都立高等学校入試(社会、2017年)
それでは、都立高校の過去問を解いてみましょう。まずは、2017年の社会の問題です。
これはもうサービス問題ですね。何も知識は必要としません。図に示されたとおりに綴っていけば、下記の通りとなると思います。1つだけポイントとして地図が何も方角を示されずに描かれていれば上が北だということだけ覚えておきましょう。
次は、問2です。世界遺産の話ですが、日本で登録させている世界遺産は、令和4年1月現在は25カ所ありますが、この問題が出題されたときは、21でしたね。そこで、早速問題を見てみると「奥州藤原氏」と書いてありますね。この段階で東北だということが分かりますね。今年の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」を、見られている方は、源頼朝の弟源義経が、奥州藤原氏の当主・藤原秀衡の庇護を受けていることは初回の放送で分かっているかも知れませんね。ということで、これは答えは「ア」です。
ちなみに、現在時点での世界遺産は下記の通りです。
1 | 法隆寺地域の仏教建造物 | 奈良県 | 平成5年 | 文化 |
2 | 姫路城 | 兵庫県 | 平成5年 | 文化 |
3 | 屋久島 | 鹿児島県 | 平成5年 | 自然 |
4 | 白神山地 | 青森県・秋田県 | 平成5年 | 自然 |
5 | 古都京都の文化財(京都市、宇治市、大津市) | 京都府・滋賀県 | 平成6年 | 文化 |
6 | 白川郷・五箇山の合掌造り集落 | 岐阜県・富山県 | 平成7年 | 文化 |
7 | 原爆ドーム | 広島県 | 平成8年 | 文化 |
8 | 厳島神社 | 広島県 | 平成8年 | 文化 |
9 | 古都奈良の文化財 | 奈良県 | 平成10年 | 文化 |
10 | 日光の社寺 | 栃木県 | 平成11年 | 文化 |
11 | 琉球王国のグスク及び関連遺産群 | 沖縄県 | 平成12年 | 文化 |
12 | 紀伊山地の霊場と参詣道 | 三重県・奈良県・和歌山県 | 平成16年 | 文化 |
13 | 知床 | 北海道 | 平成17年 | 自然 |
14 | 石見銀山遺跡とその文化的景観 | 島根県 | 平成19年 | 文化 |
15 | 小笠原諸島 | 東京都 | 平成23年 | 自然 |
16 | 平泉‐仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群‐ | 岩手県 | 平成23年 | 文化 |
17 | 富士山‐信仰の対象と芸術の源泉‐ | 山梨県・静岡県 | 平成25年 | 文化 |
18 | 富岡製糸場と絹産業遺産群 | 群馬県 | 平成26年 | 文化 |
19 | 明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業 | 福岡県・佐賀県・長崎県・熊本県・鹿児島県・山口県・岩手県・静岡県 | 平成27年 | 文化 |
20 | ル・コルビュジエの建築作品‐近代建築運動への顕著な貢献‐ | 東京都 ※フランス・ドイツ・スイス・ベルギー・アルゼンチン・インド |
平成28年 | 文化 |
21 | 「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群 | 福岡県 | 平成29年 | 文化 |
22 | 長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産 | 長崎県・熊本県 | 平成30年 | 文化 |
23 | 百舌鳥・古市古墳群‐古代日本の墳墓群‐ | 大阪府 | 令和元年 | 文化 |
24 | 奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島 | 鹿児島県・沖縄県 | 令和3年 | 自然 |
25 | 北海道・北東北の縄文遺跡群 | 北海道・青森県・岩手県・秋田県 | 令和3年 | 文化 |
