我が子の中学受験を考えた人がするべき準備トップ5
今回は、我が子の中学受験を考え始めた方向けに、まず何からどうすればいいかという具体的な行動をランキング形式で紹介します。
01 我が子の中学受験を考えた人がするべき準備トップ5第5位『二月の勝者』を読む
我が子の中学受験を考えた人がするべき準備は、第5位は『二月の勝者』を読むことです。『二月の勝者』というのは、東京の中学受験がテーマの漫画です。電子書籍でも出ているので今、手に持っているそのスマホですぐ読み始められます。『二月の勝者』を読むことで東京の令和の中学受験がどういうものか中学受験特有の空気感を知ることができるだけじゃなく、塾で生徒がどう指導されて、保護者がどう行使から受験情報レクチャーされているかがわかります。詳細はぜひ実際にマンガやドラマでご覧ください。
1つだけ紹介すると、高校受験との比較なども面白い解説がされています。たとえば、高校受験において、都内の公立中学校から都立の進学重点校に進学したい場合、内申点ができれば各教科4以上はほしいところで、その内申点を上げるためには、定期テストで90点以上で「5」の可能性があるだけで、たとえ定期試験で頑張っても「授業態度が悪い」「提出物の期限を守らない」とカウントされると内申点が「3」へ落ちるとか、そもそも「提出物は先生に催促された時点で未提出扱い」されるとか、「常に鉛筆を持ちすぐにメモをとれる体勢を取れているか」「左手でノートを押さえているか」「音読の際には周りよりも大きな声か」「授業中に積極的に質問をしているか(簡単すぎる質問や難しすぎる質問はNG)」「欠席は7日以内」「頬杖は厳禁」「発言を促されてわかりませんはだめ」。これだけして更に部活動で活躍し、生徒会活動なども精力的にこなせるリーダータイプじゃないと「5」は取れない、などという東京都の高校受験の厳しさ(勉強ができればいいというわけではないという意味での厳しさ)が指摘され、実力勝負できる中学受験のメリットを解説する一方、小6の夏の段階で、仮に模試で偏差値60以上とっていても「偏差値50の学校の過去問の合格ラインを超えられない。偏差値50は決して簡単でもラクでもない。それほど中学受験は厳しいと言って過言ではない」と厳しいことも伝えてくれます。
もちろんフィクションなんですけど、私から見ても実にリアルに描かれている漫画です。それもそのはずで塾や受験指導をしている方そして保護者と多岐に渡って深く取材されてます。『二月の勝者』は塾講師、保護者、子供、それぞれの視点から描かれている作品です。森永製菓、朝日新聞とのコラボレーション企画が実施されたり、NHKに取り上げられたり、ドラマ化もされています。『二月の勝者』を読んでもっと保護者としてどういう心構えが必要なのかと気になったら『翼の翼』という小説も合わせて読むと、「周りがみんな中学受験をするからうちの子も、なんて受験を考えない方がいいかも」って気持ちが変わるかもしれません。
02 我が子の中学受験を考えた人がするべき準備トップ5第4位「過去問を見ること」
我が子の中学受験を考えた人がするべき準備トップ5第4位は、過去問を見ることです。「中学受験ってほらあれでしょ。よくテレビのクイズ番組とかでも出されているやつでしょ」「あれって大人でも難しいよね」って思っていませんか。これでは甘いです。中学受験は大人でも難しいどころじゃありません。中学入試の問題は、現役の東大生や京大生、早慶の大学生が取り組んでも、そう易々と解けるものではありません。受験指導のプロでもない限り、素人が取り組んでも、「難しい」と思えるところまでさえいきません。そもそも、難しいかどうかもわからないレベルの問題がてんこ盛りなんです。
百聞は一見にしかず。Googleで、「中学 過去問」だとか「四谷大塚」と打ち込んで検索すると「四谷大塚ドットコム」っていうサイトに行きます。トップページから過去問データベースっていうページに飛んで、無料会員登録をするといろんな学校の入試の過去問を見ることができます。都立中であれば各都立中のウェブサイトに適性検査っていう名前で過去問がアップロードされているので見ることができます。書店でなら、声の教育社という出版社から出ているオレンジ色の表紙の過去問が陳列されている一角がありますので、どの学校のどの科目でもいいので見てみてください。「えっ、これを12歳で解くの?」っていうふうに思うはずです。そう解くんです。中学受験ってそういう世界です。
別に私は中学受験を否定しているわけではありません。ただ子供を中学受験の道に進ませると、やがて「こんなにお金を塾に払っているのにうちの子はやる気を出さないし、成績も上がらないし、それなのに、うちの子はだらだらしていて」なんてイライラが募って、そして、我が子を叱りつけたくなる時が毎日50回くらい訪れます。
