返し取り組むための時間を作ればいいのかというと、1回に取り組む時間を減らすんです。雑に取り組むのです。先ほどのセントルイス・ワシントン大学の研究報告にあったように、4回も熟読しなくても、一回の熟読と、3回の想起テストがあればいいわけです。簡単な言葉で言い換えれば、一回、ざっと目を通す。そして、隙間時間で本当に覚えているか小テストというか、自分でチェックする。それでいいわけです。

確かに、これまでの人生で、生徒さんはもちろん、保護者の方も、学校の先生やら上司やらに「もっと丁寧に取り組みなさい」「もっとちゃんとやって」「もっと確認して」「もっと集中して」と言われ続けてきたと思います。「丁寧に、ちゃんと、確認、集中」。これはどこでもいわれることです。確かに、慎重さを求められる仕事ほどそういうことは大切でしょう。しかし、私の友人で京都大学医学部付属病院で勤務している教授がいますが、彼は手術の前に看護師さんには上記のような指示を何度もいうものの、ご本人は、結構いい加減に執刀していると語っていました。さすがに集中はしているのでしょうが、あまり細かく気にしすぎると逆にミスを犯してしまうとも言っていました。

他人の例ではあまりよくないので、私の仕事の例を話すと、ご存じの通り、私は大体年商100~500億ぐらいの企業でCFOであるとかCOO(最高執行責任者)などを10数社してきました。そして、その中には上場企業もありましたが、多くは非公開企業で、まさにこれから上場したいという、いわゆる上場準備中の企業でした。まあ、いわゆるベンチャー企業で、急に業績が上がって、創業社長が「それならいっそ上場しちゃおうか」みたいな、なんでしょうロマンを感じるんでしょうかね、そういうケースでそのお手伝いをすることが多かったです。その際、上場したい年度の3期以上前に監査法人にショートレビューに入ってもらいます。

そこで、監査法人から、上場企業としてふさわしい企業になるためには何が欠けているのか、現状の問題点を抽出され、指摘されます。多いと、50か所ぐらいの事項にわたって指摘事項を書きつられます。まあ、監査法人さんもよって表紙はいろいろありますが、こういうイメージです。

ショートレビュー 《武蔵境駅徒歩30秒》武蔵野個別指導塾

もちろん、イケイケで伸びてきたベンチャー企業など、たいてい社内規定もろくになければ、かなり法に触れちゃうようなものもありますし、業務フローやマニュアルなんて整備されていません。予算だって、大抵、創業社長の一言で決まっちゃうものです。月次決算もだいぶ怪しく、まあ、月遅れ決算なんて当たり前です。それを大体2~3年かけて修正していくことになるわけですが。そのとき、社内規定はもちろん、内部統制の3点セットともいわれる仕事(業務)の内容を書面化した業務記述書やどのように業務を進めているのかという業務プロセスを見る化したフローチャート、業務において生じてしまうようなリスクとそれに対する統制法などを書いたRCMなど、主幹事証券から渡されたひな形なんかを、多少その会社向けにカスタマイズしたくらいで、いきなりその企業に導入しようとすると、社内は大混乱になります。

ただでさえイケイケで伸びてきたベンチャー企業なので、杓子定規なルールなど守っていられませんし、そもそも作っていません。それにベンチャーは社長の気分で会社の方向性や戦略がころっと変わるので、いちいちそれを制度化しても意味がありませんので、そういう規定的なものや制度的なものはほぼないといっても過言ではありません。まあ、ショートレビューを見て、監査法人のパートナーあたりからお話を聞いて、主幹事証券の担当者から「上場するためには○○が必要なんですよ」といわれ、上場というロマンに急に目を輝かせている社長は大体「わかった。じゃあ、すぐにそうやるわ」くらいに簡単に受け答えします。

しかし、それを現場にいきなり持ってくると、先ほど話しましたように大混乱ですし、肝心の仕事が進まなくなって、売上だって下がりかねません。まあ、CFO的にはダブルバインドに立たされるわけですね。そこで、大事なのは、「もっと丁寧に取り組みなさい」「もっとちゃんとやって」「もっと確認して」「もっと集中して」の真逆の力です(苦笑。