問3です。選挙の四原則についての問題ですね。1924年に成立した加藤高明内閣が、普通選挙を求める民衆の声に応じて、25歳以上の全ての男子に選挙権を与える男子普通選挙が1925年に認められ、戦後1945年に男女普通選挙が認められています。そして、直近では、2016年(平成28年)に選挙権年齢が満18才以上に引下げられました。ここまで詳しいことは、分からなくても、これが普通選挙だということは分かりますね。なので、答えは、「エ」です。
ちなみに、選挙の四原則とは、普通選挙、平等選挙、直接選挙、秘密選挙の四原則を意味しています。内容としては、平等選挙とは、一人につき一票投票できるという原則。選挙権を持つすべての人の一票は、同じ価値を持つという考え方なわけです。なので、一票の格差問題などでよく同一の選挙の選挙区間で有権者数あるいは人口数が異なっていることで1票の価値あるいは選挙区民一人ひとりの価値が異なっていることが問題に挙げられていますね。
次に、直接選挙とは、国民が直接代表者を選ぶ選挙ということです。衆議院議員や参議院議員を選ぶ国政選挙では、有権者が直接候補者に投票しますね。直接選挙の反対が間接選挙。間接選挙では、候補者が直接有権者に選ばれるわけではありません。実例を挙げれば、現代では岸田文雄さん内閣総理大臣ですが、彼を私たちが選挙して選んだわけではないですよね。総理大臣は、国民が直接選ぶのではなく、選挙で選ばれた国会議員が、投票によって総理大臣を選びます。これが間接選挙です。
そして、秘密選挙というのは、投票の秘密が守られる選挙 のことを言います。これは実際に選挙に投票しに行った人ではないと実感がわかないかもしれませんが、投票するときに自分の名前や氏名を書いたりしませんよね。もちろん、受付で投票権を貰うときに氏名を書いたりしますが、それが誰に投票するかは結びつけられていません。つまり、選挙の際、有権者は投票用紙に自分の名前を書く必要はないわけですね。ちなみに、これを無記名投票といいます。
大問2の(1)について考えましょう。A~Dは、それぞれナミビア、アイスランド、アルゼンチン、ドミニカ共和国であるわけですが、大体の位置をおさらいしましょう。すると、ナミビアがアフリカ、アイスランドがヨーロッパ、アルゼンチンが南アメリカ、ドミニカ共和国が中米であることは分かって欲しいところです。
さて、これで選択肢を見ていきましょう。まず、アですが、「熱帯低気圧」だとか「高温」であると書いてあることから、アイスランドではないということはわかりますね。これは×です。つぎ、イですが、「国土の南部は緯度の割に温暖です」というのは、チェックですね。アイスランドは確かに「緯度の割に」暖かいということができそうですね。そして、「農業に適する土地は少ない」上に「海域」の話が出ているので、ひとまず問題なさそうですね。
続き、ウを見てみましょう。まず最初にチェックするのは「北上する寒流」という表現ですね。寒流というのは、高緯度から低緯度へ向けて流れる海流のことをいうわけですから、おかしな文章であることがパッと見てとれますね。そして、「大平原が広がる」はアイスランドには適さないですね。×です。
そして、最後のエについて見てみましょう。エも 「北上する寒流」という表現はおかしいですね。そして、「砂漠」と書いてあります。アイスランドに砂漠はおかしいですね。×です。よって、正解は、「イ」になります。
次の設問(2)を見ていきましょう。モーリタニア、ブラジル、キューバ、アメリカ合衆国の説明の文章のうち、Yに当てはまる国とその説明を見つける問題ですね。パッと見た瞬間「これはキューバじゃないか」というのは分かるかと思います。アフリカ北西部に位置するモーリタニアはパッと分からなくても、ブラジルやアメリカは分かると思います。すると、Xはブラジル、Zはアメリカであることまではすぐに分かるかと思います。そして、アメリカに近いYはキューバしかないだろうと想像つくかと思います。
それでは、ア~エの説明文を見ていくと、いきなりアには「社会主義国」と書いてありますね。現存する社会主義国は、中国、キューバ、ラオス、ベトナムの四カ国しかありませんね。はい、正解はアだということが分かるかと思います。ちなみに、イは一見難しいですが、ウがアメリカ、エがブラジルというのはすぐに分かると思うので、消去法でモーリタニアの説明だということも分かるでしょう。
