英文法講義~大学受験・高校受験に使える(3)時制(完了形)

00 完了形をイメージで理解する

では、次に完了形に行ってみましょう。完了形を理解するのに大事なのはイメージで考える事です。よく中学校の英語の授業でも「日本語にない時制」だと習ったかと思いますが、その日本語にない時制を継続用法とか経験用法とか分けて覚えてもそれはあまり意味がありません。次の英語を日本語に訳せるでしょうか。

I lost my key.

I have lost my key.

如何でしょうか?もしかしたら、どちらも「私は鍵を無くした」になったかもしれません。しかし、それでは日本語にない時制である完了形を理解していないことになります。

I lost my key.というのは、「私は鍵をなくした」で、I have lost my key.は「「私は鍵を無くして今も持っていない」(私は鍵を無くしてしまった)くらいな感じです。つまり、前者は過去に「鍵を無くしてしまった」ことがあると言っているだけなのに対して、後者は、「私は鍵をなくしてしまって(今も鍵を持っていなくて困っている)」というニュアンスが入ってくるわけですね。これとても大事なところです。

大事なポイントは、I have lost may key.と表された現在完了形は、今に焦点があたっており、過去に鍵を無くして今もその鍵を無くしたままでいるということを意味しているということです。現在完了形というのは、have + p.p.で表現されます。 p.p. は「過去分詞形」のことです。have + p.p. は「p.p.(過去のこと)を,have(現在所有)している」という意味となるわけです。

01 現在完了形の核心的イメージ

中学校などでは、現在完了形というと、継続用法、完了用法、経験用法など三つの用法があるとか、そういう風に習ってきたと思います。高校の授業でもそれが繰り返される場合もありますが、果たしてネイティブがいちいち継続用法だとか完了用法だとか経験用法などを意識して表現しているでしょうか。日本人が「(私は)(あなたを)愛している」と自然に主語と目的語をなくして話せるように、英語話者も当然そんな用法など意識せずに話しています。

なので、”I have known Tom since he was a baby.”(トムのことは赤ちゃんの時から知っている」という文章も、”I have just eaten the pie.”(ちょうどそのパイを食べてしまったところだ)、”I have seen a panda once.”(パンダを一回見たことがある)という三つの分を、いちいち「これは継続用法だ」とか「これは完了・結果用法だ」などとは意識せずに使っているわけです。では、現在完了形の核心的なイメージというのは、過去から現在に繋がっていて、あくまでも現在の話をしているという点、です。最初の例文が、「トムのことは、(トムが)赤ちゃんの頃から、(今に至るまで)知っている」という「現在」が大切であり、次の例文では、「ちょうど(今)そのパイを食べ終えたところだ」という「現在」が大切であり、三番目の例文でも「パンダを(今に至るまでに)一回は見たことがある」という「現在」が大切であるわけです。現在完了形のイメージを画像で乗せておきます。

現在完了形のイメージ 《武蔵境駅徒歩30秒》武蔵野個別指導塾

過去というのは、いつでも良いので、文法的に正確に表現すると「過去の動作・状態が現在(基準時)とつながりのあることを示す」というもので、もし過去との繋がりが感じられなければ、単純に過去形で表現することになります。

He has been ill for a week.

といった場合、「彼は一週間前から病気だ(今も治っていない)」ということを意味しているわけです。だから、”The lake has frozen.”といえば、「湖が凍結してしまった(そして、今も凍結している)」のであり、”They have widened the road.”は「道が広げられた(今広くなっている)」ということを意味しているわけです。

ちなみに、一つ注意してほしいのが、下記のような問題です。

① At the conference last year, we (   ) the power of sports.

(1) discussed (2) discussed about (3) have discussed (4) have discussed about

上の問題で、正解は(1)です。「昨年の会議で、私たちはスポーツの力について議論した。」という意味ですね。これは、”At the conference last year”と「昨年の会議で」と過去を明示する表現があり、これは現在と繋がっていないので、(3)は選んではいけません。同じように、”just now / last night / last year / three years ago /When…? (when she was 15)/ yesterday”なども過去を明示する表現なので、現在完了は使えないので、注意しましょう。また、”discuss”は他動詞であり、「何を議論したの?」とツッコミが入れられますね。なので、aboutという前置詞を入れてしまうと自動詞扱いになってしまうので誤りです。これも再度確認しておきましょう。

また、完了形というと現在完了進行形というものもあり、意外と混乱する生徒さんも多いのですが、これは、別に特殊な用例ではなく、単に現在完了の意味と同じですが、とりわけ「継続」していることを強調する場合に使います。例えば、”I have been waiting for more than thirty minutes.”(三十分以上待ち続けている)という風に、「続けている」ことを強調しているだけで、本質的には現在完了形と意味は変わりません。もう一つくらい例文を紹介しておきましょう。” We are all tired of snow. It has been snowing for four weeks now.”(みんな雪にうんざりしている。もう(雪が)四週間以上降り続いている)といった具合です。