「もっと雑にして、とりあえず大まかな方向性としては、監査法人や主幹事の求める方向へもっていくが、まずは社内に受け入れられるようなレベルの雑なものにする」そして、「もっとちゃんとして」なんて営業に言おうものなら、「ふざけるな。誰が売り上げとってきているんだ」と怒られるので、「ちょっとだけこういうことも意識してください」と低姿勢にお願いする。そして、「もっと確認して」と経理部などの管理部門だけではなく、営業部門の事務方の業務部門などに言おうものなら「オーバーワークです!」とブチ切れられるので、「大体、その方向性で進めてくれていればいいので、もうちょっと気楽にやって」となだめる。そして、「もっと上場準備に集中して」なんて創業社長にいおうものなら、「それはお前に全部任せただろうが!」とブチ切れれれますので、社長が「おいおい、本気で上場する気あるんかい」と思えても、そこは黙って気楽にニコニコしておきます。

まあ、わざとコミカルにしていますが、仕事でも、こんな感じです。なので、「もっと丁寧に取り組みなさい」「もっとちゃんとやって」「もっと確認して」「もっと集中して」といっても、仕事でも勉強でも現実的には効果はかなり怪しいところです。

ここで一つ例をあげてみましょう。たとえば、英検を受けるに当たって英単語を覚える必要が出てきたとします。大体、英単語帳を開くと、度の級も級毎に800~1000個くらい載っているものです。この英単語帳を使って英単語をお慕容とするとき、毎日10個ずつ、丁寧に区切って、丁寧にディクテーションし、ちゃんと毎日10個ずつ覚えるように努力して、日々覚えるべき英単語10個に集中して、取り組むという勉強法は果たして良い勉強法かと思いますでしょうか。

意外と多くの人が、「俺(私)はそうしたおぼえた」なんて経験あるかもしれませんが、それを覚えるのに単純計算で100日間ぐらいで覚えられたでしょうか。いや、大抵はもう少し時間がかかって、なんだかんだと半年くらいかかっていませんでしょうか。そして、その正答率も決して100%ではなく、覚え残したものがポロリポロリとあるのではないでしょうか。

そうなんです。英単語を覚えるのに、一日10個ずつと丁寧に区切って、丁寧に書き写して、ちゃんとやって、きちんと覚えているかどうかチェックして、集中して日々10個に取り組んでいっても、実は意外と効率が悪いというか、なかなか覚えられないものです。

「頭が悪いから覚えられないのかも」と不安になる方は多いと思います。「覚えようとしているのに覚えられない」というのは、勉強をしている人からよく聞く悩みです。不安になるのはわかりますが、悩む必要はありません。

なぜなら、そもそも「脳は物事を覚えないようにできている」からです。

脳は覚えるスペースがとても少ないのです。脳の質量も、体全体の2%しかないと言われています。それなのに、消費するエネルギーは20~25%もあるそうです。スペースも質量も少ないにもかかわらず大量のエネルギーを使うため、必要ないと判断した情報はどんどん忘れていくシステムが働いています。つまり、忘れるのが当たり前ということです。ならば、忘れることを利用した覚え方をすればいいだけです。

たとえば、4時間かけて100個の単語を覚えたとしましょう。どんなに必死に覚えても、覚えないようにできている脳のシステムにより、翌日にはおそらく半分は忘れてしまっています。この方法を続けていたら、時間がかかるばかりで、一向に覚えられません。ここで、忘れることを利用した覚え方の出番です。

脳に必要な情報と認識させるためには、短いスパンで繰り返すことが重要です。たとえば、「4時間で100個」を「1時間100個を4日間繰り返す」に変えてほしいのです。同じ4時間でも、記憶に定着する量は断然多くなります。回数に加え、イメージも利用するのも重要です。

たとえば、自分の家まで帰る道順は、子どもでも覚えていますよね。毎日通って回数を重ねていることに加え、「曲がり角に公園がある」など、映像でも記憶しているからです。短時間で接着回数を増やしながら、できるだけ頭の中で映像をイメージすることで、より忘れない記憶として定着します。

勉強はインプットのほうが大切だと思っている人が多いのですが、本当に効率のいい勉強は「インプット3、アウトプット7」と言われています。勉強のできる人ほど、少しのインプットでさまざまなパターンの問題を解けます。短い時間での繰り返しは、復習=アウトプットです。頭の中でイメージするのも、アウトプットの一環です。アウトプットに比重をかけた覚え方なら、確実に成果を出すことができるのです。

もう少し記憶について考えてみましょう。そもそも、記憶は、その保持される時間によって2つの形態に分けることができます。それは、学習成立後から数時間ほど続く「短期記憶」と、1日から場合によっては生涯保持される「長期記憶」です。1900年、MüllerとPilzeckerは、安定した記憶の形成が最初の学習直後の新しい経験によって阻害されると報告しました。これは、短期記憶は、他の情報入力によって維持が妨害されてしまう不安定な状態にあることを意味しています。長期記憶は、こうした不安定な状態から移相した安定化したものであると考えられることから、短期記憶から長期記憶への位相過程を、「記憶の固定化」と呼びます。