ちなみに、キューバと言えば、キューバ危機も覚えておきましょう。1962年10月、当時のソ連(現ロシア連邦)がキューバに攻撃用のミサイルを設置したため生じた事件ですね。ミサイルの搬入阻止を巡り、米ソ両国が対決寸前にまでいき、世界中を核戦争瀬戸際の恐怖に陥れました。当時、アメリカのキューバに対する敵視政策はエスカレートしており、62年1月には米州機構がキューバを除名するなどキューバ封じ込めが進んでいました。これに対してキューバも同年2月に「第二ハバナ宣言」を発してラテンアメリカでの革命の必要性を強調するなど、キューバをめぐる西半球での冷戦は一つの頂点に達していたのです。
このような情勢のもとでキューバとしては、革命を反革命から防衛し、ラテンアメリカでの革命を促進するための支えとなる強力な武器―攻撃用ミサイル―を必要としていた。一方、キューバとの関係を深めつつあったソ連は、フルシチョフ首相がキューバ防衛の意志を表明するとともに、ソ連周辺諸国に設置された対ソミサイルに対抗して、キューバに攻撃用ミサイルを設置することを考えていました。
1962年10月、キューバに攻撃用ミサイルが設置されているのを確認したアメリカのケネディ大統領は、10月22日、ソ連に対して、ミサイルがさらに搬入されるのを阻止するため、キューバを海上封鎖することを通知するとともに、ソ連がキューバのミサイルを撤去することを要求しました。ソ連はこの要求を拒否し、キューバも海上封鎖は「主権に対する侵害」だとして非難していました。こうして、10月24日、アメリカによるキューバの海上封鎖が開始され、米ソは衝突寸前にまで進展します。しかしフルシチョフからの申入れで交渉が行われ、アメリカがキューバへ侵攻しないことを条件に、ソ連がミサイルを撤去することに同意したため、この危機は回避されました。これをきっかけにアメリカとソ連の首脳間における電話回線がひかれることになり、それが今でいうホットラインの語源です。
その後、2015年7月1日にアメリカとキューバは54年ぶりに国交を回復することで正式合意しました。 当時のオバマ大統領とキューバのラウル・カストロ代表が親書を交わし、大使館を相互に開設することで一致し、 7月20日にワシントンの「キューバの利益代表部」とハバナの「アメリカの利益代表部」が大使館に格上げされ、アメリカとキューバ両国は国交を回復しました。
問3に行きましょう。色々条件が入っていますね。まずは、P、Q、R、Sをどの国か見ていきましょう。Pは南アフリカ共和国であることが地図からすぐにわかりますね。次に、Qは、ポルトガルであることもすぐにわかるでしょう。Rは、一見してもわかりづらいですが、Sがカナダであることはすぐにわかるかと思いますので、Rはウルグアイであることがわかりますね。
ぞれでは、Ⅲの条件を見ていきましょう。「大西洋とインド洋を分ける東経約20度の子午線が通っており」と書いてあることから南アフリカ教科国しか考え難いですよね。そして、さらに続きを読むと「1985年に入っていなかった乗用車が入るようになった」と書いてあるので、この段階で、Ⅰのうちイとウしか当てはまらなくなりますね。
引き続き文章を読んでいきましょう。すると「輸出額」に「1985年と2013年にアメリカ合衆国が入っている」とありますね。Ⅱの資料を見ると、イは入っていませんが、ウは入っていることがわかると思います。この段階で、答えはウでPである南アフリカ共和国であることがはっきりしてわけですね。正解は、ウでPです。
次のページで大問3に移っていきたいと思います。
続き
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【監修者】 | 宮川涼 |
プロフィール | 早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員 早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。 |