02 過去完了と未来完了は基準時をずらしただけ

どうでしょうか?現在完了形のイメージは掴めましたでしょうか。こうして現在完了形のイメージを掴んでしまえば、過去完了も未来完了も簡単で、要は基準時が「過去」なのか「未来」なのかであり、過去完了であれば、「過去」において、それ以上前の過去(通常、こういうものを「大過去」といいます)からその基準となる「過去」までに繋がっていることであり、未来完了であれば「未来」において、それ以上前の過去から基準となる「未来」のその時点まで繋がっているものを指し示すわけです。

一応、例文を挙げておきましょう。過去完了形は、過去の時点までに完了していることですので、”The train had already arrived when i reached the platform.”(ホームに着くともう電車は到着していた)ですし、”My father had never been abroad before he went to Paris last year.”(父は去年パリに行くまでは一度も外国に行ったことはなかった)となるわけです。

そして、未来完了形では、未来の時点までに完了していることですので、”I will have finished my homework by the time he comes.”(彼が来るまでには宿題は終わっている)ということになるわけです。もう少し例文を紹介しておきましょう。” If I vist the U.S. again, I will have been there three times.”(もう一度アメリカに行くと、三回目になる⇒今はまだ二回しかいってない)、”I will  have lived in Tokyo for thre yaers next April.(次の四月で東京に三年間住んでいることになる”という感じですね。

また、現在完了進行形と同じように、過去完了進行形も” Mr. Brown had been waiting for neary thirty minutes when his client arrived.”(ブラウン氏は、彼の顧客が到着したときには、30分近く待ち続けていた)や” I have been reading to him since ten o’clock.”となり(彼は10時から彼に本を読んでやっている」ということになり、、未来完了進行形は、”He will have been working at the local hospital for 10 years by the end of next month.(彼は来月末までに地元の病院に10年間勤務し続けたことになる)という感じです。また、一点だけ注意することとしては、” Mike and Bill have known each other since they were children.”というように「マイクとビルは子供の頃からお互いを知っている」というような場合で、knowはいわゆる五秒ごとに中断・再開できない動詞なので(状態動詞)、現在までの状態も継続も現在完了進行形ではなく、現在完了を用います。

なので、微妙なニュアンスの違いがあることにも気をつけておきましょう。たとえば、” I have lived her for two years.”は「私はここに2年住んでいる」というのに対して、”I have been living here for two yearts.”(私はもうここに2年間住み続けている)という具合です。

それでは、例題を見てみましょう。

① She (    ) absent from school since the day before yesterday.

(1)was (2) has been (3) had been (4) will have been

② When I arrived at the classroom, the English exam (    ) already.

(1) has started (2) to start (3) had started (4) starts

③ The professor read my technical report which I (   ) the day before.

(1) will be writing (2) have written (3) have been writing (4) had written

④ Paul’s yacht (    ) at Hawaii by the end of next March.

(1) arrived (2) has arrived (3) used to arrive (4) will have arrived

すぐに解けたでしょうか。上から解答は、(2)、(3)、(4)、(4)です。現在完了、過去完了、過去完了、未来完了でしたね。

03 完了形の慣用表現

完了形の慣用表現というものも抑えておきましょう。幾つかあるのですが、一つ目はまず下記の表現です。

It has been 時間 since s v(過去形)

というものです。これは「~してから時間が経ちます」という意味になります。例文で言えば、”It has been twenty years since my best friend, Miho, and I met in the childrenʼs choir.”(親友のミホと私が子供合唱団で出会ってから20年になる)という感じです。他にも例文を挙げると”It has been ten years since the two companies merged.”(その二つの企業が合併してから10年になる)という具合です。そして、これが変形して、

It is 時間 since s v(過去形)

という表現も使われるようになりました。これは本来は現在完了形で表現しなければならないのですが、慣用表現として、It is twenty years since my best friend, Miho, and I  met in the children’s choir.という事も可能です。また、下記のような表現も可能です。

時間 have passed since s v(過去形) ☆ since s v の v は「過去形」

Twenty-five years have passed since John Lennon died.(ジョン・レノンが亡くなって25年が経つ)というような表現ですね。また、亡くなったという表現で独特なのが、「~年前に亡くなった」ということを言い表すとき、” He died two years ago.”と同じ意味で、”He has been dead for two years.”と言い換えることも可能です。これ直訳すると「彼は二年間ずっと死んでいる(今も死んでいる)」と訳せてしまいますよね?非常にこれは日本人にとっては非常に違和感があるかと思います。これは日本と英語圏の文化的な背景の違いがあることに原因があります。英語圏は、キリスト教文化です。簡単にいえば、”Soul”(魂)は永遠に不滅で、”Body”(身体)は滅ぶものです。いわゆる物心二元論の立場に立っているわけです。つまり、土の中に魂のない身体が死体のまま眠っている、という理解になるわけです。なので、次の例題を見てみましょう。

① His mother ( ) for two years.