その時に思い出してほしいんです。中学受験の道に進ませる前に、過去問を見た時のその衝撃を。中学受験をするということは公立学校の授業内容をはるかに超える勉強して、毎週テストをやらされ、常にランキング付けされるということです。中学受験に本気になれない我が子を叱るのは、会社以外に副業してその副業収入が本業を上回らないからといって「これしか稼げなくてどうすんの?」ってパートナーを罵るのに近い行動です。中学受験の過去問を見ておくことで、我が子があと数年でこういう問題で解けるようになる道に進ませるのか、ということを実感しておきましょう。
03 我が子の中学受験を考えた人がするべき準備トップ5第3位「お金の計算をすること」
我が子の中学受験を考えた人がするべき準備トップ5第3位はお金の計算をすることです。先程紹介した『二月の勝者』では中学受験で「合格に必要なのは父親の経済力、そして母親の狂気」とか「中学受験は課金ゲームみたいなもの」という作中の主人公のセリフが話題になりました。これはマンガなので刺激的な表現となっていますが、実際に否定できない側面が中学受験にはあります。
中学受験はお金をかければ合格できるというものではありませんが、お金をかければそれだけ成績アップする環境を用意できる確率は高まりますし、お金に余裕がなければ、そもそも中学受験の土俵に上がりません。そこで、じゃあ一般的には大体どれくらいお金がかかるのって、これが知りたいところですよね。ざっくりしたイメージを使います。中学受験に係る費用は、比較的料金が安くなる集団塾で、学年×1万円。これが月額のイメージです。学年が上がるほど授業に数が増えます。さらに塾にはオプション講座があります。小6の1年間は塾に200万円は払うことになることを覚悟しておかないといけません。それだけじゃありません。そうした集団塾に通いながら、個別指導塾や家庭教師をプラスする場合はさらにもう100万円に上乗せされると考えておいたほうがいいです。「いや、そこまでうちは本気で中学受験に向かうことはできないし、出来の良いお子さんとは違うし、共働きで子供の勉強の面倒も十分に見られるわけじゃないから、どこでもいいけれど、どこか行けるところに行ってもらえばいいから」って思うかもしれません。そういうご家庭のお子さんこそ、集団塾ではついていけずに、個別指導塾や家庭教師をプラスすることになります。
進学塾(集団塾)では授業以外の補習は全くしない塾もありますし、予習・復習の労力はかなり大変で、それを保護者の方が見てあげるというのはあまり現実的ではありません。ご自身も開成中学校や麻布中学校など御三家出身などで中学受験を経験しているという保護者の方でも、最新の受験に対応するのはきついと言わざるを得ません。実際、30年前の開成の問題がアレンジされ、少し難しくなっているような問題が、中堅校といわれる偏差値46~55以下の学校の試験問題によく出ています。30年前より格段に問題は難しくなっています。
とりわけ昨今は難関校よりも成績中間層の学校の人気が高まっています。「偏差値の割には…」と思ってしまうことも少なくありません。後述しますが、中学受験で、やみくもに偏差値重視だとか有名校を志望してしまうと、なかなか満足することはできません。だから、集団塾(進学塾)の授業についていくために個別指導塾や家庭教師を追加するんです。中学受験指導を家庭教師にお願いする場合の相場は低く見積もっても1時間1万円以上はかかります。中学受験ってお金がそれほどかかる世界っていうことです。
04 我が子の中学受験を考えた人がするべき準備トップ5第2位「撤退基準を決めておくこと」
我が子の中学受験を考えた人がするべき準備トップ5第2位は「撤退基準を決めておくこと」です。こういう状態になったら中学受験を辞めるという撤退基準を家族で話し合って決めておくことです。なぜなら中学受験は始めたら最後、成績が上がらなくても、いやむしろ下がり続けても辞めるにやめられない「受験沼」にハマっていくからなんです。
大事なお金とお金以上に大事な時間が浪費されて、しかも子供自身の自己肯定感が下がり続けていくんです。でもやめられない。これまでこんなにお金と時間を使ってきたのにいろんなことを我慢してきたのにここでやめたら全部無駄になってしまう。塾で友達もたくさんできたのにここでやめたら会えなくなっちゃうし、あの子を受験やめたんだってだなんて思われたくない。ママ友に我が子の成績を自慢げに語ったこともあったのに、ここでやめたら嘘つきだと思われるし、それは避けたいけれど、そんなに成績が上がらないし、復習や家庭学習もままならなくて苦しい毎日が続くのに子供は「塾は絶対やめたくない」って言い張る。