ところで、皆さんは「ヘップの法則」って聞いたことがありますか?反復に関して研究したドナルド・ペッブが提唱しました。脳神経細胞のシナプスの可塑性についての研究で、繰り返し使うとその神経伝達経路の効率はよくなるが、使わないと衰えるようです。例えると、車が何回も走ると道路に轍(わだち)ができますよね。何回も繰り返すと、脳の中にもこの轍ができて情報が轍に沿って伝わり安くなります。繰り返せば、繰り返すほど、情報を取り出す速度も速くなるし、ミスもなくなるということです。

そこで、「反復しても覚えられない!」という人には3つの要因が考えられます。

覚えられない理由その1は「反復の回数が圧倒的に少ない」ということです。一日10個ずつ覚えようと努力しても、7日目に70個覚えているはずですが、一日目の10個は一回も反復されていないので、記憶に残らず忘れられてしまう。こういう経験は皆さんもよくしたことがあると思います。

かといって、1回反復した、2回反復したという程度では記憶に定着せず、正しい反復とは言えません。反復という作業は記憶のみならず、スポーツの技術上達に有効な方法です。1回や2回で、記憶が定着したり、スポーツなどが、できるようになることはありません。人間の成長はレミニセンス効果というものがつきまといます。成長と成長の間には、インターバルが必要なのです。つまり、練習しても練習しても成長しない時間が必要なのです。そして、ふとした拍子にできるようになる!それがレミニセンス効果です。

1回で覚えられたり、1回で出来るようになったりすることはありません。それこそ、イチローだって、一生涯のうちに何回バットの素振りを練習したことでしょう。「イチローには野球の才能があったから?」と思われるでしょうが、確かに間違いなくその通りで、イチローには才能があったと思います。しかし、アインシュタインの名言ではないですが、「才能とは繰り返し、繰り返し努力できる能力」のことで、イチローには繰り返し努力できる能力があったということもできます。これが反復する回数を増やす重要性なのです。ただし、インターバルの間は、何度やっても成長を感じられない。そのため途中で諦めてしまう人も多くいます。しかし「正しい反復」を繰返すことで成長を遂げ、記憶は確実に定着していきますので安心してください。

次に、覚えられない理由その2としては、視覚的に細部までイメージできていない場合が多いです。人は実体のないものは覚えにくいという性質があります。普段の勉強では、言葉だけで覚えようとしていませんか。言語を見ると、脳は覚えたふりをします。多くの人の前でプレゼンする、式辞を述べる・・・例えば、こんな時「覚えたはずの原稿の内容が真っ白になって消えた!」という経験はありませんか?

脳は言語をホールドするのが得意ではありません。脳は右脳と左脳に分かれていて、右脳は「イメージ・感情」を左脳は「言語・論理」を司っています。左脳は低速少量記憶で、右脳は高速大量記憶ができます。脳は一瞬でイメージを記憶できます。

ポイントは、しっかり、はっきり、イメージ化・映像化をして、脳で思い描くことです。イメージが鮮明であればあるほど、長期間、記憶を保持できます。これは、個人の能力ではなく、脳の仕組みです。なので、覚えたいものは、無味乾燥な文字データではなく、具体的にイメージの湧くものに変えていかなければなりません。

最後に、覚えられない理由その3は、「無意味な繰り返しをしている」です。例えば、学校の国語の先生が漢字を生徒に教えます。ノートに50回。一つの漢字を書くように言います。子供たちは家に帰って、ノートを開き漢字を書き始めます。一つの漢字を何回も繰り返し書く。例えば、「薔薇」をノートに50回書く場合。ある子どもは、最初は綺麗に丁寧に書いているけれど、最後のほうは漢字がぐちゃぐちゃ・・・急いで終わらすことに力を入れています。それでは「薔薇」は覚えられません。

これは確かに反復ですが、無意味な反復です。これでは覚えることはできません。記憶や暗記の方法として、教科書に書いてあるキーワードをノートに書き写すということがあります。これは、多くの方がやっています。効果が無いわけではないでしょう。しかし、非効率であり、その作業をすることによって、脳は勉強して覚えたつもりになります。いわゆる勉強した気分になっているだけということですね。