1. has been dead 2. has died 3. has dyed 4. is dead

これは、どれが入るでしょうか。わかりましたでしょうか。これは(1)の”has been dead”が入るわけですね。「彼女の母親が死んで二年になる」というわけです。最後にもう一つだけ確認しましょう。それは、have been to ~ と have gone to ~の違いです。「have been to ~」は「~へ行ってきたところだ」となり、「have gone to ~ 」は「~へ行ってしまった(もうここにいない)」という意味になるということです。例文を挙げると、”He has been to London.”は「彼はロンドンに行ったことがある」という意味に対して、”He has gone to London.”は「彼はロンドンへ行ってしまった(今はもうここにいない)」という区別があります。最後に例題を確認してみましょう。

① I have just ( ) to Hakata Station to see my girlfriend off.
1. go 2. visited 3. going 4. went 5. been

どれを入れるか分かりましたでしょうか。まあ、”have gone to”がないので、(4)が入ると分かったかと思います。私はちょうど博多駅にガールフレンドを見送りに行ったところだ」という意味になるわけですね。最後に一つ例文を紹介しておきましょう。”He has gone to Hokkaido.”です。これは、彼は北海道に行ってしまった(だから今はいない)、という意味になるわけです。しっかりと覚えておきましょう。

以上、完了形のイメージは理解出来ましたでしょうか。

04 問題演習

(1) By the time I got back from Tokyo, they (  ) to a decision.

①come ②had come ③have come ④will have come

(2) Next year Mr. and Mrs. Jenkins (  ) for thirty years.

①will have been married ②are going to marry ③were married ④get married

(3) Since childhood, Emma (  ) to become a firefighter.

①wants ②is wanting ③has wanted ④was wanting

(4) During the meeting, I realized that we (  ) the matter before.

①have discussed ②would discuss ③had discussed ④discuss

(5) When I arrived at the station, the train (   ).

①already leaves ②has already left ③had already left ④to already leave

(6) Jack (   ) in the hospital since last Monday.

①had been ②has been ③will have been ④was

(7) Mr. Smith (   ) this work by the end of next week.

①has finished ②used to finish ③finished ④will have finished

(8) My teacher checked my homework which I (   ) the day before.

①had completed ②will be completing ③have been completing ④have completed

[B] 与えられた語句を順番に使って,日本語の意味に合う英文を書きなさい。動詞や形容詞は適切な形にすること。

(9) 私たちは何度もニューヨークを訪れたことがある。 [ visit, New York, many times ]

(10) スミスさんは,来週末までにはこの仕事を終えているだろう。 [ work, end ]

【解答】

(1) ②

(2) ①

(3) ③

(4) ③

(5) ③

(6) ②

(7) ④

(8) ①

(9) We have visited New York many times.

(10) Mr. Smith will have finished this work by the end of next week.

05 東大の要約問題

それでは、毎度お馴染みの東大の英語問題の第一問要約問題に取り組んでみましょう。

次の英文を70~90字の日本語に要約せよ。ただし、句読点も字数に数える。

Some years ago, on a journey to America. I passed the time by asking my fellow passengers to answer some rather strange questions. The first was, ” Which seems to you the larger, an elephant or a second?” After explaining that, I meant a second of time people would consider equal to the size of an elephant. I then tried to find out what sort of length of time people would consider equal to the size of an elephant.

One man was a physicist. He insisted that the second must be equal to the distance travelled by light during that interval of time – which is much larger than an elephant, of course. But most other people voted for the slephant, though there were wide differences in the selection of a time suitable to compare with it.

Why would most people feel sure that an elephant is larger than a second? Presumably bacause we think of an elephant as larger than most animals we know, and seconds are smaller than most of the time intervals with which we are concerned. What we are really saying i that an elephant is large for an animal and a second is small as time goes. So we instinctively compare unlike objects by relating them to the average size of their kin.

(東京大学「英語」1989年)

英文法講義~大学受験・高校受験に使える(4)

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【監修者】 宮川涼
プロフィール 早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員。元MENSA会員。早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。一橋大学大学院にてイギリス史の研究も行っている。

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早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員 早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。
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