様々な思いからもう中学受験を辞めるという決断に踏み切なくなっちゃうんです。親子共々心がすり減っていくんです。中学受験勉強は始めるのは簡単ですが、やめるのは大変なんです。そこで、例えば受験勉強を楽しめなくなったら、確認テストの点数が半分以下の状態が1ヶ月続いたら、3ヶ月以内に成績が全く上がらなかったら、志望校合格の可能性が全くなくなったら、体に異変が現れ始めたら、などということを中学受験の道に足を踏み入れる前に決めておくんです。撤退基準を決めずに中学受験に踏み込むのは、第二次世界大戦における日本のように泥沼の戦いから抜け出せなくなる危険性がありますからね。中学受験は危険物取扱注意です。
でも知っておいていただきたいのは、中学受験の勉強は受験に合格するために仕方なく取り組むもので、受験をしないなら意味がないだなんてことはありません。中学受験の勉強をすることで身の回りのことをより面白く感じられるようになりますし、知らなかった世界のことを知ることで、よりもっと多くの世界を知りたいという欲求が広がっていくものです。たとえ途中で中学受験を辞めても無駄になるどころか、今後の人生を楽しく過ごすことにつながっています。もちろん、高校受験にも役立つというか、理科や社会なんて中学受験の内容の方が高度ですからね。
05 我が子の中学受験を考えた人がするべき準備トップ5第1位「偏差値の高い学校ではなく、良い学校を見付けること」
中学受験とは「良い学校」に入るためのものでありますけど、その「良い学校」の基準は、ご家庭それぞれにあるものだということを知っておいてほしいです。よく名前を聞くような有名校以外にも「良い学校」はたくさんあるのです。その中で、我が家にとって、我が子にとって、「良い学校」に入ることができれば、中学校受験は、大成功なのです。「良い学校」というのは、偏差値や知名度だけではなく、面倒見が良く、難関大学合格率が高いことや学費が安めであること、あるいは家から近い、通いやすい場所になる、校風や教育理念が我が子に合っている、そういう複合的な視点で見抜かなければいけません。
実際、有名校でも、いわゆる新御三家といわれるような中学校もかつてはそこまで著名な中学でもありませんでしたし、たとえば、共学校の中でとくに人気が高く、偏差値を年々上昇させている渋谷教育学園幕張という中学校があります。40代、50代の親御さんが子供の頃には、上位校としては知られていなかった私立ではないかと思います。しかし、現在は難関校の中でも人気校となっています。難関大学への合格者数は、開成や桜蔭などの御三家に引けを取らない実績です。この渋谷幕張のように、親御さん世代にとってはまだ認知されていなかった中学が「よい中学」として注目されるという変化も起きています。
反対に、親御さん世代では「良い中学校」と知られていた中学が今はランクと人気を下げているということもあります。また、さらには、それこそ現在に渋谷教育幕張が高い進学実績で有名校になったように、現在進行形で進学実績を飛躍的に向上させていつ中学校も数多くあります。そうした中学校は、中学入試での偏差値は中堅校レベルといわれるゾーンで、偏差値46~55くらいですが、大学への進学実績は早慶上智で200名弱の合格を誇ったり、GMARCHにはほぼほぼ現役合格させていることや東大をはじめとした難関国立大学へ50名程度合格させるなど躍進しています。
それとは対照的に偏差値60~65くらいまでの都立高校は、正直偏差値46~55くらいの中堅校中学の付属の高校の大学への進学実績と比べると比較にならないほど落ち込んでいます。偏差値60オーバーの都立高校では、優等生レベルでさえ、大学受験では、日東駒専レベルが精一杯というのが、今の状況です。なので、良い意味での受験戦略というのは、単に偏差値が難しいとか有名であるということよりも、難関大学への合格者数の実績が伸びているかとか、あるいは教育方針が我が子に合うのかということのほうを重視する必要があるというわけです。
結局、偏差値の高い学校ほど良い学校というわけではないということです。偏差値の高い学校というのは、言い換えれば人気の高い学校です。でも人気の高いものが自分にとって、我が子にとってもいいものだとは限らないわけです。人気の映画、アニメ、本、流行りの食べ物を体験して「なんでこれが人気あるの?」って思ったことあるんじゃないでしょうか。学校も同じです。多くの人が憧れる学校を目指せ必要なんてないんです。我が子が輝けそうな学校はどこか。偏差値にとらわれすぎないで学校を選びをしたいものです。そもそも、学校の偏差値は固定的なものでなく株価のように変動します。いや株式市場では禁じられていますが、学校の偏差値は作為的に上げることも可能です。例えば、受験回数数を増やして1回あたりの合格者を絞ればその学校の偏差値は上がります。偏差値を釣り上げたい中堅校がやりがちな手法です。学校の偏差値に惑わされないで、我が子に合いそうな学校を選びたいです。