教科書のキーワードをノートに書くという作業は、右にある物を、左に移すだけて、脳には入っていません。ノートに記録されても、脳には記録されないということが起こります。ノートは、脳にあるデータをアウトプットするために使うものです。人間は、アウトプットすることによってインプットされます。

勉強しながら、合間、合間に「本当に脳に入っているのか?」と軽く思い返してみる。それぐらいの軽い気持ちでいいので、少しだけ想起しながら、進めていくことが時間の効率化にもつながります。この作業をいれないと、脳は勉強したつもりになります。覚えたつもりになります。ただひたすらインプットしようと勉強していても、本当にインプットされたかどうか?それを確認するために、アウトプットする時間を入れながら勉強してみてください。

これらのことを理解した上で、たとえば英単語を覚えようとするならば、まずは無理に覚えようとしたりする必要はありません。もちろん、一日10個というようにノルマを作る必要もないどころか、それは効果が薄いです。そうではなく、英単語帳1冊を最初から最後まで一気に読み通してみましょう。今は、単語帳に音声アプリのQRコードが載っているものが多いですが、音声アプリを利用して、後は、ただひたすら単語帳を眺めながら、ネイティブの発音を聴くのです。そのとき、できればシャドーイングして、自分も口に出して発音してみるとより効果が高いです。さらに、スペルが難しいものなどは、気楽な気持ちでディクテーションしてみましょう。間違った綴りでも大丈夫です。

この勉強法、意外と短時間で終わります。英単語帳一冊をアプリを聴きながら読むのにかかる時間は大体どの本でも45分くらいで、長いものでも1時間くらいです。つまり、1時間あれば、英単語帳の最初から最後までを一日で読み通すことができるわけです。その際に「英単語を覚えなくちゃ」と焦ったり、プレッシャーを感じる必要はありません。気楽にやりましょう。そうして、二日目。また初めから最後まで読み通します。

もちろん、そのときにどれだけ覚えているか気にする必要はありません。10%いや、1%も覚えていないと思います。なので、覚えられたかどうか気にせず、三日目に行きましょう。そして、そういうのを、三日、四日、五日と続けていくと、六日目ぐらいで、「あれ、この単語どこかで聴いたことあるな」とかアプリで音声を言われると単語の意味のイメージがわいたり、単語帳の単語を眺めると日本語訳を見る前に意味が思い浮かぶようになります。それを大体7~8回くらい(つまり約1週間)繰り返すと、覚えようとしていなかったのに、自然とその単語の意味が思い浮かぶようになっています。

もちろん、それでも1000個完全に覚えられない場合も多いと思います。そうしたら、そのときになって初めて、覚えられない単語だけに絞って、それだけを繰り返し反復するのです。すると、ほぼ100%覚えられるようになります。

これは英単語だけではありません。歴史の勉強でも、どうせ大して入試に出ることがない縄文時代や弥生時代からじっくり時間をかけて勉強するくらいだったら、まず一気に縄文時代から令和まで、ざっと歴史の流れを追ってみるのです。豪族の時代、天皇の時代、貴族の時代、武士の時代、政治の時代、戦争の時代、戦後の時代というように、力を持つ戦力の移り変わりの流れをざっくり頭に入れてから、豪族の時代は、卑弥呼の時代と、天皇の時代は推古天皇の天智天皇とその弟とその弟の妻・・・というように徐々に細かいところへ進んでいくんです。

壁にペンキをうまく塗るコツは、最初からしっか厚く少しずつ塗り進めるんじゃなくて、まずは薄く全体的にサーッと塗って、2度塗り、3度塗りを重ねて塗ることです。最初からしっかり厚く、少しずつ塗ると色ムラが出ちゃいますよね。勉強も同じです。雑でいいから、いや、あえて雑にざっと全体を掴んで、繰り返し取り組むことで、細かいところもだんだん頭に入っていきます。そういうやり方もあるんですね。

02 逆転合格する勉強法5選その5「誰かに教えること」

それでは次は、いよいよ最後です。逆転合格する勉強法5選その5。それは、「学んだことを教えることです」。学んだことを誰かに教えると、お知られた人よりも教えた本人が身につくんですね。たとえば、私が生徒に世界史の授業をしていると、なんだか随分細かいことやマニアックなことまで話し出すので、「先生、記憶力いいんですね」って言われることがあります。