どうしても中学受験というと、小さな子供に過剰な勉強を強いて、有名校のブランド争奪戦をさせるような、外から見るとネガティブな要素が確かにあると思います。遠巻きに中学受験を眺めておられる方々には、「うちがあの渦の中に入るのか??」と恐怖とも嫌悪感ともいえるような感情が起こるのも当然かもしれません。でも、中学受験は、お子さんにとって「行って損はない学校」を探すプロジェクトだと考えてみたらどうでしょうか。そうすると、中学校受験に対する見方も大分変わってくるかと思います。結果的に、中学受験がうまくいったご家庭の多くは、そのプロジェクトが成功したご家庭です。「良い学校があるね、挑戦してみようか」という気持ちからのスタートが一番良いと思います。
06 最後に「学ぶことは楽しい」と思えることが一番
偏差値の真実というわけではないですが、偏差値=頭の良さを示す絶対的な指標ではないということを忘れてはいけません。「そんなの当たり前でしょ」って思う方が多いと思います。本当に当たり前のことですからね。偏差値なんかじゃ頭の良さを測ることなんてできません。でもこの当たり前の事実を受験生の親になると忘れてしまいがちなんです。大事な大事な我が子のことですからね。熱くなっちゃうんです。
模試の偏差値で測れるのは世の中のありとあらゆることの中の受験勉強という限られた分野の中のごく限られた単元の中の限られた範囲の中から限られた角度での質問に対して限られた時間の中でどれくらい正解することができたかということです。今、「限られた」と5回言いましたね。偏差値でわかるのは、「限られた五乗」というように、この世の森羅万象の事柄から、たとえていえば、風呂にためた水からスプーンで一杯掬った水くらいのごくわずかな割合の世界の話なんです。小学生の頃は中学受験を目指して塾通いをしていたけどなかなか偏差値が上がらなくて、結局中学受験をせず地元の公立中進学、でも中学生になってから次第に精神的に大人になって、毎年東大進学者が2ケタになる高校に進学して実際に東大に合格・進学するといった例も少なくないんですよね。東大と言ってしまうと結局偏差値かよと思われてしまうかもしれませんが、今は大学受験も多様化しています。今や私大の4割は総合型選抜で入学していたり、東大でも学校推薦型入試というのがあり、偏差値だけではない選抜が既に拡充し始めています。
偏差値による評価なんてその瞬間の結果でしかないんですね。偏差値は一過性のもので、永続的な評価ではないんです。たとえば、模試なり入試の制限時間が50分だとか90分などでなくて無制限になったとします。そうしたらその模試なり入試の受験者の順位や偏差値はガラッと変わるはずです。頭のよさって一口に言ってもいろいろあるんですよね。才気煥発、当意即妙、早く正確に思考できるいわゆる頭の回転が早いタイプの頭の良さもあれば、沈思黙考、三思九思のじっくり時間をかけて深く考えられる頭の良さもあります。それだけではありません。頭の良さって思考のスピードと深さだけじゃなく、一見混沌とした複数の要素から共通する要素を見つけて整理することが得意という頭の良さもあれば、ちょっとした仕草や一瞬の表情から相手の感情を読み取ることが得意な洞察力に長けている頭の良さもあります。とりわけ、現代は、20世紀型の「みんな一緒」の成長社会から、それぞれ一人一人の成熟社会へ変貌したとも言われます。現代社会においては、学科の模試や入試のような情報処理能力の高さや正解を見付けることを重視した正解主義よりも、「情報編集力」や周囲が協調できる「納得解」を見付けることの方が大切だともいわれています。
さらに、世の中には一度通った道られがだいたい頭に入るという頭の中にカーナビがインストールされている人もいれば、見たものを絵にすることが得意な人もいますし、楽器の演奏やダンスをすぐに覚えてしまう人もいます。感覚だけで身に着けるものや部屋のインテリアを選んでそれがすごく調和が取れているおしゃれなセンスがある人もいます。世の中には無限の頭の良さがあって、世の中にが偏差値以外の目に見えない無限の物差しが存在するんです。今私なんだか格好良いようなことを言っているように聞こえたかもしれませんが、ごくごく当たり前なこと言ってるだけですよね。
でも、受験沼にはまってしまうと、そんな当たり前の事実を忘れてしまいます。偏差値こそが唯一絶対の指標だと思っちゃうんですよね。駿台グループの学園長の山崎氏が「偏差値なんてうちの旦那が作ったのよ」と言ったという話を聞いたことがあります。本当かよと思って調べたら偏差値っていうものを考案したとされている人は別にいたようで、偏差値を予備校業界に初めて導入したのが山崎氏なのかなぁって私は思ってるんですが、その真偽はさておき、何を言いたいのかというと偏差値ってこの世の絶対な指標なんかではなくて今はもうなくなっているおじいちゃんが受験業界に持ち込んだ一つの指標見方に過ぎないということです。