それは誤解というか、記憶力良さそうに思えるのは、単に日々繰り返し教えることで、教える内容が頭に入っているからなんですよね。ラーニングピラミッドという言葉を聞いたことがあるでしょうか。アメリカ国立訓練研究所が、学習方法と平均学習定着率の関係をこういう図で表したやつですね。

learning_pyramid 《武蔵境駅徒歩30秒》武蔵野個別指導塾

ラーニングピラミッドを見ると、ピラミッドの下に行くほど勉強したことの定着率が高いことがわかります。授業を受けるよりも、文章を読んだ方が学習内容が身につくようですし、文章を読むよりも動画を見た方が学習内容が身につく。動画を見るよりも実演を見る方が学習内容は身につく。実演を見るよりも誰かと議論する方が学習内容が身につく。誰かと議論するよりも、実際に自分が体験する方が学習内容は身につく。実際に自分が体験するよりも、誰かに教える方が学習内容が身につく。・・・というわけです。

このラーニングピラミッドが下に行くほど必要になることは、なんとかわかりますよね。ラーニングピラミッドが下に行くほど必要になることは、「主体性」です。下に行くほど、自分からの積極的な姿勢が必要になるんです。塾で授業が終わってる教室に、生徒たちが残っていて何してんのかなって思って覗いてみたら1人の生徒が黒板の前に立って、さっき私がした授業で、私が書いた黒板の内容を指さしながら席に座ってる別の生徒たちに私の口を真似して授業をしてるんです。少しすると、また別の生徒が黒板の前に来てさっきの生徒に変わってまた私の真似をして授業し始めるんですよね。これなんか私の授業のネタにしてコント風に再現して笑いを取っていたわけですが、そんなことをして遊んでいた生徒たちは成績を上げて入塾当時の様子を思い返すと、よくそこ受かったなっていう学校に合格していきました。

人に教えるのって、教える内容をまず自分が完全に理解する必要があるし、理解したことを、どう整理して教えようか考えるんで頭を使いながら話すことになります。口も使うし、話した内容を一番間近で聞くわけですから、耳も使う。教えている相手を見るから、目も使う。板書も自分で書いて自分で見る。頭・口・耳・目と、体のいろんな器官、まさに五感をフルに使うんで、記憶に残るんですね。なるほど教えると頭に入るのはわかった。でも、そうは言っても勉強したことを、教える相手がいないというケースもあると思います。そんな時に使えるのが、ぬいぐるみ勉強法というやり方をしている人の話です。

ぬいぐるみ勉強法というのは、その子はポケモンが好きで、ポケモンのぬいぐるみをたくさん持っていたんですね。勉強する時にポケモンぬいぐるみの中から一体とって、「今日は君に決めた」という感じでパートナーを選んで、そのパートナーポケモンに勉強したことを逐一教えるようにして、実際に声に出して説明するということをしているようです。これは頭に入りますよ。ぬいぐるみ持ってないよ、という人は架空の誰かを目の前に想像してみてください。誰かがいることにして、その人に教えるエアギターならぬエア授業をするのもいいと思います。まあ、こういうのは、昔からセルフレクチャリングといわれていますよね。

ちなみに、私は、授業の際に、結構生徒さんにマーカーを持たせて、ホワイトボードの前に立たせて私相手に、その前に私が授業で教えたことや、あるいは、類題を解くのに、講師役になってもらって説明してもらうことをよくします。すると、生徒さんは先生気分になって教えるのも楽しいようですし、とはいえいざ教壇(?)に立ってみると、どう説明して、どう板書を書いていけば良いのか四苦八苦しながら、講義を始めます。また、教えている途中に「あれ?これはおかしいな。今のは、間違いです。訂正します」なんて言って、途中で授業を立て直したりします。こういう取り組みをすると、生徒さんは「この問題の解き方は完璧に分かった」と感動します。まさに、授業中に授業を受けて、さらに授業を受けたばかりで生々しい記憶が残っているうちに、私に今度は逆授業をしてもらうわけです。これは効果があります。

勉強が苦手だと思っている人は勉強自体が苦手なのではない今やってるこれまでやってきた勉強法が苦手なだけだったのかもしれません王道の勉強法でどうもうまく進まないなと思う人は今回紹介した勉強法を試してみる価値あると思います。

以上、中学受験、高校受験、大学受験で逆転合格する勉強法5選のご紹介でした。

中学受験、高校受験、大学受験で逆転合格する勉強法5選(1)

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【監修者】 宮川涼
プロフィール 早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員。元MENSA会員。早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。一橋大学大学院にてイギリス史の研究も行っている。

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ryomiyagawa
早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員 早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。
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