本来、見方というのは無限にあります。コップは横から見れば長方形ですが、真上から見れば丸いんですよね。見方によって評価は180度変わるんです。そして、人間はコップよりも複雑です。偏差値は志望校の合格可能性を判断するには便利ですが、その志望校の過去問を解いて合格最低点に対してどれくらい開きがあるのかという確認に比べれば合格判断の信憑性は劣りますし、偏差値というのは同じ模試を受けた人たちの中で自分の位置がどれくらいかを示す指標になるだけに過ぎません。ただそれだけのことです。
別の模試を受ければ別の偏差値が出ます。別の時期に模試を受ければ別の偏差値が出ます。あくまで偏差値は一つの目安でしかないです。偏差値で我が子を評価するのは他人軸で我が子を評価することになってしまいます。自分の人生を楽しんでる人は他人軸ではなく自分軸で生きています。偏差値が上がらなくても学ぶ楽しさを見出したり、わかったときの快感を感じたり、好きな科目や単元に出会うことができたり、勉強を通じて視野が広くなれば、もうそれは瞬間的な偏差値よりもずっと将来にわたって価値のあることだと私は思っています。もちろん、そう私が思ってるだけなので、「いや、やっぱり偏差値こそが一番大事だ」という考えもまた誤りではありませんし、多分に主観に偏って私の考えも、また無数にある考えの一つでしょう。大事なのは一つの見方考え方にはまり込みすぎると幸せな人生から遠ざかってしまいますよということですね。
偏差値を唯一絶対の価値観とするのは、激しい競争のレールに乗ることです。それが好きで、燃える子もいるでしょう。でも、そうでない子も私はたくさん見てきました。偏差値は時としてマイナス感情増幅装置になってしまいかねません。特に保護者の方には強力に作用してしまいます。偏差値は魔物です。偏差値を上げるために、とにかく我が子を頑張らせようとするとかえって偏差値は上がらなくなります。偏差値が上がらないだけならまだしも、「もう僕/わたしはがんばれない・・・」と心を磨り減らして、自分を見失ってしまいかねません。
そこで、以前他の記事でも書かせて頂いた言葉を最後にもう一度お伝えしたいと思います。『これを知る者はこれを好む者に如かず、これを好む者はこれを楽しむ者に如かず』。物事を知っている者は、それを好んでいる人には及ばない。物事を好んでいる人もこれを心から楽しんでいる者には及ばないということです。今から2500年前の孔子の言葉が今でも残っているのは、そこに一面の真実があるからでしょう。努力は夢中に及びません。楽しむのが最強なんです。
どう生きるかは人それぞれですが、私は偏差値という他人軸で競争のレールに乗るだけでなく、面白さを追求する自分軸で生きていたいと思います。学ぶことを楽しめるようになれば、もうその時点で偏差値を上げることよりも、どこの学校に行くかということよりも、ずっと楽しい人生になるのではないでしょうか。もちろん、受験という現実はあります。しかし、どう偏差値を上げるかと、ただひたすらに偏差値を上げるために頑張るという発想よりも、どうしたら勉強を楽しめるようになるか、その工夫を頑張る方が結果的に偏差値が上がります。トップクラスの生徒というのは、心から勉強を楽しんでいます。
偏差値という魔物に囚われることなく、一定の距離を取りつつ、賢く活用することで、世の中の子どもたちの笑顔が、そして親御さんの笑顔が増えたらいいなと思っています。学ぶことは本来楽しいことなはずです。小学校の低学年くらいまではみなさん知っていたはずです。人生100年時代、私は、「学ぶことって楽しいじゃん」と思い出してくれる子が、この世の中にひとりでも増えることを願ってやみません。武蔵野個別指導塾では、単に偏差値を上げるための授業ではなく、学ぶことの楽しさを少しでも伝えていければ、そう思って生徒さんを指導させて頂いております。
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【監修者】 | 宮川涼 |
プロフィール | 早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員。元MENSA会員。早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。一橋大学大学院にてイギリス史の研究も行っている。 |
社会=暗記という常識はもう古い!知識だけでは通用しない社会の問題(麻布中学校の社会の入試問題より)
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